■小島寛之『使える!確率的思考』ちくま新書、2005年。
確率・統計業界の観光案内所。
サイコロ1万回振ると6の目の出る確率は大体6分の1、とかそんな学校で習ったようなお話から、「結果を得るたびにそれまでの推定を修正していく」という普段ふつうにやっている推論に近い考え方のベイジアン、どういう仕組みで何がどれだけ起こるかが分からない場合(不確定性下)の確率論、人々を集合とみたときの「合理的な選択」と、実存がする選択のズレ=賭けとか優柔不断……、などメニュー豊富です。
ここでだいたいのイメージを掴んで、もうちょっと詳しい本に進むもよし、ニッチなところでは、文体を解析して誰が書いたものかを推定する計量文献学に進んでもよし、集合としての幸福と個人の幸福の齟齬について悩みたければトロッコ問題でうんうん言ってみたい気もする。流動性選好(優柔不断)と貨幣の商品化なんてテーマも面白そう。ベイズと討議民主主義を結びつけたらやり過ぎかしら。なにより「何を知りたいときにどのツールを用いたらいいか」「どういうツールを開発すれば何がわかるようになるか」といった設計のコツとか、知りたいですね。ま、別に何に使うわけでもないですけど。