■沼田英治『生きものは昼夜をよむ』岩波ジュニア新書、2000年。
非趣味読書。でもかなり面白かったです。
生きものの多くは季節に合わせて変態したり休眠したり生殖したりするわけですけれど、それではどうやって季節を測っているかというと、暖かくなったとか寒くなったとかいう温度の変化ではなく、日の長さの変化なのだという。温度と違って、日の出ている間というのは毎年同じ日には同じ長さで、しかも一年の中で規則的に長短が変わるから判断材料としては信頼度が高いということらしいのですね。
目や脳にある光受容器(光を感じる部分)に光が当たると、その情報が神経を通って脳のどこかにあると考えられている、日の長さを測ったりその情報を蓄積する機構に達する。そこがほぼ24時間周期で動く体内時計(概日時計)に時刻を問い合わせ、いまが本来明るい時間か暗い時間かに従って季節を判断し、さまざまな生理現象を起こす内分泌系に信号を送るというシステムになっているらしい。
たとえていえば、窓の外を見て「明るいな~」と気付いたとき、部屋の中の時計を見て朝5時だったら「ああ夏なんだねー」と判断してデートの準備をする(逆に、朝7時でも暗かったら冬だと判断してふて寝)。そんなことをしていると考えられているのだそう(外的符合モデルという【追記】←ほかに内的符合モデルというのもあって決着はついていないらしい)。
20世紀のはじめのほうに始まったこの分野の研究が、いろんな反論に揉まれながら100年かけてどこまで来たか、そしてカメムシを題材に研究を続けてきた著者がどうやってこの分野にページを書き加えてきたか、そんなことが解説されています。
「ジュニア」にはけっこう難しいですが、でも理科の好きな中学生なら丁寧に読んで「すげえ」と思ってくれるだろうな、と思いながら読みました。
ちなみに、本には書いてないですが、人間にこの「日の長さに反応する性質」がない(=「光周性」がない=一年中繁殖する)のは、人間はみんなアフリカ人だかららしいです。光周性があるのは、温帯から寒帯にかけての、季節がちゃんとあるところでは冬をじっと越さないと命にかかわる生きものたちにみられるということ。そーかー