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2022年03月 アーカイブ

2022年03月27日

火の鳥やカレーなど

寒さがぶり返した週末、土曜は仕事で日曜は「休もう」との決意だけは固めたものの何をするかは決めてなく、昼前に布団を抜けてボルティモア響のページを見ていたら午後3時からストラヴィンスキーの「火の鳥」をやるというので、ネットでチケットを確保し地下鉄で北ベセスダ(東京=DCからみると川口ぐらいのところ。ただしいいとこのネイバーフッド)に行きました。歯医者と同じ駅でそれだけが嫌だったんだけど。雪がちらついてた。
ボルティモア響の拠点ホールは二つあって、ボルティモア(東京=DCからみると高崎くらい。ただし港町)とここらしい。ちょっと変わったところで、ステージの裏から見下ろす席を取りました。
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NAXOSでおなじみの地方交響楽団、財政難で何度も存続の危機を迎えているらしい。アットホームな感じだけど空席が目立っていました。合奏は思いのほか安定していて、管楽器の個人プレーも上手。22-23シーズンのパンフレットが出ていたので見てみると、超絶スターではないもののよく名の知られたソロイストを招いて協奏曲もやっているようで、えっなんか地元にあったら素敵な楽団じゃない?と思いました。でも杖ついてる老人ばっかだった。クラシックは若い世代の娯楽じゃないのかなあ。

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アジアンスーパーで特にこれを作ろうというあてもなく買ってあったS&Bのカレー粉赤缶でドライカレーに挑戦。にんにく一かけとクミンシード(これはわざわざ買った)、冷蔵庫にあった巨大ピーマン半分、玉ねぎ半分、にんじん1本分くらい?と凍らせてあったトンカツ用くらいの豚肉1枚を適当に刻んで炒めて、カレー粉ぶっかけて塩で味をつけ、その辺にあったしょうがパウダーと醤油とケチャップと水をちょっと足してみた。
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ちょっとカレー粉が多かったみたいで苦みが出てしまった。「水を使わないカレー」信仰のせいで水が足りなかったかもしれない。もうちょっと水を入れて煮詰めるか、角切りトマトの缶を使ってみるか。あとは隠し味的にヨーグルトとか使いたいが、こちらのパッケージはでかいので迷う。
とはいえ初めてにしてはうまかった。3食分できました。これは仕事が立て込んで料理の時間が取りにくい平日の昼飯にいいかもしれない。次回はかなりいい線いくと思う。

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3回接種の上、初回から3回目まで半年かかるため日本で打ち終わらなかったB型肝炎ワクチンの最終回を近所のスーパーの薬局で受けてきました。SARS-CoV-2はもちろん、インフルもこれも保険でカバーされて自己負担なし。職場の先輩によると息子さんのHPVワクチンもタダだったそうです。予約はネットで前日まで取れる。予防接種だけは(?)アメリカの完勝。

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25日で渡米半年となりました。これをあと5回か……
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(これは前回行ったケネディセンターからバージニアのロズリン方向を撮ったもの)

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鳥つながりで今日の英語。
I get a little bit of goose bumps. (ちょっと鳥肌立ってます)

2022年03月20日

桜2022

日本を出る前に、ワシントン勤務経験のある大阪の同僚から「タイダルベースンの桜きれいですよ」と言われていたので、見に行ってきました。たぶん週半ばくらいに満開を迎えて、次の週末だと若干盛りを過ぎるくらいかなあと思って、この機会に。

おおなんかちゃんと桜じゃないですか。奥のはジェファーソン記念堂。
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8-9分咲きくらいですかね。十分きれいでした。というか蕾が多少残ってるくらいの時期のほうが勢いがあって好き。
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樹種もソメイヨシノだけでなくて、もちっとピンクの濃いのもありました。エドヒガン?
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169mのワシントン記念塔も近くで見たのは初めてかもしれない。
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それにしてもなんか最近屹立してるものを撮影することが多いな。

こちらはバージニア方面です。
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ちょっと風が強くて寒めだったけど意外と普通にお花見できてよかったです。

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話は前後しますが、土曜の夜にケネディセンター(宇宙じゃないやつ)にまたナショナル響を聞きに行ってきました。昼にネットでチケット買ってふらっと行けるのいいですね。しかも7000円くらいで1階ど真ん中のいい席が買えた。

ショパコン1番で、ソロはヤン・リシエツキJan Lisieckiという初めて聞くポーランド系カナダ人の若いピアニスト。演奏は当たりで、すごく個性的で独特のアゴーギグを唸らせるんだけど帳尻はしっかり合い、オーケストラもちゃんと見ているという「計算づくの変人」とみた。これ、主要コンクールから出てきた人じゃないだろうと思ってプロフィールを確かめたらやっぱりそう。楽器は違うがウート・ウーギの時もこんな印象だった。

最後は総立ちでソロイストを4回くらい呼び戻し、アンコールもあって、前回ここの聴衆は淡泊なのかなと思ったのはそうではなく、いいものはちゃんと褒める人たちらしいことは分かりました。

2022年03月18日

フロリダ出張

16-18日、フロリダに2泊3日で出張してきました。
国内線初めて、レンタカー初めて。特にレンタカーは勝手が違うだろうなと思ったらその通りで、広大な駐車場に並べてある車の中から「好きなの選んで乗ってって」という形式。
どうやって使用者と車を紐付けるのだろうと思ったら、駐車場の出口ゲートで車に乗ったまま保険をどうするかと、ガソリンは満タン返しか単位で払うかを選んで、カードで仮払いしてそのまま乗り出すのでした。
きょうびカーナビはついておらず、iPhoneを有線か無線で繋いでCarplayという機能を使うと車側のディスプレイにiPhoneの画面が映し出され、あとは地図アプリにナビしてもらうというだけ。だよね。地図はいつも最新だから、これが絶対合理的だと思います。

ずっと在宅で2時寝の10時起きみたいな生活だった冬と違って、今回の外仕事は5時半とか6時に起きて延々運転して仕事場に行ってわいわいやって戻ってその日のうちに寝る、というサイクルでした。ちょっと遅寝遅起きが是正できた。
ホテルは「ベストウエスタン」を使いました。日本だとちょっといいビジネスホテルくらいのイメージだったけど、これは東横インだな。クリスマスに泊まったチェサピーク湾のベストウエスタンと部屋の中がほぼ一緒だった。満足とは決して言わないが文句を言いたくなるほどでもない無料朝食がついてるとこまで東横イン。建て付けはモーテル。

最終日は5時半起きの仕事が11時半にはけたので、そのままケネディ宇宙センターの展示施設に行きました。駐車場10ドル、入場料57ドル。結構やね。
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しかし結論からいうと行ってよかった。アポロ計画以来また月に行こうというアメリカの宇宙開発に仕事で触ることがちょくちょくあるので、歴史や位置づけが体感できたというのが大きかったです。これはアポロで使われたサターンVというロケット(のケツ)。
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資料を読めばスプートニクショックがあって、事故があって、72年まで月に行って……というのは分かるのだけど、なんというか温度感みたいなのが掴めないために、目の前の一つ一つの事象に思い入れが持てないでいたんですよね。
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サターンVは制限区域内にあるのでバスで往復しますが、そのバスの中でもビデオが流れて、いまアメリカが進めている月探査計画のトリビアから概要、センター周辺の自然保護対策まできちんとアップデートされた情報を伝えていました。現政権の国家宇宙会議の重要アジェンダの一つになっているSTEM(理系科目)教育の重要性にも触れていて、確かにこういうのを楽しく見せられた子どもが勉強頑張って将来いっちょ噛みしようって思えば、必ずしも結果として宇宙に関わらなくてもアメリカという国の強さを支える力にはなるよな。
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ここのセンターのアトラクションは、入口で強制的にいったん足止めされて、歴史と技術をコンパクトにまとめた映像を見せられてから、やっと展示を回れるようになる作り。
↑これはスペースシャトル「アトランティス」の展示館の入口ですが、立ったまま頭上と左右を取り巻く大型モニターによって映像の中に浸されるので、本当に宇宙船に乗って宇宙をぐるんぐるん回ると眩暈がするようになってる。
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そして、これを全て資産として持っているってすごいよねえ。
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ただこの国の常として「人」に依存する部分は全くだめで、係員は写真とってくれと頼んでも聞いてくれないし、アトラクションの列はただ人が集まってるだけで「列」になってない。
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仕事場でも、事前に計画されていたことはできておらず、待ち時間に行くと待たされ、バスは「気分」で定刻より早く出発し(乗れたけど)、開始時刻はまず遅れる。書類を大量に要求するわりに見ない。メールは返ってこない。なのに悪びれない。ただこれは「そのたびそこいる人に確認する」「対応を求める」ことで大部分解決することも分かってきました。つまり「交渉文化」なんだと思う。声を出すことで物事が進むということ。めんどいけどフレキシブルとも言えなくもない。今回も17日は午後10時40分まで送迎がないという案内だったのに、仕事にちょっと早く目鼻がついたので午後8時時点で「帰りたい」と訴えたら「ちょい待ち」といって小さい車をアレンジしてくれた。おかげで睡眠時間が確保できたりした。
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射場を望む観客席から、17日にお披露目されたSLSという月ロケットが見えました。(画像が荒れてますが、デジタルズームを限界までやったため)
成功するといいね。

31度。日差しはそれなりにきつかったですがそこはまだ3月、風があると涼しく、快適に歩き回れました。ゆっくり見ると1日では足りないと言われる施設を4時間半で切り上げて、びゅーんとオーランド空港に戻ってレンタカー返却。これも返却手続きはなく、「リターン」と書かれたところで車を降りるだけ。空港で夕飯食べて帰りました。
疲れたけど、国内移動の初級課程はできたと思う。

フロリダはもはや誰もマスクしてなくて、しかもめっちゃ唾飛ばしながら大人数で喋っていたので、帰宅翌日の土曜にPCR検査受けてきました。陰性。ほっ

2022年03月12日

ヘビー春雪

金曜にふと見たら土曜の天気予報に雪マークが付いていて、えっ本当?と思っているうちに夜のニュースで「爆弾低気圧くるかも」というのを目にしました。金曜夜、帰宅するため職場を出てエレベーターで「L(ロビーの意)」ボタンを押す瞬間は心底ほっとします。これから数十時間は自分のものだと。しかも翌土曜日が荒天と分かっているので、今日はどこへ出掛けようかと考える必要もない。

寝て起きて、二度寝・三度寝して昼、外を見たらこれ。雪が3時20分の方向に飛んでいってます。
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巣ごもり卵とトマトとトーストとインスタントコーヒーでお腹を満たしたらあとは追いついてないあれやこれやを。その前にとりあえずセラピーとして、シューベルト晩年のソナタを聴きながら日記を書きます。――外は粉糖をぱっと振ったくらいの雪の積もり方だったのが、15時近くなって普通の雪景色になってきました。外は氷点下3度。

* * *

今週は職場にわりと人が多く、朝から晩までむちゃくちゃ忙しい同僚と会ったら「さすがにそろそろ休みたいですね」と漏らしていたのが印象的でした。2月の半ば、疫病にかかって高熱が出た当日に在宅で働き、翌日休んだあと翌々日からまた在宅で働き始めてこちら休んでないのだと。そういえば職場内のチャットで彼が感染報告をした時、直上の上司が「お大事に。家でできる仕事をしてください」みたいなメッセージを返していて、前からおかしいと思ってたけどこいつは本物の人格障害だなと戦慄したものです。

その疲れた彼から「たった2ページの資料が読んでも頭に入ってこないんですよ」と打ち明けられて、(それは後遺症なのでは)と思ったのですが憶測なので言いませんでした。それは措いても、疲労でそうなるだろうというのは分かる。弊管理人の業務量はとても彼の比じゃないけど、注意がすごく散漫になっているのを感じます。

何かを読もうと思ってウインドウを開け、気になる記述を別タブで開き、読み始めるとメールの受信音がするので緊急対応が必要なものでないかどうかチェックし、そのメールは後で処理が必要だなと判断すると見えるように置いておく、と作業しているうちにブラウザの上部にはタブがすごい数並び、お腹が減ってきて夕飯を食べ、また再開していろいろ読んでいるうちに夜が更けてきて、朝を迎えた日本からのメールがどかどか入り、(このあたりで出社した日は地下鉄か車で帰り)、メールやチャットでやりとりしているうちにシャワーを浴びそこねて2時に電池が切れるように寝る。起きるとまた80本くらいメールがたまっていて、寝床からタブレットでいらないものをとりあえずばしばし消してから体を起こす、というのが平日の常。

マルチタスクは効率が良くなく、頭への悪影響も明白です。
職場の優秀な同僚も、メールの多さに「頭がおかしくなりそう」と言っていました。東京は東京で疲労からミスが頻発したようで部長の檄が飛んでました。しかし解決策は「気をつけろ」「頑張れ」しかない。その部長も宿直室の利用者に名前があり、実際泊まっているのかは知らないが泊まり込みなのかもしれない。仕組みに余裕がなさすぎて、「人」(しかも頼れる人)に過重な負担がかかっているように思われます。なんだろうね、これは。

* * *

数年前に同じ部にいて、今はオーストリアの職場の先輩に用務でメールをしたら「お久しぶり。お元気ですか」と返ってきたので、「痩せて運動不足で悩みが深いですが、元気でないかと言われると元気でないほどではない」的なきちんとした分析を返信したのですが、多分そういうのは求められていない。

* * *

パーティションの向こうにいる同期は滞在がもうすぐ3年になるので、アパートの退去時にどの程度きれいにして出て行くものなのかなど聞いていたら「もう帰る時のことを考えてるの?」と言われました。確かに毎日十数分は帰ること/帰った時にやりたいことを考えてます。まだまだなのに。
といってるうちに、弊管理人より半年早く赴任し、年末に一緒に出掛けた他社の人はそろそろ滞在1年を迎えます。がちゃがちゃしているうちに時間が過ぎていってほしい。

* * *

野菜とハムか何かを炒めて茹でた麺を絡めれば1食になるという手軽さのため、ほぼ毎日作って食べているパスタですが、クリームベースのは使い切れないようなパッケージの生クリームを買うのが嫌で試していませんでした。しかしふとネットで見たレシピに「ほうれん草や玉ねぎに小麦粉をちょっとかけて炒めた上で牛乳とコンソメを足す」という方法が書かれていて、やってみたらちゃんとできました。1食に牛乳200mlと書いてあって、いやそんなたくさん?しゃばしゃばにならない?と思って減らして作ってみたら若干重めのソースになったので牛乳は結構入れていいようです。
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ただ今週は自炊が面倒になって何回か端折りました。2月の終わりに戦争が始まってから弊管理人の受け持ち分野以外のところにスポットが当たるようになり、アウトプットが減って気が抜けたのかもしれません。東京からちょっと救援を求められたときに若干塩対応した(でもアウトプットはした)ら声がかからなくなりました。そういう時だってあるじゃん、電話でのコミュニケーションって面倒だな。でもそれも思い過ごしの可能性はある。

* * *

日本から持ってきた小皿を一つ割ってしまった。
確か100円ショップで買ったやつなので大した損失じゃないんだけど残念。
今までお世話になりました。さようなら。

2022年03月06日

桜だ

桜かな?
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花びらに切れ込みが入ってるので多分桜だと思いますが、色の濃さからするとソメイヨシノではないし、ヤマザクラ?にしては葉っぱが出てないし。わからない。
クラレンドンClarendonというちょっといいとこの地域まで散歩していったら、ホールフーズというスーパーの脇に咲いてました。

ホールフーズは初めて行きましたが、デリもパンもケーキもなかなかおいしそう。家の近くのハリス・ティーターよりもいい感じ。アーリントン郡の自由が丘(というのもなんだが)みたいなところだからかもしれないけど。いいなあ。ちなみにうちのあたりはアーリントン郡の八王子だと思ってます。都市圏の西端かつ交通の拠点なので。

あと、コンテナストアという、自社ブランドじゃないんだけどどことなく無印っぽい雑貨店も冷やかしました。名前の通り収納用品が中心ですが、文房具も充実していました。ちょっと欲しいかなと思うものは写真を撮って帰宅。アマゾンのほうが格段に安かったです。これはあるある。

雲がやや厚く風もあり、雨が来そうな匂いがしていたものの、気温は25度まで上がり、白人の皆さんは半袖シャツに短パンという夏の装い。弊管理人も襟のある長袖シャツの袖をまくって歩いてました。
DCの桜の見頃までまだ3週間くらいあるとのことですが、もうちょっと早いかもしれない。

* * *

昼近くに起きて真っ暗にしている寝室から居間に出ると、ふわっと暖かい感じがしました。
気温そのものは真冬と1度くらいしか変わらないんだけど、湿度は冬の間26%とかだったのが44%になっていました。ようやく建物内の暖房が弱められる時期に入ったのか。

* * *

書き忘れていましたが、歯科は先週の通院でいったん区切りとなりました。
半年後にまたルーティンの検診を受けにいきます。なんとか口腔衛生を保って3年間逃げ切りたいです。

* * *

未婚男性の死亡年齢中央値が67歳なので、帰国したら残りは20年。
最後の数年は何らかの健康問題を抱えて動き回ることがままならないとすると、ざくっと15年をどう使うか。15年というと、何かを勉強して走り出してみるくらいの時間か。そう思うと間延びしなくてちょうどよく、何をするかを考える気にもなります。

2022年03月05日

ポープ……

Pope-Leighey House。ポープ……リーヘイ?リーイー?ライ……いや……
という読み方の分からないフランク・ロイド・ライト建築。
今日やっと発音されるところを聞いた「ポープ=レイヒー邸」はバージニア州アレクサンドリアというところにあります。家からは車で30分。ブランチ食べてから向かいました。

昨年末に行ったペンシルベニア州のケンタック・ノブで「これと似た装飾の建物がDCの近くにもあるよ」と言われて探したのがこれです。冬の間は閉めていて、3月2日からツアーが再開したというので早速予約しました。毎正時の回はそれなりに人数がいたものの、13:30からは弊管理人1人だけ。心理戦?に勝利した。ということで解説担当のおねえさま独り占め。贅沢~
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1930年代にライトが注力した、中流層向けの手頃な「ユーソニアン住宅」の一つです。ワシントン・イブニング・スターというかつて発行されていた日刊紙の記者、ローレン・ポープがライトに依頼し、1939年に建てられました。1946年にレイヒー夫妻が買い取り、ハイウエイ(I-66)の拡張などに伴って2回移築され、現在の場所で保存されています。

「ちいさいおうち」のように、真ん中にドア、左右対象に窓を配置した質素な平屋のケープ・コッド・ハウスという様式とは違った創造的な建築です。「ユーソニアン」はアメリカを指す造語(ライトのではない)で、古い伝統から独立した20世紀のデザインを志向して使ったもの。ちなみに「手頃」といいつつ、最初に建てられたフェアファックス郡の住宅の平均価格が3500ドルだった時代に7000ドル。ポープは会社からお金を借りてローンを組んだ。当時はこういうローンの組み方はよくあったそうです。

当時珍しかったガラスのドアから入り、数段の階段を下ります。
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右手が台所で、奥が居間、居間の左がダイニングルームです。
ライトの住宅の特徴は圧縮compressionと解放release。低い天井、狭い通路を通って高い天井の部屋に出ると、部屋が余計に広々と感じられるという効果を狙ったものです。音楽みたい。
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ね。(分かるかな)

床は温水を使った床暖房があり、背後に暖炉がありますがほとんど使われなかったとのこと。そしてコンクリート床なので夏はひんやりとし、熱い空気は上の装飾がしてある窓を開けると外へ出ていく自然冷房Green Coolingになっていて、夏は外より8~10度涼しいそうです。

この装飾窓がケンタック・ノブにもあるやつで、デザインはそれぞれの家に固有です。動物に見えなくもないけど、先住民のデザインから着想を得たものだとか。ここから入ってきた光が椅子に落ちて、太陽の動きとともに移動していくのが楽しめます。

ダイニングは居間と仕切られておらず、テーブルも同じ形の机モジュールを3個並べて置いてあるだけ。
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家の中にはこの机モジュールが計6個あり、お客さんが来た時などは必要な数だけ居間に並べて対応していました。

台所は広くありませんが機能的です。
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この家の設備はトイレのタンク以外は建ったときからあるものだそうです。
では子ども用の寝室に行きましょう。通路でまた一度compressionされます。
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おしゃれですね。
子ども用のベッドが一つ。しかしポープの子どもは近所の池に落ちて死んでしまったそうです。
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建った時は、「隣人は森だけ」ということでカーテンレールはありませんでしたが、戦中、灯火管制のためにカーテンが付けられるようになりました。

こちらは夫婦のベッドルーム。
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居間が図書室になっているので、ベッドで本が読めないような高さに棚を作ってしまったそうです。主張の強い家ですね。
もう一つの部屋を見て、ぐるっと外を歩いて終了。すごい楽しかった。
こうして見るとサンルームが広くて素敵。手前が玄関ですが、軒が低いのが最初のcompressionです。
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日本から来たと言ったら「帝国ホテルあるでしょ!」と言われました。さすが。でも自由学園は知らなかったので写真を見せたら食い入るように見ていらっしゃいました。あそこは実にいいので来てみてほしい。

なお、話を聞きながら弊日記用にメモをとっていたら「建築専攻の学生さん?」と聞かれ、さらに後続の客に「日本からきた若者」と紹介されました。まあ帽子にマスクだしな。

同じ敷地にはワシントンが甥っ子夫妻にあげたという「ウッドローン・マンション」があります。チラ見して帰りました。
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夕飯は手抜きして中華のテイクアウト。

* * *

東欧が熱い戦争になってしまい、晴れて暖かい土曜日、場面場面ではみんな日常を楽しく過ごしているんですが、全体状況はなんとなくうきうきとはいかない雰囲気です。それこそ3.11の後の3月4月ってこんな感じだったかもしれない。事態がよくなる感じがしない中で迎える春というか。

それにしても、疫病対策では中国あたりがかなりうまくやり、民主主義の国は意志決定が遅くて緩く、経済成長も鈍く、民主主義って今かなり分が悪いんじゃない?という議論をこの2年ちょいちょい聞いていましたが、専制の国でトップが狂っちゃうと手が付けられないし、国でも会社でも研究室でも長く同じ人が同じポジションにいると程度の差はあれ必然的に狂ってくるので、やっぱり任期付きの人たちが集団で意思決定するってのは歴史的に選択されてきた知恵なんだなと思いました。と保守化する弊管理人。

* * *

今回は使いたい英語とはちょっと違い、名札に付けるpronoun stickerについて。
アカデミア寄りの会議に参加登録したときに、名前や連絡先と一緒に「どういう代名詞を希望するか」を聞かれてなんだこれ?と思って調べたら、3人以上で議論をする時などに性自認に配慮した代名詞を使うためらしい。見た目が男っぽいので「彼の言うように……」と確認もせずに発言するのはもはやだめで、「he/his/him」みたいなシールを名札に貼っておいて、自分がどう呼ばれたいかをみんながアピールする。シールは商品化されていてアマゾンにもあった。

日本語だと「○○さんに賛成で、」とかって苗字で話をするし、英語の議論でもファーストネーム使うだろうと思うのですが違うのかな。あと正直そこまでやるかと思うけどこれが普通になっていくんだろうか。単数形としてのthey/them/theirは聞いたことある。zeやhirは使い方がよくわからない(→練習しろとな)。askまである。めんどくさ。
しかしもう3、4年前からこういうことになっているようで、現象としては面白い。今回は疫病のせいで対面の会議が流れてしまったため実物を見ることはできませんでしたが、いずれ見ることになるでしょう。

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