きのう机上の整理をして帰ってきたこともあり、仕事納めの本日は出勤する必要がなさそうだったので家でネット経由の仕事をしてました。
で、本の続き(実はもうとっくに一度読み終わっていて、メモにするのを怠けていただけなので、着手すると速い)。環境だけでなく海、宇宙、感染症のお話もそういえば国境を越えるわけで、今年の仕事は本当に国際法と関連したものが多かったと感じます。
なんか職場では年明けからの担務の再編が噂されているようで、またなんか変わるのかね……まあいいけど。
* * *
【5】国家の国際責任(国家責任)
・義務違反(国際違法行為)の責任を問われる「者」
国家、国際組織(PKO部隊など)、個人(戦争犯罪人など)
・国家はなかなか国際違法行為を認めない
→対抗措置や報復、ICJへの付託、好意によるex gratia金銭支払い(第五福竜丸など)
・戦争が違法でない時代は軍事措置で片付けていた
→19C以降、アジア、アフリカ、南米進出した欧米諸国民の外交的保護に起源
→欧米は自国民の被害を、国内法の問題ではなく国際法違反とすべきと主張した
→戦後、ILCの法典化作業で「国家責任条文」(2001採択)。未発効だが重要文書
・国家が国際違法行為をしたということの条件
(1)その行為が国際法上、国家の行為とされる(公務員の行為、私人の行為の追認)
(2)その行為が国際義務の違反を構成する(大使館や大使館員保護の義務違反など)
eg. テヘラン大使館人質事件(1979)。ホメイニが学生の占拠を支持したことに対して
・違法性阻却事由
・事前同意
・自衛(国連憲章51条)
・対抗措置(他国の義務違反に義務違反で対抗する。ただし武力は×)
・不可抗力(自然現象や戦乱などで無理)
・遭難(人命救助の最後の手段として。eg. レインボー・ウォーリア号事件(1985))
・緊急避難(重大・急迫な危険から守る。eg. トリー・キャニオン号事件(1967))
・責任追及は被害国ができる
・外国船舶の領海侵犯→国家の威信のような精神的損害でもOK
・国際社会一般の利益を根拠に第三国が追究できるとまでは考えられていない
(国家責任条文48条ではできそうだが、課題多し)
・国民が被害を受けた場合は→私人は国家責任を直接追及できない
・被害者の本国が、外交的保護権の行使で追及することはできる
・ただし、次の2要件を満たす必要あり
(1)国籍継続の原則=被害者は継続してその国の国籍を持っている
(2)国内的救済完了の原則=被害を受けた国内で法的な手を尽くした
・責任の果たし方:国際請求の様態
・当時国間での「交渉」
・第三者を介した「仲介」
・第三者を介した「調停」
・国際裁判への提訴
・責任が認定された場合の対応:国家責任の解除
・国際違法行為の中止
・再発防止の保証
・生じた損害の賠償
・違法行為の結果の除去
・原状回復(最も基本的。テヘラン人質事件なら大使館の明け渡しと人質解放)
・金銭賠償(被害算定と支払い)
・サティスファクション(陳謝、違法行為の確認、責任者の処罰)
→これらの組み合わせで国家責任を解除する
【6】国際組織の発展と役割
・誕生
・三十年戦争→ウェストファリア条約(1648)で国際法秩序の基盤(ただし欧州内)
・産業革命→人や物の移動活発化→越境活動の規律する枠組みの必要性
→欧州の河川管理のための「国際河川委員会」が初の国際組織
ライン川中央委員会(1831)、クリミア戦争後のヨーロッパ・ダニューブ委員会(1856)
感染症蔓延を防止する国際衛生理事会(コンスタンチノープル)→WHOへ
・19世紀後半:多分野での問題を国際的に処理する「国際行政連合」相次ぐ
・国際電気通信連合(1865)、万国郵便連合(1874)。WIPO,GATT-WTO、FAO,WHOの元も
・WWI→「(加盟国が)普遍的」かつ「(権限が)一般的」な国際連盟の誕生へ
・紛争の平和的解決、軍縮、人道的任務までが対象に
・ロカルノ条約(1925)、不戦条約(1928)→平和・秩序維持を連盟が担う
→しかしWWII→国際連合
・国際組織とは
・国家が構成員(この点でNGOと違う)
・国家間の合意(国連憲章、ユネスコ条約などの設立条約)が基礎
・一定の機能を遂行するための機能的団体(この点で国家と違う)
・常設的な機関をもつ(この点でアドホックな国際会議と違う)
・国際組織の類型
・普遍的組織(加盟国が地理的に限定されない)/地域的組織(EU、OAUなど)
・一般的組織(国連、AUなど)/専門的組織(ユネスコ、アジア開発銀行など)
・政治的組織(平和・安全維持を目的としたNATOなど)/非政治的組織(国際協力)
・課題
・WTO、IMF、IBRDによる環境破壊、文化的画一化を批判するNGOの声も
・アカウンタビリティの要求
【7】海と宇宙
・海や資源が有限だとの認識
・スペイン、ポルトガルの「全世界の海の領有」vs誰でも利用可とする英蘭の「自由海論」
・外国軍艦から沿岸を守るため、実効支配可能な範囲は領有できるとする「閉鎖海論」
→調整の結果としての「公海自由の原則」。海=狭い領海+広い公海
・WWII後、漁業・海底開発の技術発展で修正必要に
・領海の幅3海里→12海里
・沿岸隣接の漁業資源や大陸棚開発の権利を主張するトルーマン宣言(1945)
→排他的経済水域、大陸棚制度へ
・→包括的に扱う「国連海洋法条約」(1982採択、1994発効、日本批准は1996)
・領海(12海里)=領土と同じく主権が及ぶ。無害通航に関する法制定も可
・接続水域(基線から24海里)=違法行為を行った船舶を拿捕、処罰できる
・排他的経済水域(基線から200海里)=漁業資源など経済的利益について主権的権利
・大陸棚(200海里超の陸地の延長)=天然資源開発をする主権的権利
・公海(EEZの外側)
・深海底(大陸棚の外側)=人類の共同の財産。国際海底機構が管理
・ほか、紛争解決の国際海洋法裁判所などの制度も
・船
・船舶の国籍(船籍)をもち、公開状では旗国の管轄に服する「旗国主義」
ただ、便宜船籍(パナマ、リベリアなど税金が安く、安全基準が緩やかな国)も多い
・海賊船や不審船(旗国の不明示/偽装)はどの国も臨検、逮捕できる
・潜水艦は領海では浮上、国旗掲げる必要。軍艦は各国で対応ばらばら
・海峡ではすべての船舶、航空機について無害通航権より緩やかな通過通航権
・国家間の対立
・日韓間のEEZは日韓漁業協定(1999)で調整
・日中間のEEZは日中漁業協定(2000)で
・大陸棚:白樺(春暁)ガス田開発(2004)→共同開発で合意(2008)
・沖ノ鳥島
・公海での漁業にも制限
・国連公海漁業実施協定(1995採択、2001発効、2006に日本にも効力)
ストラドリング魚類(タラ、カレイなど)、高度回遊性魚類(マグロ、カツオなど)
・国際捕鯨取締条約→国際捕鯨委員会(IWC)。豪州による日本提訴
・宇宙
・ソ連の人工衛星打ち上げ→米ソの宇宙開発時代に
→国連の宇宙空間平和利用委員会でルール作り→宇宙条約(1966)へ
・宇宙空間は国家による取得の対象にならないが、基地建設や資源開発はOK
・月協定では、月は「人類共同の財産」とされた(ただし批准は10数カ国のみ)
・宇宙空間は平和目的のために利用しなければならない
ただしICBMの打ち上げ、軍事衛星の配置は禁止されていない
*月は軍事基地、軍事実験とも×
・課題
・静止衛星軌道(高度36000km)の過密→利用ルールがない
・宇宙での商業活動の規制
・デブリなど宇宙の環境問題
【8】環境問題
・国際的な環境法
ベーリング海オットセイ事件の仲裁判決(1893、英vs米)=生物資源の保護
農業のための益鳥の保護のための条約(1902)
トレイル溶鉱所事件(1941、米vs加)=大気・土壌汚染。しかしまだ伝統的規則の援用
・ストックホルム人間環境宣言(1972)
リオ宣言(1992)
持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言(2002)
・環境条約
・個別分野で非常に多数の条約と、法的拘束力のない文書(ソフトロー)が重要
・枠組条約(一般的な目的や原則の規定)→具体的な「議定書」で具体化と履行確保
eg. ECE長距離越境大気汚染条約(1979)→ヘルシンキ議定書(1985)
オゾン層保護条約(1985)→モントリオール議定書(1987)
気候変動枠組条約(1992)→京都議定書(1997)
生物多様性条約(1992)→カルタヘナ議定書(2001)と名古屋議定書(2010)
・枠組条約に加わった国が議定書にも入る保証はないことに注意
・ソフトローを出す主体としては普遍的/地域的国際組織の役割が重要
・環境を巡る争い
・金銭賠償は十分でない
(1)条約が規律する範囲外だと国家責任法の厳格な規則が適用される
(2)予防、差し止めの権利が予定されていない
(3)回復不可能な損害を補填できない(チェルノブイリなど)
・防止的措置
・事前通報、協議、同意(バーゼル条約)
・環境影響評価(ECE条約、南極条約、生物多様性条約)
・予防的アプローチ(予防原則)
・解決は二国間の枠組にそぐわないことが多い→締約国会議へ
・経済格差→「共通だが差異ある責任」(リオ宣言)
・GATT,WTOと環境を理由とした貿易制限の調停→今後の議論