すごいよかった。
このところ工学系の出版社が出してる工学系の入門書に苛々させられることが続いて、ホント理系同士でものを作らせちゃだめだ(つまり著者にも編集にも「分からせる力と意志」がない)と思っていたところ、こういうのはちゃんとした出版社にやってほしいという意を強くしたものです。それはいいんだけど、ちょっと仕事上の必要でこの辺をおさらいしたかった=言葉の布置を見渡しておきたかったという思いが満たされました。1~3章は概観と歴史なので軽めに、あとはがっつりメモ。
◆小林憲正『地球外生命 アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来』中央公論新社、2021年
【1~3章】
・パンスペルミア説:生命の種が宇宙から地球に降ってきて地球生命のもとになった
・地球生物:
1.水と有機物からなる
2.外界との境界(リン脂質の細胞膜)がある
3.代謝する(+酵素=タンパク質で化学反応を促進する)
4.(核酸で)自己複製する
5.進化(変異)する
・オパーリン・ホールデン仮説(1920年代)
メタンやアンモニアを多く含む原始地球の大気から有機物が生成、海に溶け込み、化学反応によって複雑な分子に。コアセルベート(球状の構造体、原始細胞)から生命へ
*その後、原始大気はメタンやアンモニアをほとんど含まなかったとされた
・1969年、オーストラリアに落ちた炭素質コンドライト隕石の分析で、非タンパク質アミノ酸が多く、L体とD体が半々だったことが判明。その後、隕石には核酸塩基や糖も含まれているとの報告も
・とりにいく:リュウグウ(C型)、ベンヌ(B型)
・アミノ酸は宇宙で非常にできやすい
・RNAワールド:1980s、化学反応を触媒するRNA分子発見。まずRNAが現れ、より触媒として優れているタンパク質に触媒作用を任せて自分は増殖を担う。最後に安定したDNAを生み出して情報の貯蔵を任せた
*ただしRNAはタンパク質よりはるかに作りにくいことを重視するかで評価が分かれる
・別の説としてタンパク質ワールド説。しかしタンパク質は自己複製が難しい。ほか「代謝ワールド」「ゴミ袋ワールド(コアセルベートの中にたまたま触媒作用を持った当たり袋が増殖し、進化し、洗練されたRNAなどができてきた)」=筆者はこれを支持
・38億年前には生命がいた可能性が高い(グリーンランドのグラファイト粒子の炭素同位体比測定から)。それより遡れるかどうかは「後期隕石重爆撃期」があったかどうか
・共通祖先は好熱菌説→熱水噴出孔。必須金属の供給、紫外線が届かない環境
・多細胞生物→エディアカラ生物(消滅)、バージェス動物群、カンブリア大爆発
・全球凍結は少なくとも3回→その後の温暖化→シアノバクテリア活動→酸素濃度上昇→オゾン層
・個々の生物種は絶滅するが、全生物を絶滅させるのは非常に難しい
【4章:火星生命探査】
・19-20c スキャパレリ、ローウェルの「火星運河」騒動
・ヴァイキング計画(NASA):火星表面の生命存在を探る
1975.8 ヴァイキング1号→1976.7.20 クリュセ平原に着陸
1975.9 ヴァイキング2号→1976.9.3 ユートピア平原に着陸
・観測手法
(1)写真撮影:肉眼で見えるもの
(2)昇温気化ガスクロマトグラフ質量分析計:土壌中有機物の存在
(3)熱分解放出(PR):光合成生物の探索
(4)ラベル放出(LR):有機物を食べる生物の探索
(5)ガス交換(GEX):呼吸する生物の探索
→生命の痕跡見つからず、以後20年間火星探査が停滞
・バレーネットワーク(水路様地形)、アウトフローチャネル(大量の水が一時的に流れた跡)を発見
→過去の火星には大量の水があった、過去には生命誕生した可能性
・ヴァイキング計画の結果検討
・中緯度の平たんな場所(砂漠のような)→いないの当然では
・なぜ有機物が出なかったか
→火星は核まで急速に冷えて対流が弱まる
→磁気圏が失われ、太陽風が降り注ぐ
→大気が失われる
オゾン層がないので紫外線が火星表面に届き、水分子を分解
→水素は宇宙へ、酸素は地表に残って過酸化物・超酸化物を生成
→有機物を破壊、殺菌。有機物ができても壊れやすい環境だった可能性
・火星隕石ALH84001騒動
→論争を呼んだが火星への関心が再燃
〈水の探索〉
・マーズ・パスファインダー:ローバー探査の先駆け
切り離された着陸機「ソジャーナ」1997着陸、洪水の跡を発見
・マーズ・エクスプロレーション・ローバー(2003打ち上げ)
2004.1 スピリットとオポチュニティの2ローバーが着陸
→当初90日間の予定が、2019年まで探査継続
スメクタイト(水がないと生成しない年毒物)発見
・フェニックス(2008.5極冠近くに着陸)
→表面をスコップですくうと白い塊=地下の氷の存在を示した
・マーズ・リコネッサンス・オービター(周回機、2006-)
クレーター内に「斜面の筋模様(RSL)」発見
2015にはRSLの分光分析でマグネシウムなど塩化物、過塩素酸塩存在
→現在でも場所や条件により高濃度の塩を含む液体の水が地表に流れ出ているか
〈有機物の探索〉
・メタン(CH4)=紫外線で分解されやすいので、現存すれば……
・2004、ESAのマーズ・エクスプレスの分光器で微量のメタン存在を確認
・2009、米・地球からの観測でメタン存在確認、場所や季節による変動も
→メタン生成菌やメタンをエネルギー源にして有機物を作るメタン酸化細菌が存在?
・マーズ・サイエンス・ラボラトリー(2011打ち上げ、NASAの本格有機物探査)
ローバー「キュリオシティ」がゲール・クレーター着陸(2012)
加熱して出てくる有機物をガスクロ質量分析。表土のほかその下の土壌も
→塩素がついた炭化水素発見=土壌中の過塩素酸塩+有機物
ゲール・クレーター内の泥岩の分析でベンゼン環、硫黄含有など複雑有機物発見
湖だった35億年前にいた生物が作った有機物の痕跡か
〈火星のハビタビリティ〉
・35億年前ごろまで表面に大量の液体の水があったことが分かっている
→強力な温室効果を持つ大気があったはず(暗い太陽のパラドックス)
↑当時の太陽光度は今より低く、温室効果がないと凍ってしまう
・その後、火星からは水がほとんど喪失
火星は小さいので核が早く冷える→磁場喪失→太陽風が大気直撃
→大気が宇宙空間へ→温室効果喪失→寒く→ハビタブルゾーンから外れる
→多細胞生物への生命進化が難しい環境に
・しかし、いったん発生した生物を全滅させるのは難しい
→発生したとすれば地下で生き延びたものがいるのでは?
=これが今後の火星探査の目的
〈マーズ2020(NASA)〉
2020.7 探査機打ち上げ
2021.2 火星着陸(赤道近くのジェゼロ・クレーター)
デルタ地帯、炭酸塩や粘土鉱物が見つかっている
川からの有機物や微生物の痕跡探索
・探査車:パーサヴィアランス
有機物分析:シャーロック=紫外線レーザー+発光分光計で土壌の微細イメージング
岩石や土壌を集めて将来の火星ミッションで地球に持ち帰る
2021.9 初めてサンプル容器に収納→別のローバーが回収、火星軌道に打ち上げ
・ヘリ:インジェニュイティで上空から撮影
〈エクソマーズ2022(ESA)〉
・ESAの火星探査は2003.6打ち上げのマーズ・エクスプレスが最初
2003.12 火星周回軌道入り、上空から探査。着陸機はビーグル2、有機物分析
→ビーグル2は連絡途絶
→捲土重来でエクソマーズ
・エクソマーズ
2016 トレースガス・オービター打ち上げ。2017軌道投入、メタンなど大気成分分析
着陸機は2022予定
→オキシア平原(過去に水が流れた形跡あり)に着陸
ローバー「ロザリンド・フランクリン」
・ドリルで2m掘削し土壌採取、有機物分析
・MOMA(火星有機分子分析計):加熱/紫外線レーザーあてて土壌中の有機物をガス中に取り出す→細胞膜の成分・脂肪酸など検出を期待
〈現存する生命探査の壁〉
・手の届くところに生物がいるかどうか
火星にはオゾン層がないため紫外線が強く、生命が耐えにくい
→少し地下にもぐれば生命が生存可能になる可能性あり
・正体の分からない火星生物をどうやると検出できるか
強紫外線環境では光合成生物の存在は難しい
メタン合成生物はいる可能性あり
ヴァイキング計画で使ったような栄養液が栄養として受け取られるか(毒かも?)
・本当に生物がいそうなところには近づきにくい
水が流れている可能性のあるクレーター内壁は急斜面
生物がいるところに探査機が地球の微生物を持ち込むと増殖してしまうかも
※マーズ2020やエクソマーズ2022の着陸地点は生物活動がありそうなspecial regionは外している=惑星保護planetary protection(→詳しくは8章)
〈生命がいることの確認方法〉
・生物=有機物で構成、外界との境界を持つ、自己複製する
→日本グループは1990sから蛍光顕微鏡を提案(河崎行繁ら)。①遺伝物質②細胞膜のような疎水性の物質③代謝をするための酵素(触媒)を光らせる。④クロロフィルのような蛍光物質があれば試薬なしても蛍光画像が得られる可能性も。①~④組み合わせ可能
→今も小型化した「生命検出顕微鏡Life Degtection Microscope」が開発続行
・蛍光画像が検出された場合
→地球の生物のように核酸を使っているとは限らない(地球以外で簡単に生成しない)
→タンパク質はありそう。アミノ酸は隕石からも見つかっている。いろんな機能もある
・どうやって生命と非生命由来のアミノ酸を区別するか
→実験でできるアミノ酸はグリシンなどの単純なアミノ酸が主。生命はあまり使ってない
→酵素が働くのに必要なのはヒスチジン、リジンなど複雑なもの
→特定のアミノ酸ばかり見つかれば生命起源の可能性が高い(ただし異性体がないこと)
地球生物は左手型(L型)のアミノ酸だけでタンパク質を作る(理由は不明)
→隕石で左手型が多かったとすれば、火星でも左手型を使ってるはず
・火星地下の土壌からアミノ酸が見つかった場合
①単純アミノ酸が多い、異性体混合、L/D型アミノ酸が同量存在
→アミノ酸は非生物的に生成
②複雑なアミノ酸が含まれるが地球生物が使うのと違う、L/D型どちらかに偏る
→地球生物とは別のところで誕生した生命が存在
③アミノ酸は地球生物と同じ、L型が多い
→火星生物が存在、地球生物と祖先が同じ可能性(火星誕生→地球伝播かその逆)
〈火星生物が見つかったら〉
→地球生物は孤独ではない。銀河系の恒星2000億のうち1個の恒星系で、惑星2個に生命があったら銀河系全体では膨大な数の惑星に生命がいることになる
→生命が存在しうる環境には実際に誕生する確率が極めて高くなる
(見つからなかったら
→探し方が悪かった可能性(特別地域に行ってない)
→地球だけとはまだ言い切れない)
・見つかった生命が地球と同じタンパク質や核酸を使っていたら
→地球―火星間で生命の移動が起きた、または第三の場所でできて移動した
・地球生命とはタンパク質や核酸に似てるが違うものだったら
①タンパク質・核酸型の生命は比較的普遍的に誕生しうる、または
②地球生命の共通祖先より前の段階で惑星間移動が起きた
※核酸とは全く違う自己複製システムが見つかると面白い
・火星生命が見つかった場合、有人探査や移住の際の汚染に細心の注意が必要になる
特に水があるところで汚染すると、ネットワークに沿って汚染が全球的に拡大する恐れ
火星の大気組成を変えて地球に近づけて移住する「テラフォーミング」困難に
【5章:ウォーターワールドの生命】
・生物圏:太陽光エネルギーに依存(光合成による有機物生成、死後の微生物分解)
→地球外生物圏も惑星表面がターゲットになってきた
表面に液体の水があるという厳しい条件を課した場合、ハビタブルゾーンは狭い
←1970s、熱水噴出孔の発見と1990sの地下生物圏の発見で考え方は変更
・海底熱水噴出孔の発見(1977)
生態系が存在。二枚貝、カニ、タコ、チューブワーム
・1979・米仏共同探査@ガラパゴス沖で「ブラックスモーカー」350度
岩石中の金属やマグマ由来の硫化水素などが海水に溶けている→海水中で析出
多様な化学反応が可能になる高温環境+生成した有機物を安定保存できる低温環境の併存
有機物生成に有利な還元的(水素豊富な)環境
化学反応や生命に必要な金属イオン高濃度
→生命誕生の場「暗黒生物圏」(光→光合成とは違う、硫化水素による有機物生成)
・チューブワーム、シロウリガイは化学合成細菌と共生
→有機物豊富なためエビやカニも集まる
・海底熱水噴出孔はプレート境界に普遍的に存在(沖縄、小笠原諸島近海など)
・メタン生成古細菌は地球上で最も高温環境で増殖できる(122度=高井研)
・地球生命の共通祖先は好熱菌と考えられ、海底熱水噴出孔は生命誕生の場の最右翼
・ヴォイジャー計画~
1972 パイオニア10号→1973木星接近撮影
1973 パイオニア11号→1974木星、1979土星接近撮影
1982 惑星直列に合わせNASA「太陽系グランドツアー」
←1977ボイジャー1,2号。ガリレオ衛星の一つイオで硫黄噴出の火山活動
エウロパはクレーターなし、氷が覆う(下から液体の水が噴出?)
1989 ガリレオ→エウロパ。縞模様液体の水が氷の下に(磁場測定)、濃い塩含有か
2013 ハッブルによる紫外線観測でもエウロパの液体水噴出を確認
2019 ハッブルで海水に塩を含むことを示すスペクトル観測(=熱水活動も存在か)
・エウロパはハビタブルゾーン外。なぜ液体の水があるか?
→木星による潮汐力説。潮汐力により熱が生まれている
・暗くて寒いが生物は存在しうるか?
→地球の熱水噴出孔にも生物圏あり。極域の魚には不凍液を細胞内に持つものも
*地球南極の地底湖
1989- ロシアチームがヴォストーク湖調査。
2013 3769m下の湖面到達。新種微生物の遺伝子検出と主張
2005,2010 米国が地表から27m下のヴィダ湖掘削、微生物確認
→地球の全球凍結時代はエウロパ化といえる。エウロパで生活できないとはいえない
・土星衛星エンケラドゥス(1789 ハーシェル発見)
1997 米欧の土星探査機カッシーニ→2004土星到達。着陸機をタイタンに
*ヴォイジャー2号の写真では太陽系天体で一番反射率が最大(=白い)。氷が覆う
2005 南極近くに縞模様(tiger stripe)があり周囲は赤道より高温、水煙噴出確認
2008 エンケラドゥスのプルーム化学分析。水、有機物を含む気体、塩、シリカ
=氷の割れ目から水が噴き出している。氷の下に液体の水。有機物も存在
シリカの小粒がある=海底に熱水活動か
その後のカッシーニ観測では海が衛星全体に広がっている可能性が高いとされた
今後:プルームのサンプルリターンができるか?
・木星の衛星ガニメデ(太陽系衛星で最大。水星より大きい)
磁場あり、中心の核が融けているとみられる。オーロラもあり
2015 ハッブルによるオーロラ観測で内部海がある可能性浮上
その後、ガリレオの観測結果再訪で内部に厚さ100kmの伝導性液体=塩水存在が確実に
・小惑星帯にある準惑星ケレスにも内部海か
2014 ハーシェル宇宙天文台での赤外線観測で水蒸気を含むプルーム存在報告
2015 小惑星探査機ドーンの観測でオッカルトクレーターに炭酸Naか硫酸Mg
→地下に高濃度の塩水が液体として存在し、噴出することが判明
・木星衛星カリスト、土星衛星タイタンとミマス、海王星衛星トリトン、冥王星にも内部海存在の可能性が指摘。地下海の存在はまれではない。恒星系に属さない「自由浮遊惑星」にも内部や表面に液体の水がある可能性も指摘されている
・今後のウォーターワールド探査
・ESA立案・JAXAなど協力のJUICE=木星と衛星(主にガニメデ。エウロパも含)
[2022現在の打ち上げウインドウは2023.4、木星到達2031。予定変更注意]
エウロパ周回しないのは放射線量が高いため
・NASAのエウロパ・クリッパー(2024.10打ち上げ)
プルーム、大気の分析で有機物が出るか、縞から地下海の有機物が出てきているか
【6章:タイタン】
・濃い空気あり
1944 カイパーによる地上観測でメタン含有確認
1980 ヴォイジャー1号で大気の分光観測、メタン、エタン、窒素(=主成分)
表面温度-179度(液体メタンの海か)、表面大気圧1.47気圧
*メタン+窒素+宝殿でアミノ酸や核酸塩基が生成可能
1997 カッシーニ(NASA)+タイタン着陸機ホイヘンス(ESA)
2005 ホイヘンス降下、海は見つからず。川のような跡や海岸線のような地形発見
大気中のもやは複雑な有機物でできていた
着陸地の氷には丸み=川で流されたか
2007 カッシーニの上空観測で液体メタンの湖発見と発表
火山のような地形発見(アンモニア水の噴出)
2017 カッシーニが土星大気圏に突入し燃え尽き(衛星汚染を防ぐため)
・上空で紫外線と放電(土星の磁場で捕まった電子に起因)で有機物生成
→降下しつつ反応、もやの材料に?(複雑な有機物、核酸塩基)
・水以外の液体を溶媒とする生命の可能性
(1)アンモニアが次の候補(地球生物にとっては毒だが)
(2)表面のメタン・エタン湖中の生物。ただし細胞膜の構成など地球と相当違うはず
・次の土星系探査:TSSM。だが木星系と競合し後回しに
→2019 ドラゴンフライ計画選定。タイタン表面を飛んで移動しながら探査
2027 打ち上げ→2036タイタン着陸
・金星
上空50kmあたりで1気圧、気温0~100度
濃硫酸の雲があって紫外線吸収物質があるが、これが生物かも?という話
強酸性に強い生物(ピクロフィルス属の古細菌など)はいる
どこで生まれたか?太古の金星には海があり温暖だったとされる
7億年前の巨大火山噴火でCO2が大量噴出、温暖化で現在の灼熱環境になった
→上空で生き延びている?
2020年報告の「生命痕跡」はホスフィン(PH3)。生命の証拠にはならない
→その後、ホスフィンでさえないかもとの反論も
【7章:太陽系を超えて】
・銀河系:恒星系2000億
・最も近い恒星は赤色矮星プロキシマ・ケンタウリ(4.246光年)
→パーカー・ソーラー・プローブ(最速200km/s)で6000年
ホーキングらのブレークスルー・スターショット計画(軽量化で20年)
でもつらい
→電波観測
1959 コッコーニらのCETI=地球外生命体との交信構想(その後SearchでSETIに)
1960 オズマ計画(くじら座タウ星の1.42GHz観測200時間)
1980 セレンディップ計画(SETI)@プエルトリコのアレシボ天文台(2010損傷)
・ジル・ターターとカール・セーガン
・スーザン・ベルによるETIシグナル?検出(1967)→パルサー発見
指導教員ヒューイッシュがノーベル賞。ベル(女性)はもらえず
・ドレイクの方程式(1961,NSF):銀河系の中で伝播交信が可能な惑星の数Nを求める
1年に生まれる恒星数、惑星を持つ割合、ハビタブル惑星平均数、生命誕生の割合…
当時は各パラメータが推定できず
・系外惑星をどう検知するか
ドップラー法(視線速度法):惑星の重力による恒星の運動で色が変化するのを捉える
トランジット法:惑星が恒星の前を通過するときに光度が下がるのを捉える
タイミング法:eg.1992パルサーを回る惑星発見。電波のパルス間隔変化
1995 マイヨールらがペガスス座51番星の惑星(51Pegb)*惑星はb,c,d…
=中心星の近くを高速回転する巨大惑星ホットジュピターだった
→以降多数発見。軌道が細長い楕円形のエキセントリックプラネットなど
当初はマイヨール含めドップラー法が主流だったが、
2009 ケプラー宇宙望遠鏡がトランジット法で地球サイズのEP発見目指す
~2018運用終了までに2600個以上発見。太陽系の構成は特殊ではないらしい
現在はトランジット法が最大ツールに
・次はハビタブル惑星の発見←トランジット法は大気組成も分かる
*ただし惑星表面に液体の水がある「古典的ハビタブル惑星」限定。地下は見えない
・ハビタブルゾーンは中心星の明るさ、惑星の大気組成、雲の有無で変わる
*太陽系のHZは0.47-0.87AUだが地球には温室効果ガスがあるのでハビタブル
中心星の明るさも時間とともに変わる
・現在の注目
主系列星の中でもG型(太陽)より一回り小さいM型(質量が太陽の0.08-0.45倍)
表面温度3000度前後
中で水素が核融合する速度が遅いため長命
トランジットの際の明るさの変化が大きいため惑星が検出しやすい
ハビタブルゾーンがG型より中心星に近いので中心星の近くを回る惑星もハビタブルな可能性が高まる
2017 トラピスト-1(M型、地球から40光年)周回する7惑星発見。うち3つがHZに
2018 プロキシマ・ケンタウリ(地球から最も近いM型)ドップラー法でb発見。HZか
←ブレークスルー・スターショット計画が実現すると2060ごろ??
・そして再びドレイクの方程式。筆者試算でN=1(銀河系に1個、つまり地球のみ)
では地球外生命(ETL)であれば?N=50億
しかしバイオマーカーを分光学的手法で捉えられる生命はごく一部であろう
(一時期しかいない、地表にいない、など)
→検出困難な「ダークライフ」をどう検出するかが今後の大きな課題
【8章:生物の惑星間移動と惑星保護】
・パンスペルミア説(アレニウス):宇宙空間は生命の種に満ちており、それが恒星の光の圧力を受けて地球に到達した
・フランシス・クリックも。全ての地球生物にとってモリブデンが重要なのに、地上にモリブデンが少ない→モリブデン豊富な星で生物が誕生しETIが地球に送り届けた?(←実際は海に豊富にある)
・パンスペルミア説の問題
1.宇宙の微生物はどうやって生まれたか説明しない
←現在なら他の天体でも生命誕生条件は満たしうると答えられる
2.宇宙空間は過酷で、長時間生きた状態で移動できないと思われる
←クマムシ。ロシアのフォトンM3を使った実験で10日間宇宙線を浴びても蘇生可
多くの微生物は乾燥させた菌体なら真空下でも生存可能
DNA修復能力が高いバクテリア、ディノコッカスは5000Gyでも死なない
ただし太陽紫外線をどう生き延びるかは問題
・微生物を宇宙に連れ出す「宇宙実験」
1980s シャトルを使った有人宇宙実験室「スペースラブ」、無人衛星「エウレカ」
1984-1990 宇宙曝露実験LDEF(ESA)
1994 BIOPAN(ESA)←ロシアのFOTON衛星に外付けした球形の実験施設
・宇宙ステーション
1971 ソ連・サリュート1号(~1982の7号)→1990まで運用
1986-2000 ソ連・ミール(1990秋山豊寛、1998ガチャピン滞在)
→ロシアのミール2、米のフリーダムなど計画はあったが予算に問題
1998 ISS建設開始、2011完成。当初運用は2016まで、数度継続
2008- ISSコロンバス(ESA)曝露部でEXPOSE実験
2009- ISSズヴェズダ(RUS)曝露部でEXPOSE-R実験
→岩石内に入れば微生物も紫外線を避けて長時間生存が可能と判明
「リソ・パンスペルミア」。数十cmの隕石は突入時に外は焼けても中は大丈夫か
→火星隕石で火星誕生の生物が地球に、との可能性も
・パンスペルミア説の検証:日本の「たんぽぽ計画」(2015)
1.ISSきぼう曝露部に微生物サンプルを1-3年置いて生存率を調べる
→微生物は塊を作ると内部の個体は3年生きていられる(マサ・スペルミア)
2.ISS周辺のダスト採集
→続行中
*ただし高度400kmではヴァン・アレン帯により宇宙線が一部カットされている
→ゲートウェイに期待
・宇宙の微生物汚染
NASAのサーベイヤー3号(1967月着陸、1969アポロ12号で回収)
→カメラ内部に連鎖球菌生存を確認
月は生命探査対象でないのでいいが、火星だったら?
・国際的議論
1956 国際宇宙航行連盟(IAF)大会で開始
1957 スプートニク1号打ち上げ
1958 米NASが月探査による天体への悪影響警告
→国際科学会議(ICSU)「地球外探査による天体汚染特別委」が探査機滅菌推奨
→現在は国際宇宙空間研究委(COSPAR)に継承、惑星保護指針(PPP)を継続議論
1966 国連で「宇宙条約」採択、9条が惑星保護
・COSPARのミッションカテゴリー5分類
1. 化学進化過程や生命起源に直接関係しない。太陽、彗星、イオ、S型小惑星
2. 興味深い天体だが汚染が将来影響を与える可能性低い
カリスト、彗星、P,D,C型小惑星(リュウグウなど)、金星、
3,4. 重大な影響を与える可能性高い(3は周回、4は着陸ミッション)
火星、エウロパ、エンケラドゥス
特に火星は4a,b,cに分類。cは液体の水が時々流れているクレーター内壁など
→特に厳しい滅菌が要求される
キュリオシティは4a、パーシビアランスは4b
5.サンプルリターン。地球への影響を考慮すべきミッション
制約あり:火星、エウロパ、エンケラドゥス(タイタンは追加の可能性)
制約なし:月、金星(金星は見直しの可能性)
・滅菌は高温が一番だが、電子部品を加熱滅菌できない
→薬品を使った滅菌をし、組立はクリーンルーム
・月探査などでも、火星など保護対象の天体に間違ってぶつかる確率を基準値以下にする
例)日本の火星探査機「のぞみ」(1998、内之浦)
火星衝突確率が1%+になり軌道投入断念
*おもてなし、エクレウスは月面に持ち込む有機物のリスト作成
・火星の生命探査の場合は液体の水の近くへの着陸は滅菌徹底
エウロパやエンケラドゥス:氷の下の探査は海に広がる可能性ありさらに条件厳しい
・民間参入によりさらに統制難しく
・地球外生命からの防護
生態系への影響(地球生命を食べる、地球生命と食べ物が競合する)
地球生物への汚染(核酸やタンパクを持つ”宇宙ウイルス”の感染)
パンスペルミア説を考えると、感染の可能性はある
出て行った地球生物(ロケット付着微生物、隕石衝突、火山、放電現象)の里帰り
2019 イスラエル探査機ベレシートはクマムシ、ヒト血液を積んで月衝突
→紫外線や宇宙線による変異→帰還の可能性も考慮すべし
・火星サンプルリターン
NASAはマーズ2020で水が存在する可能性がある特別地域(4c)を外して4bにした
・日本のMMX。火星周回軌道に入り、フォボス、デイモスいずれかに着陸して戻る
2011ロシアのフォボス・グルント計画が失敗→MMXが成功すれば世界初
フォボスは火星表面から6000kmくらいしか離れておらず、火星に隕石が衝突した際に火星物質がフォボスに到達する可能性がある。火星に微生物がいた場合、フォボスにも到達していることを想定すべき。→COSPAR指針に基づき国際審査。フォボス環境で微生物が長期間生存できる可能性が極めて低いことを示し、結果はカテゴリー5(制約「なし」)で済んだ
・エンケラドゥス:水、有機物、シリカを含むプルームを探査機が突っ切ってサンプルリターン。カテゴリー5(制約あり)となり、生命探査と惑星保護をどう両立するかが問題に
・エウロパ:氷の下の海水中の生命探査。氷をどう掘削するか、エウロパの海水汚染をどう回避するか
【9章:地球外生命から考える人類のルーツと未来】
・従来の研究の多くは、タンパク質と核酸(DNA,RNA)をベースとする現在の地球生命システムへの経路を考えるものが大半
・RNAワールドへの道を考えると、ヌクレオチドという複雑なモノマーを原始地球の海水中や陸上温泉、潮だまりで作るのは相当大変
・アミノ酸は原始地球や宇宙環境でも比較的簡単にできるが、でたらめにつないでも触媒となるタンパク質ができるとは限らない
・以上のように考えると地球での生命誕生は偶然が重なったためで、地球外生命の可能性は極めて低くなる
・ゴミ袋ワールドやがらくたワールドの場合は、まず非常に性能や公立の低いシステムができ、そこから選択と変異(=進化)によって優れたシステムに移行したと考える。地球では地球環境に適したものが生き残ったとすると生命の誕生は必然
・生物進化でも、隕石衝突のような環境変動があったため進化が促進された可能性。温度が高いこと、放射線が強くて変異が起きやすいことも進化の速まりを促すか。非常に安定した惑星では生命誕生から何十億年たっても原核生物かもしれない
・ETIの目:どの波長を見ているか。暗い環境なら音波も?目は2個?cf.カンブリア期のオパビニアは5個。しかし今は目が5個の生物は残っていない。
・地球生命が左手型のアミノ酸を使う理由は→分かってない
・隕石中のアミノ酸に左手型が多かったなど、何かの偏りの結果か
・ではなぜ宇宙に左手型が多いか→円偏光のためとの説が有力。結局偶然?
→偶然が嫌なら、ベータ壊変する際に放出される電子が必ず左巻きなことに求める?
→その場合は全宇宙で生命がみんな左手型を使っている可能性
・破局
・カルデラ噴火(破局噴火)7000-10000年に1度
南九州の縄文人絶滅(7300年前)
インドネシアのトバ事変(7万年前)=現生人類とネアンデルタール以外が絶滅
2億5千万年前のペルム紀末大量絶滅はスーパープルームとの説が有力
・隕石衝突
6550万年前、恐竜絶滅。チクシュルーブ・クレーターは直径160km
→スペースガード。1996年にNPOスペースガード財団、日本でも
・超新星爆発
近傍で起きると大量の放射線(宇宙線)が直撃
弱い場合でもオゾン層破壊によって地上生態系に大きな影響を与える
近い将来に可能性があるのはベテルギウスだが、ノーマークの星が起こす恐れも
・スーパーフレア
1859 キャリントン・フレアでは欧米の電信システム停止、電信機の出火も
1989 数分の1規模だがケベックで大停電、人工衛星の故障、被害100億円以上
キャリントン・フレアが起きうる最大規模とは限らない
京大・柴田らが2012年に他の恒星でスーパーフレア発見
キャリントン・フレアは100年に1度規模→その10倍規模だと1000年に1度起きる
(グーテンベルク・リヒター則)
→宇宙ステーションでは致命的、航空機乗員にも大きな健康被害
発送電システムのダウンで人口維持が困難に
・人間活動
1983 TTAPS研究=核使用による寒冷化