■後藤和智『おまえが若者を語るな!』角川oneテーマ21、2008年。
著者「宮台真司とそのお友達と手下が蔓延させた、浅薄で何ら実証的でない社会分析もどきのものを片っ端から名指しでぶった切った本なんですけど」
わたくし「雨もようの寒い日曜日を使って一気読みさせてもらいました。久しぶりに脳を使ったら途中でエンゼルパイと牛乳が必要になっちゃって……いやその、おっしゃってることは確かにそうなんですけど、本であげつらってるのはどれも新書みたいですし、ちゃんとした議論は学術書に譲って、ぼくらはアドホックに提示される物語を『あるある』とか『そりゃないわ』くらいな調子で消費していけばいいんでは」
著者「だめです。そうやって糞論説を垂れ流しながら成り上がっていった宮台は政策に影響を及ぼしたりしてるでしょう。こういう統計データも参照せずに思い込みで世代論を展開するような輩を許してると実害が出るんです」
わたくし「す、すみません」
著者「だいたいほら、自分の興味あるサブカル作品とか話したことある女子高生の言ってたこととか、そんな局所的な証拠から社会全体を語るとかってひどいでしょう」
わたくし「うーん自分の見たところ、作品や証言って、一般論を組み立てる上での材料として使っているケースもあるけど、別立ての思索の中から導いた一般論の切れ味を示す例として使ってるケースも多いと思うんですけど」
著者「だからその一般論を導くのに統計も使わず妄想だけでやってるわけでしょーが!」
わたくし「あがががががが」
著者「その意味でこの本は、手抜きの議論をもとに安易な世代論に参画し、自分以外の世代を敵として作り出して叩いて何かを解決した気になる、そんな知的怠慢をぶちのめすエポックメーキングな本だと思うんですが」
わたくし「うん、読んでる途中に『これは釣られる人多いだろうな』と思ってネットでブログ書評をいくつか見たんですけど、『ならば著者は世代論に代わるものを提出せよ』っていうツッコミは多いものの――個人的にはぶっ壊す仕事には別に対案は必ずしも必要ないとは思うんですが――おおむね『それでも言ってることは正しいね』というものが多かったように思いますね」
著者「そうでしょう、今後はこれを本棚に置いて今までのあなたの浅はかな読書生活を見直して……」
わたくし「あ、でもすいません、実はこの本、平日のランチ後に紀伊国屋で表紙を見たときに、著者名とタイトルからあまりにどんな構成の本か想像できたので、買わずに図書館で借りてしまいました」
著者「ぎゃふん」