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社会契約論

■ルソー(中山元訳)『社会契約論/ジュネーヴ草稿』光文社古典新訳文庫、2008年。

地震のエネルギーによって、ぼくたちがそれ以前とは少し違った世界に連れてこられてしまった、そんな感じのする時間の中でちょこちょこ読んでいたのがこの本でした。世界がちょっと違って見えると、そういえば世界ってどうやってできているんだっけと立ち止まる機会にもなる。地震後はじめての「読んだもの」カテゴリーのエントリーなんですよね、これ。

ばらばらだった個人が、めいめい好きなように自分の持ち物を拡大している状態よりも安全に自分のものが守れる状態(社会)を望んだとき。自分のすべてをいったん拠出して、「私+私+私+……」ではなく「われわれ」という一個の実体(主権者)と、そのルール(一般意志→法)を作り出す。その運用はそれ専門の係(政府)にやらせるが、忘れてはいけないことは、かれら主権者である「われわれ」が雇った運用係に過ぎないということだ。「われわれ」は頻回に会合を開いて、この運用係がちゃんとためになる仕事をしているか、代える必要がないのか吟味することになるという。
その展開はまるで、初期値(人間の生まれ持っている性質)と原理(主権とか一般とかいった言葉の定義)を決めて、よい社会を導くシミュレーション。

とにかくいろんなことが書いてある本です。多くの記述がいまだ古びておらず、いまのぼくたちを取り巻く政治体制や他の国のことなどと比べながら読まされてしまいます。

100ページにおよぶ訳者解説がついているので、解説→本文→解説と読むと味が出るかも。今年、個人的にやってる「恥ずかしながら今ごろ古典を読むキャンペーン」は続く。

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2011年05月11日 19:57に投稿されたエントリーのページです。

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