Pope-Leighey House。ポープ……リーヘイ?リーイー?ライ……いや……
という読み方の分からないフランク・ロイド・ライト建築。
今日やっと発音されるところを聞いた「ポープ=レイヒー邸」はバージニア州アレクサンドリアというところにあります。家からは車で30分。ブランチ食べてから向かいました。
昨年末に行ったペンシルベニア州のケンタック・ノブで「これと似た装飾の建物がDCの近くにもあるよ」と言われて探したのがこれです。冬の間は閉めていて、3月2日からツアーが再開したというので早速予約しました。毎正時の回はそれなりに人数がいたものの、13:30からは弊管理人1人だけ。心理戦?に勝利した。ということで解説担当のおねえさま独り占め。贅沢~
1930年代にライトが注力した、中流層向けの手頃な「ユーソニアン住宅」の一つです。ワシントン・イブニング・スターというかつて発行されていた日刊紙の記者、ローレン・ポープがライトに依頼し、1939年に建てられました。1946年にレイヒー夫妻が買い取り、ハイウエイ(I-66)の拡張などに伴って2回移築され、現在の場所で保存されています。
「ちいさいおうち」のように、真ん中にドア、左右対象に窓を配置した質素な平屋のケープ・コッド・ハウスという様式とは違った創造的な建築です。「ユーソニアン」はアメリカを指す造語(ライトのではない)で、古い伝統から独立した20世紀のデザインを志向して使ったもの。ちなみに「手頃」といいつつ、最初に建てられたフェアファックス郡の住宅の平均価格が3500ドルだった時代に7000ドル。ポープは会社からお金を借りてローンを組んだ。当時はこういうローンの組み方はよくあったそうです。
当時珍しかったガラスのドアから入り、数段の階段を下ります。
右手が台所で、奥が居間、居間の左がダイニングルームです。
ライトの住宅の特徴は圧縮compressionと解放release。低い天井、狭い通路を通って高い天井の部屋に出ると、部屋が余計に広々と感じられるという効果を狙ったものです。音楽みたい。
ね。(分かるかな)
床は温水を使った床暖房があり、背後に暖炉がありますがほとんど使われなかったとのこと。そしてコンクリート床なので夏はひんやりとし、熱い空気は上の装飾がしてある窓を開けると外へ出ていく自然冷房Green Coolingになっていて、夏は外より8~10度涼しいそうです。
この装飾窓がケンタック・ノブにもあるやつで、デザインはそれぞれの家に固有です。動物に見えなくもないけど、先住民のデザインから着想を得たものだとか。ここから入ってきた光が椅子に落ちて、太陽の動きとともに移動していくのが楽しめます。
ダイニングは居間と仕切られておらず、テーブルも同じ形の机モジュールを3個並べて置いてあるだけ。
家の中にはこの机モジュールが計6個あり、お客さんが来た時などは必要な数だけ居間に並べて対応していました。
台所は広くありませんが機能的です。
この家の設備はトイレのタンク以外は建ったときからあるものだそうです。
では子ども用の寝室に行きましょう。通路でまた一度compressionされます。
おしゃれですね。
子ども用のベッドが一つ。しかしポープの子どもは近所の池に落ちて死んでしまったそうです。
建った時は、「隣人は森だけ」ということでカーテンレールはありませんでしたが、戦中、灯火管制のためにカーテンが付けられるようになりました。
こちらは夫婦のベッドルーム。
居間が図書室になっているので、ベッドで本が読めないような高さに棚を作ってしまったそうです。主張の強い家ですね。
もう一つの部屋を見て、ぐるっと外を歩いて終了。すごい楽しかった。
こうして見るとサンルームが広くて素敵。手前が玄関ですが、軒が低いのが最初のcompressionです。
日本から来たと言ったら「帝国ホテルあるでしょ!」と言われました。さすが。でも自由学園は知らなかったので写真を見せたら食い入るように見ていらっしゃいました。あそこは実にいいので来てみてほしい。
なお、話を聞きながら弊日記用にメモをとっていたら「建築専攻の学生さん?」と聞かれ、さらに後続の客に「日本からきた若者」と紹介されました。まあ帽子にマスクだしな。
同じ敷地にはワシントンが甥っ子夫妻にあげたという「ウッドローン・マンション」があります。チラ見して帰りました。
夕飯は手抜きして中華のテイクアウト。
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東欧が熱い戦争になってしまい、晴れて暖かい土曜日、場面場面ではみんな日常を楽しく過ごしているんですが、全体状況はなんとなくうきうきとはいかない雰囲気です。それこそ3.11の後の3月4月ってこんな感じだったかもしれない。事態がよくなる感じがしない中で迎える春というか。
それにしても、疫病対策では中国あたりがかなりうまくやり、民主主義の国は意志決定が遅くて緩く、経済成長も鈍く、民主主義って今かなり分が悪いんじゃない?という議論をこの2年ちょいちょい聞いていましたが、専制の国でトップが狂っちゃうと手が付けられないし、国でも会社でも研究室でも長く同じ人が同じポジションにいると程度の差はあれ必然的に狂ってくるので、やっぱり任期付きの人たちが集団で意思決定するってのは歴史的に選択されてきた知恵なんだなと思いました。と保守化する弊管理人。
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今回は使いたい英語とはちょっと違い、名札に付けるpronoun stickerについて。
アカデミア寄りの会議に参加登録したときに、名前や連絡先と一緒に「どういう代名詞を希望するか」を聞かれてなんだこれ?と思って調べたら、3人以上で議論をする時などに性自認に配慮した代名詞を使うためらしい。見た目が男っぽいので「彼の言うように……」と確認もせずに発言するのはもはやだめで、「he/his/him」みたいなシールを名札に貼っておいて、自分がどう呼ばれたいかをみんながアピールする。シールは商品化されていてアマゾンにもあった。
日本語だと「○○さんに賛成で、」とかって苗字で話をするし、英語の議論でもファーストネーム使うだろうと思うのですが違うのかな。あと正直そこまでやるかと思うけどこれが普通になっていくんだろうか。単数形としてのthey/them/theirは聞いたことある。zeやhirは使い方がよくわからない(→練習しろとな)。askまである。めんどくさ。
しかしもう3、4年前からこういうことになっているようで、現象としては面白い。今回は疫病のせいで対面の会議が流れてしまったため実物を見ることはできませんでしたが、いずれ見ることになるでしょう。