理研のスパコンじゃないです。これ1000円で手に入っていいの?
■日野原健司『北斎 富嶽三十六景』岩波書店、2019年。
富嶽三十六景の計46点(人気が出たので10点追加したんだって)を見開きで見せ、次の2ページで解説するという岩波文庫。
視覚効果を高めるためには、遠近法をねじ曲げたり、実際の風景と違ったものを描いたり、あるはずのものを取り去ってしまったりするのが北斎流。さらに特段有名でもない地点からの富士を描いちゃうのも、へそ曲がりの達人ならでは。写実が正しいのではない、デザインが面白くなるか、動きが映えるかどうかなのである。
ある絵では描かれたみんなが富士を見ている。別の絵では誰も見ていないが、やはり富士はそこにある。江戸からは小さく、駿河や甲斐からは大きく見える。最後はあの執拗に描かれた三角形の富士が見えない(当然だ)頂上。唸った。