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2014年10月 アーカイブ

2014年10月26日

存立構造

■真木悠介、大澤真幸『現代社会の存立構造/『現代社会の存立構造』を読む』朝日出版社, 2014年.

弊管理人が生まれた1977年に筑摩書房から出版された真木悠介の『現代社会の存立構造』は、確か10年以上前に古本を入手したきり、手を付けずにいました。
どうしてだったかは覚えていませんが、周囲に「だいたいこんなことが書いてある」と教えてくれる人たちがいたことと、入手した本を開くと結構難しそうだったことが理由だったんじゃないかと思っています。

お弟子さんの大澤が今般、200ページの『存立構造』に150ページの解説をつけ、復刊に至りました。
この本でやっていることは『資本論』の読解なので、それを読むには予めマルクスにある程度親しんでいないといけない。しかし今は大学初年次くらいの学生にはなかなか求めがたいだろうから(大澤は大学に入って最初に読んだ本がこれと『気流の鳴る音』だったというけれど)、この本が何を言っているかを紹介する文章を付けておこう、という配慮。おかげさまで読もうって勇気が出ます。

- - -以下はむしろ大澤解説のメモ。

現代社会と、それを支える構造を知るために、まず歴史に戻って、自然―社会―個人という分節が生じたシーンを捉えてみる必要があるようです。

(1)もともとは自然に内在していた人間が自然を対象化して、
  (対象化する)人間・対・(対象化される)自然
 の関係ができる
 農業をやるとかの労働をして、成果を得る
 =〈労働を通しての享受〉=〈労働の回路〉
 =〈外化をとおしての内化〉
 ←→木の実を拾って食べる。労働と享受が(時間的に)隔たっていない

(2)さらに、社会に内在していた個人が社会を対象化して、
  (対象化する)個人・対・(対象化される)社会
 の関係ができる
 自分の持ち物を手放し、代わりに欲しいものを得る
 =〈譲渡を通しての享受〉=〈交通の回路〉※交通は「交換を通じた」の略か
 =〈外化をとおしての内化〉
 ←→自分で必要なものを作る

(1)を少し発展させてみます。

(1’)〈労働の回路〉から〈手段性の回路〉へ
 =自然に働きかける、ための、「手段」(農具とか)の生産

  その結果として:
  ・生産の増大と余剰生産物の出現の結果として、階級が分化する
  ・特定の必要があって生産していた生産手段が、逆に生活や消費の在り方を規定する
  ・分業が進む
  ・生活の目的が「生産活動」から遠く離れた「生産物」にシフトする
  ・その裏返しとして「生産物」への執着が高まり、生産せずに奪えたほうがよいとのドライブが生じる

この段階では、まだ労働の成果は労働した集団が持っている「本源的所有」の段階にとどまっています。次は、互いに見も知らない「私的所有する個人」たちによって構成される「市場」での物々交換へと進んでいきます。

(2’)〈交通の回路〉から〈他者性の回路〉へ
 =顔の知れた小集団の中での交換関係(共同態)、を超えた、
  親密でもない他者との交換関係(集合態=市民社会)

  その結果として:
  ・他者との交換の結果、生活は多様で豊かになる。同時に、幸福を他者に依存することになる
  ・所有が、労働の結果できたものの「始原的所有」と、交換の結果得られる「終極的所有」に分かれる
  ・個人が、私人としての個人と、市場での能力で計られる個人に分かれる
  ・労働の意味が「終極的所有」に向けられ、労働そのものの意味が殺がれる
  ・その裏返しとして「終極的所有」への執着が高まり、労働せずに奪えたほうがよいとのドライブが生じる

自分の労働と結果の享受の間にいろんな媒介物がはさまって、享受がどんどん遠くに行くというプロセスが進行するにつれて、確かに物質的には豊かになります。しかし、働くということそのものに内在するはずの喜びもまた遠く抽象的なものになり、しかも喜びを託したはずの終極的所有も、作物をおじゃんにする天災だとか、労働の結果を買ってもらえないといった、自分のコントロールの及ばない要因によってできないかもしれないという不安定な立場に置かれます。収奪し収奪される関係の中に生きることにもなります。

労働の成果を享受できない、その状態が「疎外」。その反対に、労働してないのに誰かの成果を享受する、その状態を「収奪」と呼びます。支配者と被支配者、のような圧倒的な力関係を背景にするのではなくて、ほぼ同じくらいの強さの個人の間で展開される〈疎外―収奪〉関係が見られるのが「市場」だということです。

こうした乾いた関係が充満する市場では、各人は生産物やお金を媒介にしてつながっています。特に生産物の価値を表現する共通のモノサシとしてお金が交換されます。ここで本来は人間に使われるただの道具だったはずのお金が、その主従関係を逆転し、人間の価値を測るための、つまり価値の源泉としての神のような存在に化けてしまう「物神化」が起きます。

社会や市場がまるで、自分の外に存在しているように感じられるなら、自分に意味を与えられるのは自分です。自己神格化ともいえる状態です。でも、その自分は実際、生活に必要なものの供給を市場に頼るしかありません。そこに参入するとき、自分を意味づける能力は剥奪され、単に市場の求める能力として測られる部品のような存在になるでしょう(自己物象化)。お金の物神化と個人の自己神格化/自己物象化という現象はそれぞれが、相互に収奪し合う人間関係から生まれているといえそうです。

個人と個人が媒介的につながっている市民社会では、その媒介の総体がまるで、どの一人の人からも独立した一個の大きな主体のように立ち現れるといいます。モノを媒介する経済の分野でいえばそれはお金ですが、同じ現象がヒトを媒介する政治では国家、コトバを媒介するなら概念や科学、芸術などとして現れることができます。

それぞれが市民社会における「神」の三つの現れ方ともいえる。とすれば、これらは人を惹きつける力を持っているはずです。お金を、地位を、明晰さを求める人=「お金、地位、明晰さへの疎外」をされた人をまず生み出しますが、それにもかかわらず多くの人はこれらを得ることができない、つまりこれら「から疎外」されてしまいます。
「~への疎外」の中にあっても、得ることはできた「勝ち組」は幸福です。しかし、「~への疎外」に加えて「~からの疎外」を体験した「負け組」は不幸を感じる。現代社会の存立構造を問い返す機会はそこに発見されるのではないでしょうか?

- - -

なんというか、同じ著者の『時間の比較社会学』や『現代社会の理論』、お弟子さんの「第三者の審級」に至るまで、片っ端からこれの変奏なのではないかと思うような基底っぷりでした。早く読んどけって話ですが、でもやっぱり解説のアシスタンスがなければ読み通せなかったと思う。

■傳田光洋『皮膚は考える』岩波書店, 2005年.

皮膚は体から体液が漏れるのを防ぎ、外から病原体が入ってくるのを防ぐのですが、ただそれだけの包装紙ではないらしいという話。

2014年10月23日

札幌出張

札幌に1泊で出張してきました。

魚菜で晩酌。
砂川彗星と、おまかせ5品を頼みます。まずは甘エビと生わかめ。
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ああああぷりっぷり。

もずくと、いか。
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し、しみる……

ポテトサラダ。
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ごまが効いてます。あと刻んだピクルス入ってません?心憎いポテサラ。

炊いたやつ、いろいろ。
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胡椒と食べる牡蠣、うめーなー
ほたてはずずずず、じゅじゅじゅわっと体に沁みる。
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落花生と北海しまえび氏。

最後はほっけスティック。
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じっくり焼いたほっけが、うまくないわけない。
これで3000円いかないんですけど。どういうこと。

キーンと冷えた札幌の空気。在札幌友人たちは「寒いよねー、今日」と言っていましたが、心地よく懐かしい寒さです。これから12月半ばまで、ただ寒いだけの時期が続きますよね。

翌日は昼過ぎに北海道大学で仕事だったので、狸小路の宿と大学の間で牡蠣を食べようと思っていましたが、定休日。ぐぬぬ……

ということでぶらぶら北上していたら、結局大学まで来てしまいました。
北大病院の前にあるロンズキッチンでエスカロップいっときましょう。
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タケノコのピラフにトンカツのっけてデミグラスソースかけてあります。
根室の食べ物ですが、こんなところで食えるとは。

北大はちょうど銀杏並木がきれいでした。
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期待以上に面白かった仕事を終えて、札幌駅まで戻ります。

地元の甘味・洋食師匠に教わった四つ葉ホワイトコージでパフェ食いますよ。
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うがー満足した。帰る!

札幌来たら元気になった。

* * *

■堂嶋大輔、渡邊雄一郎『マンガ 生物学に強くなる』講談社、2014年。

行き帰りの飛行機で読んでました。
これ、とてもいい。というか生物学は絵で勉強しないとだめだろうって思う。
iPS細胞までカバーしていた。えらい。
ゲノム編集やノンコーディングRNA、エピジェネティクスとかのアツイ分野も紹介してほしかった。

* * *

今月は出張があと2回。来月はあんまり行きたくないやつが1回だが、これは回避できないかなー

2014年10月19日

フォニックフープ

友人と新宿5丁目のphonic:hoopでお茶を飲みました。
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施設はいいが、入店時に90分で出て行けというし(いや喫茶でそんなに居座らないけど最初に言われると気分悪いわな)、座っても水も手拭きも出てこないしで居心地は今ひとつ。
しかし、ガトーショコラはうまかった。
帰り際に食事をしている人のメシを見たらこれもうまそうだった。

* * *

9月は忙しく過ごし、10月の落ち着かない上旬を終えたところでどっと疲れが出たのか、手足に赤い斑点がいっぱい出てぎゃーってなりました。
皮膚科に2軒行き、いずれでも多形滲出性紅斑という見たままの診断がついて、1軒ではステロイドの飲み薬と塗り薬が出て「そんな大変なの?」と一瞬ぞっとしました。しかし3日くらいの服薬で紅斑が薄れてきたので自己判断で中止し、伴っていた倦怠感も睡眠と野菜食で1週間かけて追い払って、現在はほぼ回復といっていい状態です。

もしやと思って過去の日記を見てみると、体調を崩している秋口は今年だけではありませんでした。

そして、ぐったりしている間に、また仕事が込んできております。

* * *

普段はインタビューをする側なのですが、先週末は某研究者の方にインタビューをされました。
自分が強調したいポイントをちゃんと受け取ってくれたかなー、と一抹の心配を抱くインタビュイーの気持ちがちょっと分かった。今回のインタビュアーがヘタだったのではなくて、話す側が話し慣れない人だとそういうことがあるな、と思ったということです。

謝礼として3000円の図書カードをもらいましたが、読んでない本が積まれすぎているので、使うのはもうちょっと後か。

* * *

iPad miniにSmartnewsを導入して、起き抜けにニュースを読んでいます。
今のところ快調。これいいですねえ。

2014年10月06日

Nokishita

なんだかでっかい台風が近づいているというが、朝からの雨は前線によるものらしい。
そんなんで電車が止まるわけがないので、荒天フェチの弊管理人は出掛けるのであった。

新宿三丁目、Nokishitaの「たまごとベーコンとほうれん草のスパゲティ」。
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ほうれん草のせいで少し歯がギシギシするのだけど、この取り合わせは好きです。
というか弊管理人流の巣ごもり卵は、まさにこれらの素材で作ります。
ちなみに、ここのサラダも大好きです。ドレッシングが酸っぱくないので。

* * *

10月3日に今季初の長袖シャツ通勤をしました。

* * *

雨の朝は外が暗いのでよく眠れてよいねー

2014年10月03日

ル・モンド

最近、週末が仕事でつぶれてばかりなので、木曜は休みを取ってしまいました。
昼飯の新小岩「一颯」のラーメンが今ひとつだったので、夕飯はちゃんと食べたい。
しかし、独り。
というわけで、新宿西口のバスターミナル近く、「ル・モンド」。
サーロインステーキの定食(150g, 1260円。ランチはもうちょっと安いらしい)を頼みました。
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うんうん、おいしい。
お皿の上だと食べているうちに冷めてくるので、これ以上の分量はいりません。

* * *

■鷲田清一『哲学の使い方』岩波書店,2014年.

2014年10月01日

ろしあ亭

一ツ橋での昼仕事を抜け出して、神保町のロシア料理店「ろしあ亭」。

ガルブツィー(ロールキャベツ)のランチをいただきました。
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「肉食いたい!肉!」という若者を連れて行くかというとちょっと躊躇しますが、隅々まで味の沁みたロールキャベツと、濃厚でどこか酸味のあるクリームソースは、かなり好きな味でした。
ほかに真っ赤なボルシチ(たぶんビーツの色)とパンと漬け物とデザートのキセーリ(酸っぱいゼリーみたいの)がつきます。
ヨーロッパの料理なのにちゃんとしてるー(失礼)
野菜が多いわりには結構腹に溜まりました。満足。

* * *

ここに時々出てくる酒場の方が、ここのことを知っていて、どびっくり。
読まれていると想定していなかったので、なんかやけに恥ずかしい。
でも見られて困ることは書いてないから、よしとしよう。
(というか好きで行ってるんだから悪いことなどないのだ)
(というか怒ったり悲しんだりして生きてません、ここのところ。歳だな)

* * *

9月が終わってしまった。
まだ半袖で通勤しています。

* * *

7月に布団を新調してから首がどんどん痛くなっていたのですが、試しに枕を以前の布団に合わなくて押し入れにしまってあったちょっと高さのある低反発枕に替えたら緩和しました。
もっとも寝具のせいだけじゃなく、通勤電車で本を読むとき、腰のあたりに本を置いて頭を垂れる姿勢をとってたのもよくなかった気がする。最近は首を曲げないでいいように、本を目の高さまで持ってきて読むようにしています。

* * *

という、どうでもいいことばかりの数日でしたとさ。

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