■加藤文元『物語 数学の歴史』中公新書、2009年。
すみません、本とは関係ない思い出話をします。
もう13、4年前、大学1年目か2年目に松本幸夫という先生がやっていた文系むけの数学の授業を取りました。非ユークリッド幾何学、群論、多様体とか、まあとにかく当時の自分にとってはぶっとんだ内容をざざっと紹介し、ひえええ一体どんな期末試験になるんだろうとガクブルしていたところ、配られた問題用紙にあったのは
今期教えたようなことは社会で何の役に立つか書きなさい
というような問題文1行でした(文言は正確ではないと思う)。自分の回答もよく覚えてませんが、なぜか「A」評定をいただいたはずです。
それから10年も経って、仕事でお会いした数学出身の某大学の情報科学の先生と話していたときにこの話をしたら「それはいい問題ねー」とおっしゃっていたのもこれまた意味不明で、自分にとって数学はいつも、このようにときどき姿を現しては誘惑し、追いかけても追いつかない神秘的な存在のままでいます。
振り返ってみれば、たぶん5つとか6つとかの分野について1学期間で走り抜け、しかもその基本的なアイディアの断片くらいは学生に授ける教授法ってのも実はすごかったんじゃないかと思う。そして、あの授業をもう一度復習させてくれるような本を探しながら、30代もなかばにさしかかってしまっているわけです。そろそろ先生に聞いてみようかな?