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2025年04月 アーカイブ

2025年04月21日

札幌アップデート

基本、待ちの仕事なのですが、なんか仕事来なさそうだなと思ったので木曜にマイルでチケットをとって、金曜から日曜まで札幌にいってきました。国内線の乗り方もちょっと変わっていて時の流れを感じた。

特に目的のない外出です。狸小路のホテルは羽田空港で出発直前に取った。2泊で13000円。インバウンドの影響が大きいところと、そうでもないところがあるのかな。

札幌駅から大通は風景が結構変わっていました。壊して作って、という無駄をまだやってる街。
夕飯はQuenelle(クネル)というフレンチのお店を予約してみました。
電話では「あまりお構いできませんけど」「料理が出るのに3時間くらいかかりますけど」と後ろ向きなワーディング。あと、誰に聞いてここに辿り着いたのか複数回聞かれました。「先日亡くなった知人に……」と回答。断りたかったのか、クレーマー対策か。
でも実際に行ってみると丁寧な対応で、何よりお料理は普通に出てきて激うまでした。

ホタテのソテーとリゾット、セップ茸のソース。まずいわけない。パンでソース全部ぬぐって食べました。ソテーも味・焼きとも絶妙でした。
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エイとキャベツのシェリービネガーソース。周囲の迷惑になるので口に出さず心の中で叫んだ。長生きはするもんです。
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デザートをいただく気はなかったしお腹もいい具合だったのですが、「これは頼んでおけ」と啓示があったのでミルフィーユ。heavenly...
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初日夕飯にしてもうお釣りがきたような外出。亡知人の選球眼すごい。そして失われてしまったことが惜しまれてならない。

すすきのでちょっと飲んで退散。冷たい雨でした。

土曜。食べる、出す、カロリーを消費する、の循環型で持続可能な買い食い旅をモットーとするため弊管理人が入っているチェーンのジムで運動してから、欧風カレーKEN。
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巨大だが中までちゃんと火が入ってるハンバーグが載った甘めのカレー。好みでした。肉汁どばー。
なおこの前後に弊管理人の見てる分野で急な仕事をすることになった某同僚が「聞いてない」とのたまったと会社から知らせがありましたが、前の日にメール送ってあるし、予定は何日も前から公表されてたよ。引き継ぎ簿に書いてあっただろう。逆襲のメールを書きかけましたが余計な罵詈雑言まで書きそうなのと、メシがまずくなるのでやめた。大人になりました。

札幌ファクトリーで夏用の服を買って宿にいったん戻り、夕暮れ前からやっている「とも恵寿司」へ。前日、旧知のバーで教えてもらったところです。
観光ではまず行かない「南郷13丁目」という駅から10分くらい歩いた、住宅街にぽつんとある寿司屋さんです。
特上1500円くらい。やす……うま……
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カウンターで日本酒飲んでたら並びのおじさんたちに話しかけられました。開発の仕事で東京と北海道を往復しながら、2008年のG8サミットにも関わったというので政府か開発局の人かな?このお店はマスコミに出ないから口づてかたまたま誰かのSNSで見た人しか辿り着けないのだそうです。
ちょうど季節だということで、アイヌネギの巻物。くっさいけど頼んでよかった。
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おじさんたちと楽しく話し、すすきのの飲み屋なども教えてもらいつつ辞しました。

中心部に戻ってバーへ。旧知の人たちの近況アップデートで驚いたり喜んだり。
30歳前後の3年間通い詰めたところですが、お客さんたちはもうほとんど知らない人たちになっていました。でも知ってる人たちは元気そうでよかったよかった。

日曜は朝、これも久しぶりの年下友人とモーニングしてから電車で白老へ。
2020年にオープンした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」を見に行きます。
旧博物館も行ったんだけど、だいぶ様子が変わった気がする。ようやく晴れました。
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国立博物館になって、公用語がアイヌ語となり、伝統芸能は映像・音響の凝ったシアターに収まった。旧博物館に比べていろんなことが「きれい」になったが、オーセンティックかどうかで議論もあるんじゃないかな、これ、という気がした。気がしただけなので後で調べてみる。上演が撮影禁止になってるのも単純にフラッシュ対策かとは思うが、ちょっと違うことも考えた。
図録ほしいなーと思っていたら、博物館の売店で去年出たという『最新アイヌ学入門』という本を発見したのでそれを買うことにしました。

ソフトクリームうまかった。
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帰りの車窓。噴火湾と夕暮れは思わず撮っちゃう。
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新千歳空港でラーメン食って帰途。
新宿に着いたら丸ノ内線の終電をギリギリ逃したので、総武線で帰りました。

急に決めた外出でしたが、思いのほか充実しました。札幌勤務を終えた後も何度か行ったはずだけど、ちょっと局面が変わって、アップデートしなきゃいけないことがたくさんありました。旧知の人たちが50代にさしかかって元気は意識しないと維持できなくなってきたのと、疫病を挟んで商売がだいぶドラスティックに入れ替わったのと、社会全体が少し疲れてきてるのと、まあその辺が原因なのではないか。ひょっとして札幌はもう暫く行かないかもしれないという出掛ける前の予感は外れで、結構またすぐ行こうなって気になりました。

2025年04月14日

弁論術

◆アリストテレス(相澤康隆訳)『弁論術』光文社、2025年。

楽しく読んだ。外国は英語圏しか知らないが、こうしてみると西洋の人たちが何かを述べるときのスタイルは二千数百年前に既にだいたい骨組みができていたんだなと、アリストテレス兄貴の仕事に感心した。人間観察を抽象化し、実践に結びつけるソリッドなスタイル。それが必要なのは、世の中、答えが一つに決まることばかりじゃないし、100%そうなるっていう必然的なことばかりでもない、ああも言えるしこうも言える、そういう中でどうやって言葉で勝っていくかだろ?っていう現実的で切迫した問題意識があったからだと想像します。

弁論術が必要な理由(p.26)の説明からして、とてもキビシイ。
(1)「真なることと正しいこと」は本来それを主張すれば通るに決まってるんだから、それが通らなかったということは話し下手なやつが悪い(2)学問的知識を持っていても大衆に語りかける手段を知らなければしょうがない(3)相反することがらを両方説得できるようにしておくことで、間違ったことを説得しようとしてくるやつに反駁できる(4)身体をもって自分を守ることができないのは恥だが、それ以上に人間的な言論の使用によって自分を守ることができないのはもっと恥ずかしい。
―要は、正しいことを知ってるだけでなく、それを主張して通すことができなければ何もならないのだ。

何にせよ定義してから考察する。
例えば、友とは「相手にとってよいと思うことを相手のために行うようなことができる人」(p。80)
よいものとは「もし思慮を手に入れたとすれば、すべての存在がそれぞれ選択するもの」(p.106)

その中で、功利主義のアイデアがちらっと顔を見せたりする。
「また、より快いものは、それほど快くないものよりも大きな善である。快楽はすべての存在が追い求めるものであり、そして快い感覚はそれ自体のために欲求されるものであるが、よいものと目的はまさにこれらの条件によって定義されたのだから。」(p.107)

人間とか社会とか政治とか、とにかくいろいろ知らないと弁論はできないというので、いろんなことが説明されていきます。説明していくうちに、政治学とか、他の著作にもつながっていくものが出てくる。
「民主制はくじ引きで公職を割り当てる国制であり、寡頭制は所有財産の査定額に基づいて、優秀者支配は教育に基づいて公職を割り当てる国制である。ここで言う教育とは、法によって定められた教育を意味する。なぜなら、優秀者支配制における支配者は、法を忠実に守って生きている者たちだからである。このような者たちは、当然ながら、もっとも優秀な人々に見える。そこから、この国制には優秀者支配制という名が付けられているのである。
 他方、単独者支配制は、その名の通り一人が万人を支配する国制である。この種の国制のうち、ある種の規定に従って支配するのが王制であり、[支配の仕方に]何の制限もないのが僭主制である。」(pp.117-118)

美しいことの列挙に時代を感じることはある。しかしこういうのにかぶれた現代人もいたな。労働を下に見た某ハンナとか。
「また、手仕事の技術に従事しないことは美しい。なぜなら、他人のために生きているのではないということが、自由人であることの特徴だからである。」(p.129)

p.195からは法廷弁論のやり方を指南してくれている。「書かれた法が自分に不利なときは書かれてない法や公正さに訴えろ」、「書かれた法が自分に有利なときは『制定された法を使わないなら、法が制定されてないのと一緒だ』などと言え」、とまあ融通無碍である。

ところで、人が怒る相手はいろいろあるが、「(人は)感謝しない者たちに対して怒る」(p.230)。なんか北米皇帝とその手下が外国から来た芸人にそういって怒ってたな、こないだ。

「憎しみ」と「怒り」の違い(p.249)はアリストテレスの人間観察と定式化が冴え渡っていると思った。
・怒りは自分が何かされたことに対して抱く。敵意は自分が何かされてなくても、誰かをある特定の性質の人とみなして抱く
・怒りは個人に対して抱く。憎しみは類に対して抱く
・時は怒りを癒やせるが、憎しみを癒やせない
・怒りは相手が苦しみ、相手が報復に気付くことを求めるが、憎しみは相手に悪いことが起きるのを求め、相手が報復に気付くかどうかは問題にしない
・怒っている人は苦痛を感じるが、憎んでいる人は感じない
・怒っている人は状況が変われば相手を憐れむこともあるが、憎んでいる人は何が起こっても相手を憐れまず、相手が存在しなくなることを望んでいる

文章表現の要諦(pp.463-466)はギリシャ語特有の注意もあるが、(3)なんかはもうほんとご明察。
(1)接続語を正確に使う(2)物事を言い表すときに包括的な呼び名ではなく固有の呼び名を使う(3)曖昧な表現を避ける。ただし言うことがないのに何か言ってるように見せかけるため意図的に言う場合は別(4)男性/女性/ものを表す名詞を正しく使う(5)複数と単数を適切に使い分ける

中傷のトポス(論法)は面白かった(p.548-)。特に、
「些細なことを長々と賞賛してから重大なことを簡潔に非難するか、もしくは先に相手のよい点をたくさん挙げておいて、それから本題に直接関係することを一つ非難するものである。このようなことをする人々は、中傷のエキスパートであり、かつもっとも不正な人間である。なぜなら、彼らは善を悪に混ぜ合わせることによって、善を利用して相手に害を与えようとするからである。」(pp.552-553)

★以下は訳者解説から抜き出した見取り図的なもの

弁論術:説得力のある事柄を見出す能力。言論の技術
 説得力=真実味。論証すること
  論証:演繹(前提から必然的に結論を導く)=説得推論。命題からなる
    +帰納(個別から普遍に至る)=例示

【三つの弁論】*それぞれに共通/特有のトポス(論法)がある
▽助言弁論@民会など。推奨と制止=善悪(利害)
▽法廷弁論@民衆裁判所。糾弾と弁明=正不正
▽演示弁論@葬送や祭典など。賞賛と非難=美醜
  ・「拡大」の技法。意義や価値を大きく見せる(≠うそによる誇張)

【三つの説得】*いずれも言論を通じてする
▽性格(エートス)による説得:自分を信用に足る人物と見せる
▽感情(パトス)による説得:聞き手にある(快苦を伴う)感情を抱かせる
 =聞き手の状況認識を言論によって変化させる(例:誤解による怒りの解消)
▽論証(ロゴス)による説得:説得推論や例証を使って証明する。★最も効果的
 ・問答術との違い
   (1)誰でも知っている前提は省略する(冗長の回避)
   (2)前提の多い推論は避ける(聞き手が話を追えない)
    *問答術は知的エリート同士。またディベートであり一方的に話すのでない
 ・例証には(1)過去の実例を挙げるもの(2)自分で創作した寓話―がある(p.340)

2025年04月06日

桜25と新潟

毎年違ったところで花見をしてますが、今年もスペシャルだったりそうでなかったりした桜。

3月30日はよみうりランド。旧知のグループでBBQして花見して、っていう会でした。5年いなくなってる間に知らない人が増えていたが、一網打尽で話す機会になって大変よかった。
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4月3日はアメリカからのお客さんと箱根。穏やかな人ですが結構でかいタトゥーが入っており「ぼく温泉入れてもらえないんだよね」というので天山湯治郷に連れて行きました。ロマンスカー含め弊管理人も初めて。
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天気はイマイチで寒かったですが桜はほぼ満開。山の桜も雲の合間から見えたりして幽玄でよかったです。
ぬる湯でまったりがセオリーの弊管理人をよそに、お客さんはサウナと水風呂、あつ湯と水風呂を往復しまくっており、最後に「なんか視界がぼやけた」と言ってました。それ血管か網膜かなんかのダメージじゃないだろうか。大丈夫か。

この週末、京都で花見の会がありそうだというので帰国直後の2月からホテルをとってあったのですが、主催のおにいさまからぎりぎりまでアップデートがなく、なんかお仕事も大変そうだし催促してもなと思ってキャンセルしたところで「週末どう?」とのお声がけ。アウチ!ということで今年は欠席となりました。

というわけで休むはずだった4日は出勤したものの、仕事終わりでなんかおいしいもの食べたい、という気分になって新幹線に乗って新潟へ。桜は開花直前だそうです。
新潟駅からわりと近い「のみすけ」で勝利。
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アジフライほっくほく。佐渡の魚やエビをフィーチャーした寿司もむっちゃおいしかった。
一泊して、有名らしい「バスセンターのカレー」と「弁慶の回転寿司」を食べました。いずれもまあまあおいしかった。しかし街は特に面白いこともなく、月岡温泉行きたいなと思ったものの日帰り入浴の便はよくなさそうで、古町のあたりを散歩してさっさと帰宅。大阪屋のイチゴケーキ(イチゴは越後姫)を買って新幹線に飛び乗って食べました。うまかった。で、東京で飲んで就寝。

6日は新宿に写真展を覗きに行き、そのあと、すた丼。これも5年以上ぶりです。確か。
そろそろ葉が出てきた地元・杉山公園の桜。地元で十分。桜のトンネル的なものもいいが、弊管理人は住宅地の中でぽつんと立ってる桜が好きです。
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日曜は天気が悪い悪いと言われていたものの、雨は昼頃ぱらっと来ただけであとは晴れました。陽気ももう冬に戻ることはないかな、という気配。

今年の花見はこんなところですかね。

* * *

帰国前後から読んだものを書いてなかった。

◆沼野雄司『現代音楽史』中央公論新社、2021年
2010年代までカバーしてる。もっかい読み直してもいいなと思った。

◆ダロン・アセモグル、ジェイムズ・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか(上)』早川書房、2016年
持続的な経済発展に必要なのは、多元的な政治体制を基礎に、私有財産と競争が保証されていることであって、砂漠だとかの地理的条件や祖先信仰などの文化的条件、正しいやり方を為政者が知らないといった個人の資質ではない(そしてうまくやれてない国はどんどん悪循環にはまる)……ということをめちゃくちゃしつこく歴史の実例から語る本。

結論が最初に書いてあって、あとはその裏付けのために延々とエピソードが続いて飽きてくるのと、それしかし結局アメリカの現状賛美じゃないですかねという気になってくるのと、うまくいってる国って「現在うまくいってる国」なだけじゃないかなあと思えてきて、下巻はいっかということで終えてしまいました。

◆青山拓央『哲学の問い』筑摩書房、2024年

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