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ピッツバーグ

首都圏から北西に340kmくらい、ペンシルベニア州ピッツバーグに行ってきました。
移動は飛行機。前任者と話すついでにそのことを言ったら「え?車で行けるじゃん」と言われました。確かに。でもまあいいや。

今回は家からDCのレーガン空港まで地下鉄。土日なので2ドル。やすい。ただし乗り換えの接続が悪すぎて、乗車してる時間は30分ないのに50分くらいかかった。
ピッツバーグ国際空港からダウンタウンまでは50kmくらいあるんですけど、乗り合いシャトルは30ドル、ウーバーも50ドルくらいするところ、公共バスが走っていて2.75ドル。これもまた安くて助かります。しかしシートベルトなどない普通の路線バスがハイウェイを時速100kmくらいですっ飛ばすのですごい怖かったです。

ダウンタウン到着は昼ちょい過ぎ。バスを降りたら黒人がたむろってるメインの通りだったのでさっさと川辺に出ました。きれい。
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橋がとにかくいっぱいあります。鉄鋼の街で第2次大戦中は昼間も暗いくらい煙もくもくだったようですが、今は「住みやすい街ナンバーワン」なんだって。人口30万、確かに市街地は適度にコンパクト、繁華街も大学病院もあるし、よさそう。

アンディ・ウォーホル美術館に行きます。最寄りの橋のニックネームも。
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7階建ての高さ方向に長い建物です。入るとマリリン&ウォーホルがお出迎え。
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線画、シルクスクリーン、映像といろんな媒体で作品を量産した人ですが、実際に見てみると弊管理人はドローイングがとても好きでした。たぶん影響を受けた江口寿史の漫画を小さい時から読んでいたからだと思う。猫とか人とか、便器なんかの静物でも、線に肉感がありながら軽くて洒脱だった。
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TDKのコマーシャルは80年代の初頭で、あの時のぼわっとした髪型が印象に残っていましたが、実は20代から髪が薄くなってきたのを嫌ってずっとウィッグを着けていたのだそうです。あと、ぼてっとした鼻も嫌だったらしい。パスポート写真を自分で修正して作品にしたこともあったという。
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とにかくクライアントからの発注は精力的にこなしていっぱい作品を残し、当代の芸術家とも積極的に交流し、メディアにも露出した。自分で番組も作った。収集家でもあって、コレクションは5万点にも上るとのこと。
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亡くなった時(1987年2月)は弊管理人は小学校低学年だったけど覚えてないんですよね。胆嚢の手術時の合併症。全く不慮の死だったよう。
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いや楽しかった。↑この3人はただ休んでるお客さんです。

ちょっと足を伸ばして、ストリップ・ディストリクトという一画を散歩しました。
倉庫街を改装してご飯屋さんとか土産物が並んでいるのですが、どこも混み混み。
その外れであまり人の入ってなかったフォーのお店で昼飯にしたらとてもおいしかったです。

予定がどんどんずれてこの旅行に食い込んだ面倒な仕事が、さらにずれたおかげで時間がフルに使えることになったので、さらに足を延ばしてインクラインに乗りに行きました。
こういうやつ。
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崖の上の住民の利便のために作られた線とのことです。
眺めは超いい。
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ということで宿に向かいます。電車で。
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乗り物はバスも電車もインクラインも2.75ドル均一で分かりやすい。コネクト・カードというSuicaみたいなやつが1ドルで買えて、使う回数分だけチャージすればいいので全く無駄がなく、使いやすくてよかったです。
ホテルはホリデイインという2万円くらいするところで、設備は特に不満はないんだけどサービスが行き届かずぶっきらぼうで、なんかこの国は人のファクターがだめだという仮説がまた強化されました。
夕飯はグーグルマップで近くを探したらSubba Asian Restaurantというところが見つかったので行ってみました。
ネパール、インド、中華、そしてなぜかブータン料理がメニューに載っていて、ブータンに一瞬惹かれましたが、検索してみたらあまり好みでなさそうだったのでネパール。普通に魚の定食にしました。これだ。
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たぶん店のオヤジは中国の人だと思う。スパイスじゃなくて主にソースで味を作ってるターリーだったのでそんな気がした。顔も東アジア、あとご飯の器も東アジアだろうこれは。でもちゃんとおいしくてお腹も膨れたので大いに満足しました。店内は南アジアっぽいおにーちゃんや家族連れが密やかに楽しく食事をしていて、なんか多分いい店なんだろうここは、と思いました。

明けて日曜。
観光したかったところは土曜に行けてしまい、でもまあ時間あるしということでバスでふらっと行ったカーネギー博物館・美術館。
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派手じゃないんだけどすごい物量。
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古代エジプトの物品も結構充実していて、ミイラまであった。
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しかし、博物学とコロニアリズムの関係を直視し、この後予定しているリノベーションではそこをちゃんと明示しつつどんな展示ができるのかを考えます、という言い訳のパネルもあって、そこは大英博物館が「ここに持ってきたおかげで破壊と風化を免れました」と完全に開き直っていたのと違って好印象。
あとは美術館もざっと見て出ました。印象派がそこそこの点数あり、現代ものも多く、見応えありました。工業デザインを扱った特別展もよかった。鉄鋼王カーネギーの財力を思わずにいられません。図書館やら大学(カーネギーメロン大)やら、とにかく街中カーネギー。
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それにしても全館写真OKなんだよね。それどころか「撮影お勧めしてます。ネットでシェアしよう!」とかいっててすごい。京都のケチな寺あたりとは違う。

さて、バスでダウンタウンに戻って、今回のメイン、ハインツホール。
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外見はなんてことないコンサートホールなんですけど、中はこれ。すごくないすか。ケチャップ屋なのに。98%はちゃんと綿パンにジャケットみたいな格好していて、ジーパンのアジア人(=弊管理人)はバーカウンターでオレンジジュースくださいとか言ってて完全に浮いていました。昼飯を逃して喉が渇いてたんだよ!
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で、今回の目的はブロンフマンがソロを務めるラフマニノフのピアノ協奏曲3番。2004年に東京であった伝説的な公演を見逃してからずっと機会がなかったのですが、アメリカ来てみたらこの人いろんなところでやってるんですよね。
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前から10番目の真ん中左の席を取りました。ブロンフマン、18年たってだいぶおじいちゃんになったけど、最初の数小節で既に胸アツです。1楽章のカデンツァは相変わらず圧巻で、椅子から体を浮かせる勢いで打鍵するとスタインウェイの蓋がばたばた揺れる。ものすごい張力で巡らせた鉄線と木の工業製品を限界まで使い倒すような演奏です。1楽章が終わったところでブラボーが飛んでしまいました。ブロンフマンもちょっと頷いて応え、2楽章へ。
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普通の協奏曲や交響曲だと2楽章は箸休めですが、ラフ3はメロメロキッスな曲調ではあるもののきちんと音は動いており、そこからさらにネジを巻いてアタッカで3楽章へ。
今回やや残念だったのはピッツバーグ響がブロンフマンのドライブを制約するような鈍重さだったことで、もっと機敏にソロイストに反応すれば最高潮でフィナーレに持っていくことができたと思う。ブロンフマンはオケを引っ張ろうとしながら、しかし置いていかないようにギリギリの線を狙っていたはず。
コンサートピアニストって何だろうと友人と話したことがあります。たぶん、内向的な洗練よりも聞き映え、というのが弊管理人の答え。その意味ではブロンフマンは典型的なコンサートピアニストで、ぞっとするようなピアニシモはないけど、正確な爆音で観客を巻き込み、最後の音を打った瞬間に観客を総立ちで叫ばせた!

弊管理人の18年越しの課題もこれで終了。後のマーラーはうとうとしながら聴いて、終了後はバスに飛び乗って空港に行きました。(余談だが、空港バスがバス停を通り過ぎようとする気配を感じ取って、横で並んでたおっちゃんがめっちゃ手を振って止めた。こういう瞬発力が欲しいものです)

最後はこれ。Primanti Brosの「ピッツバーガー」というサンドイッチと、Yuengling(中国語っぽいがドイツ後で「若者」らしい)という地元ペンシルベニアの老舗ビールで独り乾杯。
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離陸とともに寝て、DCに戻りました。
うん、行ってよかった。ときどき旅行しないとね。

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2022年04月24日 23:19に投稿されたエントリーのページです。

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