いやもうほんとわかんないこといっぱいなんですけど、他の文献やニュースでごまかしてるところ(なんで複数の状態を重ね合わせると高速で答えが出るのかとか)が解説されててよかった。
通信、暗号、センサーなども含めた量子技術全般やってくれる本があるといいな~
■宇津木健、徳永裕己『絵で見てわかる量子コンピュータの仕組み』翔泳社、2019年。
・古典コンピュータ(CC):
・ノイマン型:CPU+メモリ
・非ノイマン型:ある決まった問題を高速に解く。ニューロモーフィックチップ、
GPU利用、FPGAシステムなど(一部はスマホにも)
・CCが苦手な問題:
・多項式時間での解法が知られていない
・入力Nを大きくすると必要計算時間が指数関数的に増えてしまう
・量子コンピュータ(QC)前史
・1985 ドイチュDavid Deutschが現在の形のQCを理論的に提唱
・1995 ショアPeter Shorのアルゴリズム(古典Cを上回る最初の量子アルゴリズム)
・QC:量子力学特有の物理状態を積極的に用いて高速計算を実現
・広義のQC:万能(エラー耐性)~非万能(エラー耐性無)~非古典(量子優位性無)
・万能QCの実現は20年以上かかるとされている
・数十~数百qubit→量子化学計算(薬品、材料開発)や機械学習に使えるか
・非万能QC:
・NISQ(2017、プレスキルJ.Preskillが提唱)=ノイズありの50~100qubit
・量子古典ハイブリッドアルゴリズム(量子計算を一部で使う)
eg.たくさんの分子や原子の動きをシミュレーションする(創薬、材料開発) ・IBM Q(5または16qubit。実用上はほぼ意味なし)
・当面は冷凍機がいるのでシステムの一部としてクラウドで使うような形か
・量子計算モデル
・万能型:量子回路、量子ゲートを使用
・量子ビットを0に初期化
→解きたい問題を表現した量子ゲート操作
→結果を測定
・特化型:量子アニーリング
1998に西森秀稔、ファーヒE.Farhi、2001の量子断熱計算(ファーヒ)で提案
2011にD-Waveが商用化
→既に2000qubit。ただしコヒーレンス時間(量子ビットの寿命)が短い
組み合わせ最適化問題を解ける。物流の最短経路探索、渋滞緩和など
・イジングモデル
0と1が50%ずつの状態に初期化しアニーリング操作
→解きたい問題を相互作用にマッピング
→スピンの組み合わせは全体のエネルギーが最も低い基底状態へ
→結果を読み出す
用途:店舗スタッフのシフトを要望を生かしつつ最適化
作業工程を複数人数で行う際のスケジューリング
物流経路の最適化、渋滞の緩和、機械学習データのクラスタリング
(すべて組み合わせ最適化問題)
・量子ビット(計算の最小単位)
・0/1の重ね合わせ状態を取る(=波の性質)
ブロッホ球の球面上を指す矢印で表現。緯度=振幅(0/1への近さ)、経度=位相
・他にもブラケット記法(|0>など)、波による表現もできる
・測定すると0か1に決まる(振幅が0に近ければ0が出る確率が高い)(=粒子の性質)
・n量子ビットでは2^n通りの重ね合わせ状態(n=3なら|000>~|111>の8通り)
・量子ゲート操作
・単一量子ゲート操作:ブロッホ球の矢印をぐるっと回転させる
・多量子ゲート操作
・測定
・波→粒子(波束の収縮)
・「測定前には単に量子ビットの状態が分からない」のではなく「測定によって量子ビットの状態が変化する」と考える(コペンハーゲン解釈)
・量子もつれ(2量子の相関。Hゲート、CNOTゲートで作れる)
・量子テレポーテーション
・古典通信ではAさんの量子状態を壊さずにBさんに送れない
・そこで、まず量子もつれ状態の2qubitを作って分有しておく
→Aさんが測定結果を古典通信でBさんに伝達
→Bさんが手元のqubitに結果に応じた量子ゲート操作をする
→Aさんの量子状態が再現される
・量子計算
・多数qubitをゲートに通して同時に多数の状態を実現
→干渉により、正しい答えに対応する確率振幅だけを増加させる(量子アルゴリズム)
・グローバーのアルゴリズム:ハミルトン閉路問題、複数都市の一筆書き順路発見
=解くのは難しいが、正解かどうかは簡単に分かる問題
→探したい経路の確率振幅を増加させる。古典アルゴリズムより高速
・ショアのアルゴリズム:素因数分解を高速に解く
1994 Peter Shorが発表。実用性のある最初の量子アルゴリズム
素因数分解の高速化。答えが出れば簡単に確認できる
ただし現在の暗号解読をやるにはエラー耐性のあるQCで1千万~1億qubit必要
・量子エラー訂正
・古典Cはチェック機能を付ければいいが、量子だと測定すると量子状態が変化してしまい、コピーも作れない(量子複製不可能定理)
・2014 UCSBのマルティネスJohn Martinisが超伝導qubitでエラー1%以下の操作を実現
・まだ小規模なエラー訂正の検証段階
・量子科学技術(量子ビットの実現)
・超伝導ビット(超伝導状態の金属は量子性を強く示す=測定まで波の状態を保てる)
1999 中村泰信+蔡兆申が世界初の超伝導回路による量子ビット動作
*ただし1ナノ秒。現在はコヒーレンス時間が数十マイクロ秒まで延長
Google, IBM, Intelなどが開発取り組み、NISQで
・トランズモンによるビット
・磁束量子ビット:2003 中村泰信(今は主にアニーリングに使われている)
・トラップイオン:イオンをレーザー光と磁場で空中にトラップし、個別に量子操作
イオントラップ(電磁場でイオンを空中にトラップする)は1989ノーベル
レーザー冷却(レーザーを使ったイオンの冷却)は1997ノーベル
→1995 シラクIgnacio Cirac、ゾラーPeter Zollerがトラップイオン量子計算提案
→1995 ワインランド(2012ノーベル)、モンローが実験的に実現
→今、IonQ(モンローの会社)が数十qubitを実現
・冷却中性原子による量子ビット
・共振器に閉じ込めた光とレーザー冷却した中性原子の相互作用させる共振器QED
・イオンに近い状態の中性原子を使うリュードベリ原子の相互作用
・光格子に入れた原子を相互作用させる量子シミュレーション
・半導体量子ドット
・半導体(ケイ素やガリウムヒ素)による量子ビット(1998提案→2006~実現)
超伝導回路のように、隔離した電子を極低温に冷却
2種類の半導体を貼り合わせた界面で電子を閉じ込め、周囲の電極で操作、読み出し
Intelは超伝導回路に加えここにも参入
・ダイヤモンドNVセンター
室温で量子ビットが実現できる
ダイヤモンドのCをNに置き換えると、隣が空席になる(NVセンター)
量子通信むけメモリや中継器(量子リピータ)としての応用にも期待
磁場の微少な変化をとらえる高感度量子センサとしても
・光を用いた量子ビット
室温動作可能、光導波路チップや光ファイバなどと組み合わせてQC実現の可能性
単一光子を放出する光源が必要(難しいが研究中)
→光の振動方向などを量子ビットとして利用。光の量子回路に入れて操作し計算
主な量子操作方法:線形光学方式/共振器QEDを利用
スクイーズド光(レーザー光を特殊な結晶に入射し量子性を強めた光)
→光の状態を量子ビットとして量子計算。東大・古澤明、カナダのXANADUなど
・トポロジカル超伝導体を用いた量子計算
Microsoftなど。まだ緒に就いたところ