確率の科学史
■マイケル・カプラン、エレン・カプラン『確率の科学史―「パスカルの賭け」から気象予報まで』朝日新聞社、2007年。
一昨年くらいから科学論の入門書にいくつかあたるうちに、リスク、偶然、そして確率を扱った本を手に取るようになったところをみると、弊管理人の中期的な関心はこのあたりにあったのかなあ、と最近振り返りつつあります。人間を含む自然の正体が書かれている非常によくできた本(書き手は自然自身でも神でも何でもいい)が誰にも見えないところに実はあって、それに迫っていく手段が確率なんだっていうナイーブなイメージから出発してどこまで行けるかな。
さてこの本は、確率の理論史を古代から現代まで一本道で描いたものではなくて、賭博から保険、医療、裁判、天気予報、戦争、そして物質の存在、といったいろいろな分野に確率が利用されるようになった経緯と、その展開の様子をオムニバス形式で紹介したもの。およそ何かと何かの間に関係があるという判断には確率の利用がつきものです。そこで、確率の歴史を書くに際して、さまざまなシステムの起源たちに当たってみる、それが本書がとった構成だと思います。とても魅力的なトピックが選び出されていて、珍しく後ろにいくほど読むスピードが上がりました。