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医療倫理

■T. Hope, MEDICAL ETHICS: A Very Short Introduction, Oxford University Press, 2004.

このあいだの地理学の本といっしょに買ったやつです。
問題を分析する、調べものをする、思考実験を試みる。こうしたことを必要なだけやってやっと哲学になるんだよー、ということを、安楽死/尊厳死、医療政策の立案、生殖補助医療と「まだ生まれていない存在」に対する倫理、精神障害者を特別扱いするべきか、出生前診断と情報へのアクセス権、途上国での治験にも透けて見える南北問題、といったケースに即して教えてくれる本です。

いっこ前のエントリーで、パイが大きくならない時代の配分のあり方についてちょっと触れましたが、実はそれを書いた時って、この本のあるパートに「資源が限られている場合、命に関わる分野で誰かのためにお金を使うということは、別の誰かの命を削ることである」という至極そのとおりなくだりを見つけて、それがずーんと重く響いていたときでもあったわけです。

(そういや今年、日本で〈正義〉の話をするのが流行ったのはなんでかというと、お金を含めたいろんな「リソース」がふんだんにある時代がいよいよ完全に終わってもう戻って来ないと思われている中で、じゃあどう分けたらいいのかということにみんな潜在的に関心を持っていたからじゃないかと弊管理人は思っているんですが)

構成だけでなく言葉遣いも平易です。高校生の副読本にも使えるかもしんない。

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2010年12月30日 01:19に投稿されたエントリーのページです。

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