■J. A. Matthews and D. T. Herbert, GEOGRAPHY: A Very Short Introduction, Oxford University Press, 2008.
同じ学部にあるあの人文地理学ってなんだろなー
なんで理学部にも地理学科があるんだろなー
と、高校の社会科で地理を選択しなかった弊管理人は学生時代に思っておりました。
さらに、働き始めてからも、汐留の高層ビル群が都心にヒートアイランド現象をもたらしているのではないか、というニュースの中で、専門家として地理学の先生がコメントしていたのにも「なんで地理?」とひっかかっていました。
そこでまあ、「なんなの、これ」程度の疑問なので、Amazonでは1000円以下(なんと11月初めには円高のせいか700円台だった。新宿のジュンク堂ではもうちょっと高かった)で買えるこのVery Short Introductionsシリーズにお伺いを立てたわけです。
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で、ざっというと、
地理学とは「空間、場所、環境に関する探究」であるということ。自然地理学は地表のちょっと下からちょっと上までを研究対象とし(下から上に地質、生態、気象のイメージ)、人文地理学は「場所」という視点から人間の活動を考える(社会、政治、経済、表象、歴史……)。
近代的な地理学の歴史は、世界が広くなった19世紀、「どこに何があるか」という探検と植民地支配のツールとしての地図作りに端を発して→上記のような専門分化、量的・質的といった手法の分化でどんどん細かく分かれ→最近はまた統合・学際領域としてのアイデンティティを探ってます、みたいなものらしい。
たとえばエル・ニーニョがどこにどういう影響を及ぼすかとか、イースター島だけがなんで不毛の地になっちゃったのとか、氷期と間氷期ってどういうサイクルで来てるのとか、環境変動に人間活動の影響ってどの程度あるのとか、犯罪の多い地域って他と何が違っているのとか、住民は「地元」ってどこまでのことだと思っているのかとか、ある地域にどんな人がどんな配置で暮らしているのかとか、そんなことを考えたりしている。
手法はフィールドワークだったり統計分析だったり衛星画像の分析だったりインタビュー調査だったりコンピュータによるモデリングだったり、それらの組み合わせだったりと、いろいろ。
でもさあ、これだけ多様だと、そのうち気象学だったり情報学だったり、文学や政策科学だったりといった他領域と差別化できる「何か」(方法?)を持った領域たちに八つ裂きに持って行かれてなくなっちゃうんじゃないかなあ、なんてモヤモヤしながら読んでました(筆者もそういう感じは持っていて、それなりの解答は与えてます)。
構成はすんごくしっかりしてるので読みやすかったです。