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インフルエンザ パンデミック

■河岡義裕、堀本研子『インフルエンザ パンデミック―新型ウイルスの謎に迫る』講談社ブルーバックス、2009年。

ううむもっと早く読めばよかった。
情報の洪水の中でいろいろな説がほとんど同時に飛び込んできて混乱していたのですが、「どうしてそういう説が出るのか」の水準で説明してもらうとすっきりと整理されていきます。登場する情報は09年9月までのもの。

・09年の新型は季節性と同程度の病原性(ウイルスに毒はないので、「毒性」というのは厳密には間違いらしい)と早合点するべきではない→変異で全身に感染する高病原性になる可能性がある
・ワクチンは打っても感染を100%予防できるわけではないし、副反応は0にはできない。治療薬や学校閉鎖などの社会的な処置を併用する必要がある
・タミフルやリレンザなどの治療薬を使っていると必ず薬剤耐性菌が出てくる。中途半端に服用を止めてはだめ。従来と働き方の違うものも含め新しい薬が開発されつつある(1月に発売された塩野義、2月初めに承認申請した第一三共、申請予定の富山化学工業など国産も出てきつつありますね)
くらいは何かの時にあわあわしないために知っておきたい。

そのほか
・ウイルスは細胞に自分を食べさせて侵入し、乗っ取って自分の複製を作らせて外へ飛び出していく
・小さな変異(コピーミスによる。毎年季節性インフルにかかる原因)と大きな変異(細胞に2種類以上のウイルスが感染して混ざる。「H○N△」の○△の部分が変わる)がある
・種によってウイルスの取り付き先が違う(変異するとブタ→ヒトなどの感染が起きる)
・「生ワクチン」は病原性を弱めたウイルスそのものでよく効くが副反応もそれなり。「不活化ワクチン」はウイルスの破片などで、副反応の心配は少ないが目や鼻だけの手配写真のようなもので免疫の効きは落ちる
など、そもそものメカニズム解説や研究史についても、門外漢にもわかるようイラストと平易な文章を工夫してあってポイント高いです。

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2010年02月08日 16:41に投稿されたエントリーのページです。

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