■仲正昌樹『今こそアーレントを読み直す』講談社現代新書、2009年。
確かに筆者の言うようにアーレントの人気は根強いと思います。新刊本を気ままに読む生活をしていてもいろんなところで言及され続けてますし。その点、路線違いですけど、デリダって亡くなったとたんにフェイドアウトしつつある感じ、しません?(誰に聞いておるのか)
いやはい原典読めって話なんですけど、原典のどれから手を付けたらいいかを知りたくて手に取った本です(『アイヒマン』は6-7年前読んだ)。結論からいうとやっぱり手近なのは『人間の条件』だな。それが終わったら『全体主義の起源』。いつになるやら。
私利私欲の要求から自由な個人が、政治という舞台で丁々発止の討議を繰り広げる。
ただし舞台なので、そうしたアクターたちのプレイを第三者的に見守り、ジャッジする観客という役割もまた尊重されなければならない。
そのモデルは「政治とは富の分配のことです」というよくある説明とも違うし、「討議しているうちにひとつの真理に達するでしょう」という普遍主義的な企画でもないし、「やっぱり外野より活動家が偉いよね」というアクティヴィズム賛美ではもちろんないです。それが現実のいったいどこに顕現するのかようわかりませんが、でもそれはそれでいいと思う。という歯にものが挟まった感じこそがアーレントの本領だというんですね。
もはやそれを目が覚めるようだとか示唆に富んでいるは思わないけど、まとめとしては分かりやすいです。通勤電車で読むのにちょうどいいくらいかなあ。それでもちょっと物足りないかも。
なんて思いながら読み終わって、次の本次の本と思いながら八重洲ブックセンターをぶらついていたら、仲正さん、とうとう自伝とか出しちゃったのな。なんか、えー、とか思いながら夕暮れの八重洲を歩いて次の仕事に向かったのでした。