■石原千秋『国語教科書の中の「日本」』ちくま新書、2009年。
91年の『読むための理論』以来のごぶさたでした。
コクゴ・テキストのテクスト分析。
なぜ動物ばかり、田舎の話ばかり、昔話ばかり、出てくるのか。なぜ平和教育ものは個人的な物語ばかりなのか。なぜ父親が絡んでこないのか……。教科書、教室、受験に至る国語教育が――教わる側(を)だけでなくひょっとしたら教える側さえ(を)も――知らないうちにある価値を内面化した人たちの共同体を作り出すための装置であることを、教科書に採録された数々の文章の横断的な分析を通して示唆してみる。そんな本だと思います。所々「そうかー?」と思うところもあるけれども、まあそこは新書、全体としてはサクサク楽しく読みました。
大学に入って初めて出会うテクスト論というのは、それまでに読んできたliteratureの種明かし的なところがあって面白いんだけど、高校までの「国語」という教科がliteratureとlanguage(と、ほかいろいろ)の複合体であることを考えると、もうちょっと早い時期からこういうことを教えてもいいんじゃないかなー、なんて無責任に思ったりします。