不平等の再検討
■アマルティア・セン『不平等の再検討』岩波書店、1999年。
Sen, Amartya. Inequality Reexamined, Oxford: Oxford University Press, 1992.
4月は日記が少なかったなー。
理由はよくわかりません。
忙しかったといえば忙しかったが、そうでもないといえばそうでもなかった。
花園だんごとか初代の醤油ラーメン(大盛)とかの写真もありますし、温泉宿に一人泊まって原稿書いたりとか、おいしい魚の煮付けや牡蠣のバケツ蒸しを食べたりもしていたのですが、なんか字にする気が起こらなかったのね。
ま、いいんですけど。
センの本をと。
(不)平等を考えるときに、所得とか、幸せ度(効用)の平等よりも、個々の人が自分の生き方の幅を広げていけるような、自由の平等を目指すようなアプローチを使ったほうがいいんじゃねえの、みたいなお話。
当たり前といえば当たり前ですが、人はそれぞれ違っていて、大きな病気を持っているとか、その社会の中で差別されているグループ(階級だとか、性別だとか)に入っているとかいった人たちは、そうでない人たちと同じだけの銭カネをもらったとしても、それを使って増やせる人生の選択肢はより少ないかもしれない。また、一人当たりGDPは低いけれど平均寿命は長い国があるとか、先進国の中で貧困があるとか、そういう現象も、所得だけに注目しているとうまく説明できない。
一方、幸せ度の平等に注目したとしても、最初からものすごく不幸な境遇に置かれている人は、もともと多くを望まないように慣れてしまっていて、少しの手当で幸せ度が大幅にアップしてしまう(逆に、わりと幸せな人の幸せ度をさらにアップさせようとするとたくさん資源を使うことになる)ようなことが考えられ、これもあまりいい方法論ではない。
人がいろいろな文化的・経済的・環境的な制約から自由になったら、当然これくらいは望むだろうという(長く生きたり、予防できる病気にならないで過ごしたり、あまり恥ずかしい思いをせずに生きたりといった)ことは何かを考え、それを個々人が実現していけたり、実現する自由を得られたりすることを重視したほうがいいんじゃないか、ということをさまざまな角度から考えています。
印象に残った部分だけつまみ食いするとこんな感じですが、ほかにも分配の正義論に対する色々な示唆がちりばめてあって、門外漢もへええとか言いながら読める本だったと思います。訳文も自然でいいですね。