■多田将『すごい実験―高校生にもわかる素粒子物理の最前線』イースト・プレス、2011年。
何はともあれ、上の筆者名に貼ったリンクから、ご尊顔を拝んでいただきたい。
この本のカバーが真っ黄色なわけがわかる気がしまいか。
終わりました?では本題に。
ニュートリノっていうとなんか地方都市の街外れにある、無駄にイタリア風な(?)装飾を施したラブホっぽい名前だけど、今年の初夏に(局地的に)話題になったニュースの主役だ。物質を構成する、今のところ分かっている中で最も小さい粒子。
茨城県東海村にある巨大な実験施設でこの粒子をすんごい数作って、ぎゅんぎゅん回しながら加速し、どかんと打ち出す。で、これはものすごく小さいのでまっすぐ地中を通り抜けて、295km離れた岐阜県神岡町にある「スーパーカミオカンデ」を通るんですね。そこでキャッチしてみたら、どうも飛んでる途中で一部、変身しちゃったやつがいたらしい。
ニュートリノには電子、ミュー、タウの3種類があって、今回はミューが(ひょっとしたら途中でタウになって、それから)電子にかわっていたという「兆候」があった。今まで変身するということは分かっていたけれども、ミューが電子になるっていうのは具体的には観測されていなかったので、これはすごい、「兆候」よりもっと確実な「証明された」というレベルまでデータが蓄積すればノーベル賞も!ということになった。これが標記「すごい実験」。
そう言われるとなんかすごいんだけど、どうすごいの?をちゃんと知ろうとすると、素粒子ってなんなのか、素粒子ってどういう性質を持っているのか、それを使った実験ってどういう原理でやってるのか、謎が解けると何が分かるのか、などフツーの人たちが引っかかるいろんなことを解説しなければいけない。それを300ページ余りかけてわかりやすーく講義してくれるのがこの本。今年初めに高校生向けに行われた講義の記録をもとにしていて、図(マンガ)もいっぱいつけてくれているのがパワポ脳にはうれしいです。今まで断片的に聞いていたいろんな言葉が整理されていくのが楽しくて、丸1日で読んだ。
直近に読んだ「でっかいほう(宇宙)」の物理の話とうってかわって、今度は「ちっこいほう(素粒子)」の話。しかし、出てくる単語は驚くほど共通しているんだな。つまり両極限はつながってる。陳腐な連想ですが、よく物理のイロハのイを語るときに出てくるグラショウの「ウロボロスの蛇」の図があらためて思い出されます。