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戦後入門と70年暮れ

■加藤典洋『戦後入門』筑摩書房,2015年.

『敗戦後論』が出たのが大学生のころ(1997)で、何やら弊管理人の出ていた授業界隈がとても騒がしくなったのを思い出します。「国内の300万人の死者への弔いことを土台にすることで、アジアの2000万人につながることができる」という加藤の主張に論争を仕掛けたのがその授業をやってた先生だったためか。ドミニク・ラカプラのテクストを読んでacting outとかworking through(徹底操作)とかのことを習った記憶があります。それは面白かったのですけれど、弊管理人は論争を丁寧に辿ってはいなかったな。そんなことを懐かしく思い出しながら。

第一部の始めに書いてあるように、この本は(1)日本の対米従属の起源」、それを「日本人がなるべく考えない/語れないようにしてきた経過」を探り、(2)で、どうすればいいかを考えるのに割かれています。
それは、ごく短く言うと、
・帰依する先として「普遍の皮をかぶった特殊利害=米国」を選び続けてきた戦後を脱すること、
・しかし、戦前とのつながりを復活させるローカルな方向、ナショナリズムに向かうのではなく
・ほんとうの普遍→国際主義の理念→国連を国際社会への窓にするべきだ
という話と読みました。

こうした米国の描写は、大澤真幸の「帝国的ナショナリズム」を想起します。「超越的な第三者」をどこに求めるかという話かもしれない。話の流れとしては腑に落ちます。というか、第一次大戦からの流れが整理・解読されていく様子がとても勉強になります。しかし、提言部分で期待が表明されている当の国連は、その期待される役割に相応しいものかどうか。あるいは、相応しいものに改革できる可能性があるのかどうか。

2015年最後の本になりました。11月末に出張先の福岡で何気なく買った600ページの新書は、仕事納めをした28日の帰りの電車でやっと読み終わりました。
それにしても、通勤中に読んでる本に「対米従属」「憲法九条」などの言葉がちりばめられていると、多少周りの目が気になります。そういう「気になる」の淵源もまた、この本の中に解説されていた、のかな。

* * *

2015年はあまり古い本に手を付けず、時事問題に関係のある本と新書(特に分厚いやつ2冊)にかかずらいながら過ぎてしまいました。

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2015年12月28日 23:59に投稿されたエントリーのページです。

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