1992年ジョージア生まれ(その後ハンガリー、いま米国在住)のピアニスト、ニコラス・ナモラーゼのリサイタル@東京文化会館です。
曲は:
・スクリャービンのピアノソナタ9番「黒ミサ」
・バッハのシンフォニア9番、パルティータ6番
休憩挟んで
・シューマンのアラベスケ、暁の歌
・ナモラーゼ自作のアラベスク、練習曲1,2,3番
アンコールがなんと6曲!!!
・ナモラーゼ自作の「屈折した月」(「荒城の月」に基づく変奏曲)
・スクリャービンの前奏曲 Op.42-5, 8-12, 42-8, 2-1, 42-4
アンサンブルやインタビューも課されるカナダのホーネンスコンクールで2018年に優勝した、学究肌のコンポーザー=ピアニストらしいということを予習していたので、随分と思弁的なのかなと思っていましたが、がっつりテクニック系でした。まずピアノの限界に達したと思えるほどの弱音からぶっ叩きまでダイナミクスが幅広く、指もよく回ってます(手つきはなんとなく若い頃のポゴレリチに似てる)。
内声の聞かせ方などをみると、構成もよく研究されてるようです。黒ミサからシンフォニアへ意外にスムーズに移行したあと、べたべたロマンから「あなたリゲティ好きでしょ」って言いたくなる練習曲へ跳躍するというプログラム作りも意外で面白かった。で結局、アンコールまで聴いて「この人はスクリャービンが合ってる」と確信しました。
一方、コスモロジーはやや未分化だと感じた。テンポの制御も疎かに感じた部分はありました。現状を一言で言うと「上手な若い人」。生演奏で手練れが醸す「ぞっとする凄味」を会得するには、もう少し歳を取る必要があるのかも。
それはおいても、この人のノリはよい。たぶんナイスガイ。予定のプログラムを終えたあと、拍手を続けてると、1度出てきて、引っ込んで、もう1度出てきたらすぐアンコールを弾いてくれちゃう。それを6回。2回が相場なので、3回目からはナモラーゼが椅子に就くたびにどよめきが起きました。最後は聴衆が「もうさすがに申し訳ないよね」と思って拍手をやめるというw
用意したCDが前半終了後の休憩時間に瞬殺で完売してましたが、これは用意した数が少なすぎだったのでは……。終演後のサイン会は早すぎる品切れを受けてか「CD買ってなくても並んでOKです」と、これもまた変わったサービス。
よかったよかった。寒い日曜の午後でした。会場を出たら霧雨。