2024年07月24日

タイムトラベルNYC(2)

メトロポリタン美術館。博物館みたいな美術館。
あまり大きな声では言えないが、仕事上の役得により、いくつかの美術館・博物館は無料で入れるのです。普通に入ると$30くらいするんですが、いつか仕事の何かでお返しするということで。

大貫妙子の「メトロポリタン美術館」がずっと脳内をぐるぐるする世代です。
エジプトではファラオ眠る。石の布団にくるまって。
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めっちゃ目あけて寝てますが、かわいいよね。普通にイケメンだと思う。
とにかく物量がすごい。
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すごいんだけど、エジプトとヨーロッパがすごいのに比べて、インド、中東はそうでもなかった。距離感だろうか。
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アメリカになると、とたんに家具屋になってしまう。
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ただ、ティファニーがいいのは分かった。
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しかし家具とてヨーロッパに比べるとね。
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とにかくでかい。6時間かけて7.5km歩いたけど見終わらなかった。
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日本の展示室は閉鎖中でした。一方、中国は充実してました。国力……
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とにかく見応えあることは分かった。タイムトラベルは、楽し。
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投宿して、アイリッシュパブで魚食ってビール飲んで、ついでにピザ買い食いして寝ました。

翌日は朝から健康診断。なんか知らないけどすごいデブになって、骨密度が落ちているということが分かった。血液検査は後日ですが、たぶん高脂血症だと思う。要は運動不足。動かなすぎ。
終了後、国連勤務の知り合いとそば屋に行ってかつ丼食いました。
卵とじのかつ丼はひょっとしたら渡米以来かもしれない。西友のお総菜みたいな味でしたが前菜と合わせて$30。
食べ終わってからGround Centralというコーヒー屋(挽いたコーヒー豆groundと、近くのターミナル駅グランド・セントラルをかけていると思われる)でお茶しました。コーヒーおいしかった。
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すごい駄弁ってたらMoMAいく時間なくなってきましたが、一応行きました。こちらもタダ。
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世紀転換期くらいからの作品が並べてありましたが、モダンアートいうても結局みんな写真とってるのはウォーホルであり、バスキアであり、デュシャンであり、オノヨーコだピカソだとかいっていて結局有名どころかと。ル・コルビュジエの絵があっておやっと思ったが。でコンテンポラリーはメディアアートとか紐やぬいぐるみのインスタレーションなんかあまり刺さらず、リュックを預けてたクロークから「そろそろ閉まるで」とせかすメッセージがきたのであわてて回収してTシャツと図録買って退散しました。
雨が降ったり止んだりで蒸し暑いNYCともおさらば。
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やはり遅れるアムトラックに乗って3時間で帰ってきました。やはりDCのほうが落ち着く。

* * *

中途半端なタイミングですが、これが弊日記1500個目のエントリーでした。
来年10月は弊日記20周年。20年……うぉぉ……

タイムトラベルNYC(1)

夏休み前半を兼ねて、日曜~火曜でニューヨークに最後の健康診断に行ってきました。ニューヨークも最後な気はするがまだ分からない。
すっごい暑さが一服して比較的歩き回りやすい気候でしたが、日差しは強かったです。日焼け止めを塗って歩いてましたがそこそこ黒くなりました。
建築系は去年結構回ったので、今年は博物館とか美術館とかを冷やかそうと思います。

まずストーンウォール・イン。1969年6月28日、警察のガサ入れを機に始まった性的マイノリティの抗議活動「ストーンウォールの反乱」の震源地。この運動は全米、世界に波及した。
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隣接するビジターセンターでもらったパンフによると、建物は1800年代半ばの建築。1934年から火災で内部が焼損する1964年まで、Bonnie's Stonewall Innというバー・レストランが営業していた。

店は1967年にオープン。当時ニューヨーク州の規制によってゲイへの酒類提供が禁止されており、それをかいくぐる形で「踊れるゲイクラブ」として運営した。現在のファサードはほぼ当時のままとのこと。入場料は平日$1、週末$3。記名して入ることになっていた。

中はバーとダンスフロアがあり、壁は火災の跡を隠すため黒く塗られていた。通りに面した窓は黒く塗られ、ベニヤ板が張り付けてあった。バーには水道がなく、非常口もなかった。

客は主に若いゲイで、レズビアンは少数だった。服装はドラァグ、ビジネス、ジーンズといろいろ。

当時は酒類提供規制を口実にゲイバーやクラブに対する警察の手入れが頻繁に行われており、経営者や客が見せしめ的に逮捕されていた。経営者は警察やマフィア、規制当局に賄賂を渡して事前情報をもらい、手入れを察知すると中を明るくして客に注意を促していた。

ストーンウォール反乱の最初のきっかけが、誰かがものを投げたことなのか、誰かが誰かを殴ったのか、何だったかに関しては証言が一致していない。結局、反乱は6夜続いた。最も激しい抗議があったのは最初と最後の夜だった。最初の夜は500-600人、次の夜は2000人が参加したとの証言がある。最終日は500~1000人とのこと。3日目、4日目は比較的静穏だった。逮捕者は最初の夜が13人、2夜目が3人、6夜目が5人。死者はなかった(ただし、群衆が取り囲んだタクシーの運転手がその夜に心臓発作で死亡したとのこと)。

バーはその後閉店し、ベーグル店や中華料理屋などになった。1987-1989年には「ストーンウォール」というバーが営業、その閉店とともにもとあった縦長の看板が取り外された。ストーンウォール・インの内装は残っていない。

1990年に新しくバーが入り、翌年にストーンウォールと改名した。現在の経営者は2006年にバーを取得し、それ以降「ストーンウォール・イン」として営業している。

これはバーの隣にあるビジターセンターの中。
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ストーンウォール反乱の前にもLGBTQの人たちと警察の対立は起きており、これが初というわけではない。1959年のCooper Do-Nutsを初め、60年代にもロサンゼルスやサンフランシスコで発生している。ゲイ・ムーブメントの始まりというわけでもなく、1950年にロサンゼルスでMattachine Societyというゲイライツ運動体が組織されたりしている(世界初は1897年、ベルリン。アメリカ初は1924年にシカゴで人権協会Society for Human Rightsができているが短期で解消している)。

ゲイムーブメントと絡んだ形で「プライド」という言葉が使われた起源は1966年、ロサンゼルスで設立されたゲイ運動団体がPRIDE (Personal Rights in Defense and Education)と名乗ったことに遡る。PRIDEが発行したニュースレターは雑誌「Advocate」となり、現在も刊行されている。
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2016年、オバマ大統領がバーの向かいにあるクリストファー・パークをStonewall National Monumentとして指定。建物は州と市の史跡になっている。

* * *

地下鉄に乗ってマンハッタンの南のほうに行きます。去年そんなんなってたかなと思うんですが、乗車券を買わなくても、クレジットカードを直接改札機にタッチすると抜けられるようになっていました。警備員がそこここにいるせいか、DCと違ってタダで通り抜けてきたおかしなのが乗ってる感じもせず、ちゃんとしてました。まあ真昼だからかな。
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中華街に行きます。
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この辺歩いてるところで、某大統領が「選挙戦やめますわ」と言い出したために職場がえらい騒ぎになっていましたが、弊管理人としてはできることもないのでワンタンメン食いました。
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$8.75、ぷりぷりのエビと豚肉のワンタンが食べ応えあり。空腹も手伝ってかなりおいしくいただきました。サービスチャージと税金入れて$11ちょっと。安く感じる。自動的にサービスチャージ18%がとられているのに気付いたため、チップは0にして出てきた。危なかった。

そこからさらに歩いてブルックリン橋。歩けるレイボーブリッジって感じでしょうか。
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ここは完全におのぼりさんスポット。
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汗でどろどろ。17時に宿にチェックインして、近場でガパオ食って寝ました。睡眠がやや足りてなかったのでよく眠れました。

つづく。

2024年07月19日

早起き週とアメリカと私

職場の人たちが大挙してウィスコンシンに行ったので、8時始業の早出シフトが月火水、24時終わりの夜勤シフトが金と回ってきて、なんかぼーっとしている間に終盤を迎えた週です。

前の大統領が撃たれた件はたまたま土曜出番で職場にいた弊管理人が対応することになり、シフトの始まりの午前8時から午前3時まで19時間勤務(後半は多忙)しました。事態の変動がほぼなくなった3時の時点でも東京からは「上からいろいろ注文がきてるので、あとでまた連絡する」と言われ「20時間になるんで帰りますけど」と言ったら「じゃあいいです」と言われて終わりました。まあ修辞を弄する程度なら日本で元気に起きてる人たちでできるでしょ。過去に過労死を出し、最近もメンタル発生してる部署と添い遂げていいことはない。

金曜は政府系の会合というかパーティーに行ってる友人と夕飯を食べるという話になったが、パーティーの終了時間より早い時間を指定されたので早めに抜けて行くのかなと思ったら会場に呼び込まれた。すっかり出来上がってるアメリカ人ばかりがわいわい騒いでてうるさく、知ってる人もいないので「外で待ってる」といって散歩。
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終了時間になっても連絡がこないので「帰るわ」とメッセージ送って、近くのスーパーで買い物してたらわりと慌てた感じで連絡がきた。でメシ食って帰った。週末から帰省するそうなのでしばらくはこういうことはなさそう。ちなみに「土曜の昼、空港まで送ってくれない?無理ならウーバー呼ぶけど」と言われたので無理じゃないけどウーバー呼んでもらうことにしました。

* * *

◆江藤淳『アメリカと私』講談社、2018年

1960年代前半にプリンストン大学に滞在した著者の滞在記。アメリカを見ると、その全体などとても見えないのに、それでも何か言いたくなってしまうのは洋の東西や時代を問わない。それだけ変なところだというのと、それぞれの人が自分の見識を試したくなるのと、その混合でなんかそういうことになるのかも。60年前に批評家が(東海岸の大学町という狭い窓から)のぞき見たアメリカと、今の弊管理人の思ったことをメモしておきます。

「ここでは、いわば社会は人種差別することによって受容れていた。逆に日本の社会にひそんでいるのは、ときには媚びさえ含む微笑の底にかくされた拒否である」(p.90)
そうだなと思った。

一時帰国、
「その醜悪な街[東京]を行く人々の顔は、どれも不思議なほど明るかった」(p.97)
これは時代の違いを感じる。

「米国が特にこの黒人問題で苦悩しなければならないのは、この国が日本とも英国とも、その他もろもろの歴史の影をひいた国ともちがって、合衆国独立宣言という理念の上にうちたてられた新しい、実験的な国だからではないだろうか」(p.160)
これは今も大統領が「理念によってできた唯一の国だ」と言う。ソ連を無視しているか忘れている予感はするが。

「もとより言語能力と兵役とは、米国市民になるための最低条件にすぎない。加えて米国式に清潔な、規律ある生活様式に適応し、これを維持する能力が要求されるとすれば、ここに作用するコンフォーミズムは相当なものといわなければならない」(p.162)
「それでは米国人になるとは、具体的に何を意味するか。ひと口でいえば、それは英語をつかって生活するということである」(p.231)
日本人でも一定条件を満たせば米国人になることはできるのに対し、米国人が日本人になることはいくら日本語ができてもできない、というのはいい対比だと思った。なので、日本通の米国人には、いくら努力しても外人扱いをする日本に対する憎悪があるのだとも。
しかしこういうことだとすると、現在のスペイン語コミュニティの増大は、想像以上に根本的な部分で米国を揺さぶっているのだろう。肌の色の違いも手伝って、昔の非アングロサクソン移民の比ではないくらいに。

キューバ危機の当時。一向に社会的な支持が得られないパシフィストのデモに際して。
「社会の空気が非同情的だからといって、こういう少数派の主張を抑圧しようとはしないところが米国のいいところかもしれない」(p.172)
まあそうかな。主張するほうもカウンターやるほうもとにかくしゃべくるので、事を構えるハードルが高いのかもしれない。日本は内気なせいか、殴り返してこないだろうと踏んでわりと積極的に嫌がらせする輩が出るね。

「彼ら[米国人の専門家]の冷静な分析と見えるものの底に、こと米国の利益については一歩もゆずらないという強烈な感情がひそんでいるということでもある」「私は、あらためて社会科学というものが結局理論的表現によって行われる感情の放出ではないかということも、考えてみないわけにはいかなかった」(p.180)
後日の文章に、この本を読んだ米国人の一部が怒ったという振り返りがあったが、このあたりが理由の一つだったんじゃないかなと思った。だけどまあ米国人は米国の利益を最大化するという目標を疑ってないのは確かにそう。「理想主義は実はケネディ氏の「スタイル」」(p.243)であって、彼もやはり一皮剥けば米国第一主義の権化だったという診断に通じる。

「とにかくこの国は、生存競争のきびしい、生活に全力をあげて立向かわざるを得ない国である。その背後に、依然として比較的豊かなチャンスがあるので、うまく行っているのである」(p.187)
こっちに来たころ、友人に「米国は余裕がない国に見える」と言ったら「逆だと思った」と言われたことを思い出した。弊管理人はその後、「余裕がない国」のほうに一層傾いた。基本的にみんな怠け者だが、根本的な「休まらなさ」がある。そのことは、別の所では「米国社会に内在する一種の苛酷さ」(p.249)といわれている。

アメリカの「地方主義」=だいたい地元のことにしか関心がない田子作っぽさと、危機に直面したときに急激に立ち上がる抽象的な「合衆国」モードの二面性について。「合衆国」モードは「地方主義」からの切り替わりではなく、実は地方主義のある一つの現れ方だろうという見立て。
「現に、「キューバ危機」のときの中西部からの反応が強硬をきわめ、ほとんど好戦的ですらあったのは、その[地方主義の]ひとつのあらわれだったのかも知れない。郷土愛が強く、具体的であればあるほど、一方で「合衆国」という全体は抽象的なものになり、国際的な力関係のなかにあるひとつの国家であることをやめて、一種の理念に変質する」(p.189)
これ、いい分析だと思うな。「いわば移民上がりの自作農がつくった数知れぬ「小さな」町の集合である」(p.255)というのは地理の観点から同じことを言っているように思った。「帝国」ってまさにこういうものなのでは。

「日本人には、価値は過去と断絶したところにある――あるいはそこにしかない、と考えたがる傾向がある。逆に、米国人は、価値は農業的過去との連続の上にある、と考える。さらにこの二つの矢印の示す方向をたどって行けば、あるいは日本人にとっての価値の根本は新しい物質、または技術であり、米国人にとってのそれは古風な倫理である、というようなところまで行きつくかも知れない」(p.253)
アメリカ人の自己中心的で目の前のことしか見ず、批判されるのが大嫌いな「国民性」のようなものがキリスト教とか資本主義といった文化や制度を強烈に規定している。なんなら神もエビデンスもわしのためにある、という態度。世界中で嫌われながらなお好きにしていられるのには、地理的条件のほかにこういう明るくて迷惑なメンタリティの寄与するところが大きい。

2024年07月12日

エルエ~

ロサンゼルス。「ロス」じゃなくてLAだぜっていうアメリカかぶれ。
出張でした。西海岸は去年の正月に乗り継いだだけ。土を踏むのは初めて。

土曜は18時前発。余裕こいて空港いったらデルタ航空のアプリがバグり、若干焦りつつも空港の発券機で搭乗券を印刷してセーフ。自分をほめたい。
西部に行く飛行機好きなんですよね。景色が森から中西部の平原、そして砂漠に移ってく感じが。
これはアリゾナかな。おととし行ったあたりかも。古い噴火口だと思う。
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DCはそれこそ37度とか38度になって「こんなことあったっけ?」というくらい暑い7月初旬でしたが、LAX空港に着いたら22度とちょっと肌寒いくらいだった。カリフォルニアって灼熱のイメージなんですけど。なぜ?
飛行機に5時間乗って3時間戻るので、体は23時なんだけど世界は20時。
空港で車を借りて、In-N-Out Burgerという西部にいっぱいあるハンバーガー屋に行って、
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ハンバーガーだけテイクアウトしました。
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なんか西部にいた人とかアメリカ詳しい人に勧められるんだよね。どこがというとよくわからないけどうまかったです。

日曜はこんなところにいました。借りた車はKIAのなんかかわいい形のやつ。いまどきキー挿して回したり、ボタン押して引くサイドブレーキだったりしますが、かえって分かりやすくていいです。走りも快適でした。
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住宅街に油田のある風景。
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ガパオ食って空港に戻って、車返してLAに戻ります。空港バス$9.75、まあ悪くない。地下鉄に乗ってホテルへ。ホテルは日曜~火曜の泊まりなので結構安く泊まれました。1泊$160くらいですかね。夕飯はもうどうでもいいのでホールフーズのおかず。行き帰りは叫んでる黒人と座り込んじゃってる白人とかをよけて進む「戦わないバイオハザード」みたいな感じ。荒れてます。リベラルな州は旅行者にとって危ないという経験則は健在です。

アポイントメントが日曜と火曜に分散してしまったので、月曜はふらっと出掛けました。
電車で1時間、サンタモニカは逗子であった。
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涼しいのはありがたいが、むしろちょっと寒かった。半袖短パンの弊管理人。
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退散してロサンゼルス郡美術館に行きます。
内陸のほうに戻ってくるとまた覿面に晴れる。
フォー食ってから美術館へゴー。
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フーコーのアレ、こんなところにあった。
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結構見応えあり。$28は高いが。
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写真からわかるように夕方になっても太陽光がさんさんと降り注いでます。
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奈良美智さんどこにいるのかなと思って探してたら外にいた。
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敷地は広くて公園みたいになっていて、これは1日いられるなと思いました。
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バスで戻ってシャワー浴びてすっきり。日焼け止めをわりとこってり塗って行ったのでひりひりはしませんでしたが、ちょっと黒くなりました。

火曜は午前中に仕事を終えて、お昼は友人に「日本食食ってこい」と勧められたリトルトーキョーに行ってみました。なんか浅草橋をさらに茫漠とさせた雰囲気。オオタニサンがいた。
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どういうルートで仕入れているのか分からないがデイリーヤマザキみたいのがあり、さらに紀伊國屋もあってアメリカのオタクたちが徘徊していたのも面白かったが、とにかくメシだ。よくわからないが「こうらく」というお店に入ってみました。わあ日本。
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どうみても日本人でないおじさんが作る天津あんかけチャーハンを所望。3200円。
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細長い人参が入っている点以外はチャーシューも香りも完璧で、ぼそぼそ食っていると3年間凍結してあった自分の中の町中華が溶け出してきて、リアルにちょっと泣けた。味覚すごい。「美味しんぼ」でアラブの強面えらいひとに貧しかった子どもの頃に食った味を再現して出したら泣きながらガツガツ食い始めたという話があった気がするが、あれだ。
そして弊管理人はやっぱり日本で王将のチャーハンと餃子を食って生き、そして死ぬべきなのだと悟った。30代の初めくらいでアメリカに来たらひょっとして何とかしてこっちに移住してやろうと思ったかもしれないが、もう遅い。

満ち足りたところで現代美術館「ブロード」に転戦。
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建物いいですね。
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絵ではバスキアがよかった。
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タダってすごくない?金持ちの威力。

周囲も目立つ建築いっぱいです。ディズニーの名前を冠したコンサートホール。
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こちらは商業ビルかな?The Grand LA、下から見るとあまり面白くないがフランク・ゲイリー。
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全然名前が覚えられない天使のマリア大聖堂Cathedral of Our Lady of the Angels
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いやまあどれもいいんだけど、からっぽの空間に作品展示しましたみたいな、何か建物と土地が調和してない無造作な感じのする街だなって思いました。あと規制がそうなのか分からないが、砂漠みたいな色した建物が多い気がする。

喉かわいた。グーグルマップを見たらなんかよさげなendorffeineていうコーヒー屋があり、バスに乗ったらチャイナタウンであった。
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でもって最寄り駅から電車に乗り、空港バスに乗り継いで、
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カリフォルニア名物夜行便で朝5時台にDCに戻ってきました。
眠かったけど楽しかったのでよし。アウトプットもなんとかできそうだがちゃんとした形になるかな……

* * *

瞬きしてるうちに1週間は過ぎ、土曜日の出番は昼過ぎまで凪の状態でいいなと思ってたら前の大統領が撃たれて朝3時半まで仕事になった。この話は次で。

2024年07月04日

ジュライフォース

おととしの独立記念日はパレードを見に行って、そのあとアーリントン墓地で花火鑑賞。
去年はマウントバーノンに行って、夜はナショナルモールで花火鑑賞。
今年はお呼ばれです。
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赤・青・白のアメリカ色をほんのりフィーチャーしつつ、普通のパーティー。
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飲みゲーしたり、テレビで恒例のホットドッグ早食い競争見て「きっしょ~」とか言ったり。
なんか電力の話から原爆の話になって、「日本人は結構あれは民間人の大量虐殺だと思ってるけどね」みたいなことを言ったら相手は元軍人だった。あぶな。
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アメリカの家って玄関は階段を数段上ったところにあり(下に半地下の階がある)、玄関前のポーチには鉢植えだのテーブルだの椅子だのが置いてあって、日がなそこに座ってぼーっとしている住人をよく見かけます。
とうとうできた!
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うん、これは至福の時間かもしれない。哲学ができる気がする。

一部、次のパーティーにはしごする人たちを車で送りました。アパートの屋上で花火を見るというのですが、花火後の大渋滞が厄介そうだったのでさっさと帰ってきました。
今年は花火はなしかな、と思いながら家に帰ったら、意外とまだやってる時間。屋上に上ったらちょっと遠いけど見られました。
DCのナショナルモールの花火は20分弱で終わっちゃうんだけど、実はアーリントン郡の至る所で花火が上がっており、しかもずーっとやってる。途中で部屋に戻りましたが、去年やおととしとはまた違った趣の花火が見られました。

去年の日記には「夏が始まった感じがした」と書いてあり、確かにこの週末は全部休んで4連休にする人たちが多いようですが、なんか日が落ちると涼しくて雨の後のため結構ガスっていたこともあり、夏の終わりのような感じがしてしまいました。アメリカ最後の7/4、結局は満喫して終了。

さよならの季節

7月だ。7月。今年前半、何をしてたか思い出せない。
そんなにびゅんびゅん過ぎた感じはしないけど、これ以上速かったらすぐ死んじゃいそう。

在DCの公的な立場の人たちは異動の季節です。
6年という長期にわたって、ある世界に君臨してきた人の送別会は事務所のルーフトップで催されました。150人くらい集まったとのことです。
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アポイントとろうとしても会えなそうな人もちらほら客として来ていました。

当日着いたばかりという後任が挨拶。米国勤務経験はあるようだが、やはりまだ英語モード・アメリカンスピーチモードになっていなかった。「着いたばかりでよくわかりませんが仲良くしてください」ではなく、自分は具体的に何ができる人か/あなたがたと具体的にどういう案件で関わると認識しているか/それは日本とアメリカの協働という広い文脈にどう位置付けられるか―を簡単でいいから一言ずつ言ってさっと終わったほうがいいんだろうなあと思いながら聞いていました。

英語堪能、明るく社交的、クリスマスはパーティー行脚、えらい人たちとカラオーキー、と余人をもって代えがたい人脈を築いてきた今日の主役に、はなむけのスピーチしたい人~?という呼びかけに、次々とマイクが回された。
スピーチしたアメリカ人の客が、後任に「big shoes to fillだけど頑張ってね」と言った。そこまできつい訳が適当かは分からないが、要は「この人の跡があんたに務まるか?」ということ。人ごとだが弊管理人は震えました。優秀な人の後任というのは、かくも厳しい。

あと、弊管理人含め、日本人は全体的に汚い(主役はさすが、ちゃんと華美でないがきれいな服を着ていた)。髪をきちんと整えていないし、歯が黄色いし、肌のケアをしていないし、上着を着ていなかったりする。しかし比較対象はアメリカの中でも上の方の階級の人で、特に互いを値踏みするコミュニティの中だということから、必ずしもフェアな比較ではないことも分かる。アジア諸国の同業者とか見ているとそんなすごいきれいにしているわけでもなく、以上のことは何か特殊な地域の特殊な階層の話なんだろうなとは推測します。

建物1階のパブで、もう1組の新旧交代者と一杯飲んで帰りました。
もうすぐ帰る人、着いたばかりの人。2年数ヶ月前、もうすぐ帰る人に「ここはホームになりますかね」と聞いたら「なりますよ」と答えられたのを思い出しつつ、両方の気持ちが分かる立場になったなと思いました。

* * *

翌日も小さな送別ランチをやりました。ネパール料理屋で、モモとダルバート、あとネパールビールという名のマッコリみたいなお酒。
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仲良くなったのか、そうでもなかったのか。よくわかりませんが、あちらから「最後にランチを」と言ってくれたので仲良かったのだろうと安心しておくことにします。
「ではまた半年後に東京で」といって別れました。

* * *

3日。
5月に折れた歯の治療は、クラウンを取り付けて終了しました。
やっぱり合計2000ドルくらいした。できるだけ長くもってほしい。
前回回収し忘れた、折れた歯。「記念にくれませんか」と言ったら「あ、もうないです」と言われました。腕はいい先生なんだけど、そういうとこな。

そのあと出社したんですが、なんかすごい疲れていて、あまりちゃんと仕事をしないまま帰って、前日より少し早めに寝ました。

* * *

大統領選挙の討論会のあと、振るわなかったおじい周辺がわさわさしています。
・歳なのは前から分かってたじゃん。大人の事情に囚われすぎ
・と同時にみんな目の前のことに囚われすぎ、で流れを作ったらなんとしても押そうとするのこわ

* * *

◆栗田治『思考の方法学』講談社、2023年

同じ講談社現代新書の『創造の方法学』にタイトルを借りたかな。
モデルとかオペレーションズリサーチの話題を扱った本。原理と応用がコンパクトに示されていて参考になりました。
モデルの類型:
 定性/定量
 普遍(理学)/個別(工学)
 マクロ/ミクロ
 静的/動的
と、その使い方。ほかに、
使用上の注意につながるいくつかの概念:
 正味現在価値法
 埋没費用
 パレート最適
 伝統主義
 フェティシズム(目的と手段の転倒)
 官僚制の順機能と逆機能

ある程度経験のある人にとって、見聞きしたこと、考えたことを整理する手助けになると思いました。

* * *

滞在33カ月満了、34カ月目。残り7カ月。

2024年06月23日

ソルロンタン

結局、土曜は37度、日曜は38度まで気温が上がり、おおむね家にいる土日でした。
いうても湿度がそこまででもないので「お~暑いね~」くらい、東京が38度になったときの「やばい感じ」はありません。
このところなぜか酸味のある料理を作りがちで、しかしそれも段々飽きてきて、日曜昼は初めてのソルロンタンを食べにアナンデールという韓国人コミュニティのある街に行ってきました。
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牛骨スープ。塩味はほとんどついていないので、塩胡椒やキムチを突っ込んで好みの味にするスタイル、だと思います。なにぶん初めてなので勝手が分からないけど。
そしてご飯を浸けて食べたり、キムチで白飯食ったり。これ、こういうラーメン食ったな、錦糸町あたりで(→麺工房・武だった)。
結構おいしかったです。二日酔い気味の時に食べたいかも。刺激的な味ではないのに食ってたら汗だくになった。

* * *

・仮歯を入れてニカッと笑えるようになったが、歯磨きで負荷をかけすぎないように細心の注意でやらないといけないのが面倒
・給料の円ドルレートが改定になり、$1=134円から157円になった。「減給10%・2カ月」くらいの減り方した。なんだこれ

今週はこんなところです。そろそろ真剣に夏休みを含めた当面の計画を固めないと。

2024年06月22日

月はすごい

◆佐伯和人『月はすごい』中央公論新社、2019年

仕事上の必要からKindleに落として通勤バスでガツガツ読んだが、全ての事実に「仕組み」や「理由」が書いてあるのがとてもよかった。アメリカ人の説明はかっこよさげに物事を語ることに重点を置いていて、「それがなんなのか」はわりと分かりやすく言うものの、「なんでそうなるのか」をなかなか書いておいてくれない。その点、実績のある新書編集部はさすがで、月はすごいが著者もすごい。そして2019年の執筆当時から今まで本当にいろんな成功や失敗があり、そしていろんな計画が遅れてきたなという感慨を抱いた。


・フロンティアよりも「7番目の大陸」
・なぜいつも同じ側を地球に向けているか:少し重い月の表側が地球の引力に引きつけられているから=自転・公転周期が同じ=「自転が惑星にロックされている」
・月の裏側:
 1959 ルナ3号(ソ連)カメラ撮影。裏側はメンデレーエフなどソ連の人の名前の地形が多い
 1968 アポロ8号=有人月周回探査、初めて肉眼で裏側を見る

【高地と海】
・明るいところは「高地」、暗いところは「海」。面積は84:16
・高地:斜長岩(ほとんどが斜長石。花崗岩の白い部分も斜長石)
 固まった地殻。46年分の隕石衝突でボコボコ
 斜長石はAl, Si, Oが入っている
 斜長岩は地殻を形成(アポロ試料で確認)
 マグマの海仮説:月を覆っていたマグマからFe, Mgを含む鉱物が結晶化して沈む
  →Al, Si成分が多くなり、斜長石の結晶→マグマより軽いので浮いて地殻に
・海:玄武岩(斜長石と輝石が半々)
 マグマが地表に出てすぐ冷えたため斜長石は小さく、全体的に黒く見える
 輝石はFe, Mgを含む鉱物
・海は巨大隕石衝突でできた孔を溶岩が満たしたもの
 ※ただし孔ができて1億~10数億年後。その時期にU, Thの崩壊熱で岩が溶けてマグマ形成
 高地に巨大衝突→マグマ埋め立て。若い土地なので滑らか
・これまでの月着陸探査はほとんどが海
 嫦娥4号(2019)も高地の中のクレーターで、溶岩が埋め立てたところ

【月食】
・月は年約3cmずつ地球から離れている→数億年後には皆既日食が見られなくなる
・月食は世界同時に見える。日食は影の部分だけ
・月食になると太陽光発電ができなくなるので月探査の際には機材の過剰冷却と故障注意

【月のできかた】
(1)兄弟説=月が地球の隣で同時にできた
 △同じ材料でできたはずなのに月は密度が小さい
(2)親子説=地球の自転が不安定な時期にちぎれて飛び出たのが月
 ○地球の重い核ができてから地殻やマントルがちぎれたなら密度差は説明できる
 △自転の不安定が本当にあったのかも仕組みも不明
(3)他人説=月がどこかから飛んできて地球の重力に捕捉された
 ○別の場所でできたなら密度差は説明可能
 △月と地球は酸素の同位体構成が似ている。通過も落下もさせず捕捉するのも難しい
(4)巨大衝突説=初期地球に火星サイズの天体(テイア)が衝突した破片が月
 井田茂、小久保英一郎らがシミュレーションで可能性示す
 ○衝突時の熱で厚さ400kmものマグマの海仮説も再現できる
 △飛び散る破片はほとんどがテイアの破片。そんなに地球に似ていたのか?

・レゴリス=大小隕石に砕かれた月面岩石。細かな砂。小麦粉サイズ
 満月が半月の倍以上明るい「衝効果」の原因でもある
・宇宙風化=宇宙から降る放射線、微小隕石の高速衝突による岩石表面の変化
 表面が不透明な粒子によって赤黒く変化(アポロでFeの粒確認)
 実際の試料で確認できているのは月とイトカワだけ(※執筆時)
 →隕石衝突し地下の新鮮な岩石を飛ばすと明るい筋(レイ)ができる
  =レイは消えるのに約10億年かかる。見えるものはそれより新しい

【月面】
・寒暖の差が激しいのは大気がないため。地球は大気が熱を運んで平均化している
・日なたは120度、日陰は-80度、夜は-170度(夜は2週間)
・越夜技術:装置をレゴリスに埋める、断熱材で囲う、電力で暖める
・隕石が燃え尽きず、1mm未満の隕石も秒速10-20kmで落ちてくる。小さい隕石ほど頻度が高いので危険。落下地点から飛ばされてくる破片も空気抵抗で減速されない
・放射線
 (1)銀河放射線=超新星残骸からくる高エネルギー粒子
 (2)太陽風=太陽からくる電磁波や粒子
 地球は磁場が逸らし、大気が威力を減らすが、月は固有の磁場も大気もなく年100-500mSv
 →数mの壁が必要。外での活動も制約
 太陽フレア時の退避も
・月へ行く途中の放射線=バンアレン帯(地球磁場に捕捉された荷電粒子)
 1958 エクスプローラー1号が発見
 内帯 高度1000-5000km
 外帯 高度15000-25000km

【水資源】
・月では水1リットル1億円。これ以下で採掘できればペイ
・水
 1994 クレメンタイン(米)南極地域の電波反射波で水を思わせるデータ
 1998 ルナプロスペクター(米)中性子分光計、極に水素が大量にある場所あり
 2009 エルクロス(米)クレーターにロケット打ち込み噴出物観測、水蒸気の特徴
 いろいろあるが行ってみないと分からない。たくさんあると思う人も思わない人も
・太陽光発電で作った電気で分解→復路の燃料、火星や小惑星に(小重力で大気がない月からの出発が有利)
・飲み水、呼吸する酸素の減量、農業(のち呼気や排出物のリサイクルでまかなえるが)
・永久影。極では太陽はほぼ地平線を這う。クレーターの底は永遠に日が射さない
 「かぐや」の地形カメラが調査、シャックルトンクレーターの底は-190度と推定
 →数cm~数10cmもぐったレゴリスの隙間に微小氷が付着しているのでは(小さい隕石の衝突で表面がかき回されて一部は深いところに移動している)
・水がある原因
 (1)彗星や隕石の落下→蒸発→超低温レゴリスに触れて凍り付く
 (2)地下からの供給=マグマに含まれる水。10億年前くらいまで火山活動
 (3)太陽風=H,He原子。レゴリスに突き刺さり、閉じ込められて鉱物中のOと反応か
・なかったら?
 太陽風起源のH利用。レゴリス加熱して取り出し、レゴリス鉱物内のOと反応させて水製造。コストや手間はかかるが、Hが大量にあれば可能

【金属、Si】
・鉱物:天然に存在する無機物質で、化学組成や物理的性質が同一の部分
・岩石:鉱物の集合体
・かんらん石:Mg, Fe, Si, O。マグマが冷える最初のほうで出てくる。重い→マントル構成か。地球の上部マントルもかんらん岩と思われる
・チタン鉄鉱:FeTiO3。玄武岩に入っている
・建設資材:レゴリスの焼結ブロック。太陽電池による電気炉か太陽光集光した太陽炉で加熱しれんがのようなブロックを作る。建物のほか、重機の重しにも(ショベルカーが地面を掘るときに浮かせない)
・金属:Fe, Ti, Mg, Al, SiはOと結びついてるのを引きはがす。Hと混ぜて高温にするとO+Hで水になり、元素を単体で取り出せる。チタン鉄鉱からのTiか斜長石のAlをFeに混ぜて鉄鋼を生産
・空気がないのでさびない
・Mgは合金にして宇宙船の機器
・Siは太陽電池パネルの基材に
・原子力電池:放射性物質から出る熱で発電するか、放射性物質から出る放射線で蛍光物質を光らせて太陽電池で発電。ボイジャーのほか嫦娥3号ローバー(玉兎)に搭載。夜が2週間続く間の保温に。ただし安全性。カッシーニの地球スイングバイへの反対運動(と強行)
→月で採掘の可能性。マグマの中(eg.ハンスティーン・アルファという火山ドームなど、鉱物を生成したあとのマグマに濃縮されている可能性)。トリウム異常地域にもウラン鉱床がある可能性が高い。ただし低コストで採掘できるのはかなり先か

【月の一等地】
・高日照率地域(年間の80%以上日が当たる地域)が存在。太陽光発電して充電し、日陰の間は機器を暖めてやり過ごす。探査機の着陸、有人基地に最適。「かぐや」探査である程度まとまった面積(数百m四方)の地域は5カ所しかないことが判明。表側には2カ所のみ
 極域探査の場合はそこから永久影まで高日照率地域が続いているとよい
 ちょっとそれると日が当たらない地域→SLIMのピンポイント着陸技術が必要。LUPEXは半径50m内着陸が求められる
 フライホイール式蓄電施設、核融合炉、電波天文台(裏側に)
・縦穴=溶岩トンネルの天井に穴があいたもの。火山地形。「かぐや」とLROが発見。中に空洞があるのは3つ。延長距離50kmか。隕石や放射線よけ、寒暖差の緩和
・取り合いになる資源:限られた場所にあるもの。高日照率地域、縦穴、永久影(の近くの採掘基地となる日照率の高い地域)、核燃料鉱床(火山度オーム、Siの多いマグマ陥入地域)
・取り合いにならない資源:あちこちで手に入るもの。鉄、チタン。チタン鉄鉱は海を構成する玄武岩の中に存在。HやHe3も太陽風として月全体に降る。Alは斜長石、どこにでもある

【エネルギー】
・化石燃料を地球から持っていっても燃やすための酸素を作らないと使えないので、最初は太陽電池
・水素=ロケット燃料。H+Oで爆発→H2Oが高速で打ち出される→反動でロケットが進む(※はやぶさの電気推進はキセノンガスに電磁波を当ててXeイオン+eにし、イオンを高電圧で加速して打ち出す)。極地に氷がなくてもレゴリス加熱でHは手に入る。太陽風由来なので持続可能(ただし取り尽くすとまたたまるのに時間がかかる)
・He3=太陽風に含まれる。核融合燃料

【食料生産】
・嫦娥4号(2019)棉花やアブラナ、酵母やショウジョウバエを搭載→温度管理失敗(高温)したが、月での農業を念頭に置いていたとみられる
・呼気のCO2や排泄物リサイクルとしても農業を考慮
・ないもの:C(月の岩石にない)=炭素質隕石が使えるか。N(火星にはある)=肥料持ってくるしかない。Pも持ってくるしかない
・あとは植物→動物→食べる、のサイクルを作れば自給自足は可能
・昆虫含め、食材の多様性がないとアレルギーが出たときに困る
・昼夜2週間ずつ→LED光源で、断熱・放射線遮蔽された室内で実施

【月~太陽系へ】
・月探査のトレンド
(1)氷:LUPEX、ロシア、中国も着陸やサンプルリターン狙い
(2)火山地域:嫦娥5号(成否は要確認)。月の噴火は何によって起きたのか(水蒸気、CO、…)
(3)南極エイトケン盆地:表と裏の違い、地殻の下の岩石層

・火星
 1971 周回はマリナー9号(米)・マルス2号(ソ)、マルス3号が軟着陸
 1976 バイキング1号(米)が軟着陸
 1977 ローバー:ソジャーナ(米)
 2003 マーズエクスプレス(欧)
 2003 のぞみ(日)=失敗
 2004 スピリット、オポチュニティ
 2012 キュリオシティ
 2014 マンガルヤーン(印)
 2018 インサイト(米)
 火星サンプルリターンは未達
・北半球の大部分が海だったとみられる。火山活動も活発だった。プレート運動も?
・CO2とH2Oが凍り付いた極冠が南北の極にある→農業
・メタンがあるらしい→ロケット燃料
・プレート運動凍結、大気薄く、海洋蒸発、生命いるかも?

・小惑星
・デイビッド・トーレンらの分類(1984):明るいグループ(V,Q,R,S,A,E,M)、暗いグループ(C,G,B,F,T,P,D)
・未分化な小惑星は太陽系形成時の物質を保存している。太陽系の初期状態を探る
・分化した小惑星はさまざま。地球のような構造がどうやってできたか
・資源として:鉄隕石の母天体から金属鉄採取(精錬がいらない)とか、地球では核にほとんどが入っている白金、イリジウムなど
・氷衛星:内部に海・生命?=ガニメデ、エウロパ(2012、2016にハッブルが噴泉観測)、エンケラドス(2015カッシーニが噴泉に突入し成分調査)、タイタン(2005にホイヘンス・プローブ着陸。液体メタン、エタンの川や湖、海)など
・系外惑星:Exoplanet.eu、プロキシマb=ブレイクスルー・スターショット計画は20年で到達目指す。20年後出発?

・課題
(1)アウトガス:真空環境で接着剤などからガスが出て他の部分に付着する。レンズなどにつくと観測ができなくなる
(2)宇宙放射線:重くないどんな素材で遮蔽するか。電子回路の誤動作(アポロはコンピュータ3台の冗長系)や故障、カメラのレンズ曇り
(3)熱設計:真空や月面では対流が使えない→熱がこもる。シミュレーションや真空容器で試験。

フェミ+量子

なにやらえらい熱波がきており、DC界隈は37度。家にこもる日と決めて、だいぶ前に読み終わってたもののメモをコンプ。

◆デボラ・キャメロン(向井和美訳)『はじめてのフェミニズム』筑摩書房、2023年。
Deborah CameronのFeminism: Ideas in Profile (2018)の訳です。

ちくまプリマー新書なんですけど、一枚岩でない対象や歴史を「フェミニズム」という一つの言葉でくくったことに由来する面倒くさい感じ(本書の言葉では「複雑さ」。典型的には従来型の行動批判→「女性の自主性を否定している」という批判→「それは自由な選択ではない」という再々批判)を活かしながら要約したとてもいい本だと思いました。

【はじめに】
・意味は:「女性は人であるという理念」、「性差別・性差別的な搾取と抑圧を終わらせる政治運動」、「分析枠組」のいずれかか組み合わせ(pp.9-10)
・二つの基本的理念「女性は社会において従属的な立場にあり、不正義や制度的な不利益にさらされている」「それは望ましいものでっはなく、変えられるし変えるべき」(p.19)

・「第1波」19世紀半ば~女性参政権運動:(1)男性との類似点を強調する議論(2)男性には解決できない女性独自の問題があると強調する議論。米国黒人女性による支持は人種平等につながることを期待。逆に白人女性の参政権獲得で白人の優位性が高まると考えた南部の人種差別主義者と白人女性の結託も(p.12)→1920年代に目的達成すると団結から分裂へ
・「第2波」1960年代米国発:第1波とのつながり強調
・「第3波」1990年代
・「第4波」この10年ほど
・「波」で表すことへの批判もあり。「一般化しすぎ」「前の時代の動きはまだ続いている」

・インターセクショナリティ(クレンショー):人種、民族性、セクシュアリティ、階級…

【支配】
・「構造的な男性優位性」=男性が利益を得る仕組み。※個別の男性のことではない
・進化論を利用した生物学的決定論 vs. 家父長制の起源探究。eg.エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』、母権制社会、狩猟採集社会。現代社会では緊縮財政による公共サービス削減と女性による無償の介護労働の拡大、性的解放(夫のものから社会のものへ)とレイプ文化やセクハラ
・性の自己決定:Roe v. Wade (1973)、英国での中絶処罰対象からの削除(1967)→現在のバックラッシュ。宗教的原理主義、男性の権利主張、オルタナ右翼。途上国でもボコ・ハラムなど
・女性自身の加担・受容:男性との絆、従属的立場の刷り込み(pp.46-47)

【権利】
・独立宣言のall men=白人男性←第1波フェミニズム、女性の権利運動としての理解
  vs. 根本変革を志向するラディカル・フェミニストの批判。投票権返上(1969)
  vs. グローバルサウスの視点。権利は要求すべき(レイシー)
・収入格差、議会構成、生殖(子どもを持つ選択をした人の権利?胎児の権利・父親の権利との競合)、「私的空間」とされながらDVの現場でもある家庭の保護との齟齬、女性の権利に関する国際条約と「よその文化の押しつけ」論、ジェンダーの主流化
・商業的代理出産:個人の生殖の権利擁護 vs. グローバルサウスの女性の搾取 vs. 金銭を得る権利・女性の主体性の否定批判 vs. 本当に権利の問題か?貧しくなくても選ぶだろうか?
・ニカブ禁止:ムスリム差別?女性の主体的な選択の否定(西側に救われるべき女性) vs, 「私たちは何も選択してこなかったと決めつけるのか?」 vs. 有害な慣習を押しつけられるべきでないというムスリム女性の声
 ←マイノリティの文化的慣習批判 vs. 人種差別批判 vs. コミュニティ内部の批判者擁護
・宗教裁判所(不変な神の立法) vs. 民主制下の裁判所

【仕事】
・無償ケア労働、ケアワーク時間の男女格差(OECD)→女性労働力の活用不十分→途上国にとっての不利。有償サービスのある先進国でもケアワーク分配は依然不均衡
・「ガラスの天井」はぜいたくな悩みとの批判←→世帯主男性という受益者の無視、「稼ぎ手」=男性という構造の無視
・家庭内資源の適正分配で女性死亡率の是正ができるようになるには、女性が有給職に就くことが必要(セン)
・高給で安定した製造業(の喪失とトランプの台頭)=男性、低賃金で不安定なサービス業=女性
←→男性の稼ぎに依存できない独身/パートナー男性失業中の女性は貧困に陥る
・賃金格差(1)女性がしているからという理由で低賃金になる構造(2)子どもが小さい間のパートタイムや時短労働がキャリアに与える影響(ジェンダーステレオタイプが背景)
・国が家事労働に賃金を支払うべき←→性別役割分担の保存。ケアワークの脱女性化
・女性と仕事の問題は制度だけでなく個別男女間の摩擦も引き起こす。誰が誰に権力を行使しているのか。「個人的なことは政治的なこと」。女性が自分より稼ぐことは男性の権威への脅威に

【女らしさ】
・本質主義:生物学的機能、生殖機能に基づいた普遍的な性質の想定
 +ボーヴォワール:社会的カテゴリーとしての女性(女に生まれる/なる)。ジェンダー。マーガレット・ミード
・規範は生物学的に説明できないことが多い(eg.足を開いて座ってはいけない)。飴と鞭による強制
・ジェンダーは男性にも窮屈だが、完全に対称ではない。背景として男性優位の構造
・ジェンダーの廃止か/今の苦痛を何とかするか
・服装や色など好みの「生まれつき」論への批判(1960年代)→進化生物学によるリバイバル←→先史時代にしか当てはまらない説明との批判
・親の思い込みや文化的背景から生まれた時から男女は違う扱いを受けて学習していくという心理学的観察。1970年代からは男女別玩具販売反対のキャンペーン、アニメの「女性の美しさ」描写、美人コンテスト、1990年代の摂食障害増加
←→「女性の自律性否定」という批判
←→「女性の選択は社会からのプレッシャーを受けている/内面化している/人生の早期から自由な選択はできていない」との再批判。美容業界の宣伝効果、白い肌>黒い肌

【セックス】
・男女間BDSMに対する「オーガズム支持」vs「男性の暴力と抑圧」
 セックスは「快楽」か「危険」かという立場の違いがフェミニストを二分する
・第1波:女性への危害回避・男の中の野獣矯正
 第2波:カウンターカルチャーの流れの中で自由なセックス肯定。自主性・自我を持つ権利の象徴
 ←→セックスは男性が快楽を得るもの
 →性教育:身体構造の違いやリスク+快楽についての議論も
・ポルノ文化→レイプ文化(行為拒否を責められる、通報・起訴されない)
・売春:男女の不平等の表出と促進。互いの欲求に基づくセックスという原則の侵犯。ノルウェーモデル(買春の禁止+売る側を処罰対象から外す→需要を減らす)
 ←→「上から目線」批判。合理的な選択は否定できず、失業キャンペーンは容認できない
 ←→ドイツなど合法化されてる国でセックスワーカーの社会保障ちゃんとしてなくね
・家庭でも妻は経済的安定の引き替えにセックスと家事を提供してないか
・セックスの拒否というシステム的解決(米・ラディカルフェミニスト)、「レズビアンは女性ではない」
・とまあいろいろあるが「女性は性の自律的な主体であり、誰かの快楽や利益に利用されるものではない」は共通

【文化】
・ダーウィン、ロンブローゾ。文化的に劣った、天才の少ない女性。ヴァージニア・ウルフ:なぜ女性のシェークスピアがいないのか
・文化的排除:映画監督(スザンナ・ホワイト)、科学(マチルダ効果)、作曲コンクール、小説
・見る男性、見られる女性:映画を撮るカメラの視線=観客の視線、人種科学(サラ・バールトマンの見世物)
・介入とバックラッシュ:ゴーストバスターズのリメイク、紙幣の肖像に女性を入れるキャンペーン、テレビゲームの中の性差別指摘。オルタナ右翼「メニニストmeninist」=自分に残されたのは文化的特権だけだという男性への訴求

【断層線と未来】
・ネオナチ、白人至上主義
・第4波:インターセクショナリティ(アフリカ系、トランス、労働者階級)、ジェンダークィア、女性とは何か?→個人が自由に決めるアイデンティティへ→「フェミニズム」と両立するか?
・商品化されたフェミニズム(ディオールの「みんなフェミニストでなくちゃ」Tシャツ)

◆湊雄一郎、酒井麻里子『量子コンピューター』インプレス、2023年。

情報が新しいのと、技術に対する評価(アニーラーがほぼ終わりというのはへぇと思った)や業界の動向が書いてあるのがよい点。
説明がいちいち食い足りないのがいまひとつ。いろんな量子ビットの方式が書いてあるが、それぞれ0と1がどういう状態なのかとか、量子センサーってどういう仕組みなのかとか、量子もつれでなぜ素因数分解が解けるのかとか。「これができます」に対して「どのように」がない。
※と書いたあと、某所からいただいた本のほうがよかったのでそっちをまた別途

・市販の実機Gemini(中国、SpinQ Technology)
・量子コンピューターはQPU(頭脳部分)だけ
・方式
(1)超電導
電子2個、平面に超電導素子(人工原子)、マイクロ波当てて操作、世界で開発(日本は理研と富士通とNEC)、商用化先行、冷却が必要、小型化が困難
(2)イオントラップ
イオン、チップの上にイオンが浮いた状態で静止、横からレーザー当てて操作、欧米、精度が高い・誤り訂正できている、周辺設備で筐体が大型化、誤り訂正量子ビット数が増やしにくい
(3)冷却原子
原子、空中に浮かせて左右からレーザー当てる、欧米、量子ビットの数が多い、周辺設備で筐体が大型化
(4)半導体
電子、電子の上下をチップで挟み上からマイクロ波を当てる、米国(日本では日立)、量産化・商用化に期待、冷却が必要
(5)光
光子、トンネルのようなゲート(通り道)を通す、世界(日本はNTT)、常温動作が可能、周辺設備で筐体が大型化
・古典コンピューター=正答が1つに決まるものに適する。量子コンピューター=答えが定まらないものの計算に適する
・アルゴリズム
(1)FTQC(理想、計算が長くエラーが起きやすい)
化学計算(素材を構成する原子や分子の電子配置を調べて作用を求める、新材料=EVバッテリーの性能向上で走行距離延長、半導体素材)、暗号、金融(複数の株式の最適組み合わせ、倒産リスク計算、価格予測)、検索
(2)NISQ(量子+古典、細切れを足し合わせる、精度上がらない)
化学計算、最適化(多数の自動運転車のルート同時計算して渋滞起こさせない最適ルート)、機械学習(まだ古典のほうが速い)


2024年06月20日

夏きた

夏きたなっていう日々です。きょう(19日)は33度という数字を見た。

9.11でアメリカン航空77便が突っ込んだ国防総省西側のモニュメントを見に行ってきました。
犠牲者の名を刻んだステンレス鋼のベンチが進入路を示しつつ生年別に並んでいます。名前を読む人が建物を向くものは建物にいた人、反対向きは乗客乗員。電話で聞く音声ガイドも。
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* * *

パセリカレーを作った。トマトペーストがちょっと多かったのか、チャンジャか何かのような見た目になってしまったが、うまかった。
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* * *

19日はJuneteenth(奴隷解放記念日)で、何か見られないかなと思ってバスでアレクサンドリアに行ったら、コーラスの最後の瞬間だけ見られた。
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グッズを配ってましたが、なんかしょうもない感じだったので食指動かず。おまわりさんはもらっていってました。
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カルボナーラ食ってバスで帰りました。

* * *

相変わらず歯医者に行ってます。
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もはや無心だが、この、なんだ、普通に歯磨きしてて歯が取れるとかもうやめてほしい。

* * *

仕事はそこそこでした。
しかし暑い。

管理人

40代に入ってしまいました。未婚、子なし、男、文系学士、30万都市出身。何かありましたらツイッターの@kagakuno_koにご連絡下さい。

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