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2018年06月 アーカイブ

2018年06月23日

超予測力

■フィリップ・テトロック, ダン・ガードナー(土方奈美訳)『超予測力―不確実な時代の先を読む10カ条』早川書房, 2018年.

ハウツー本ぽいタイトルでちょっと嫌だったのですけど、以前から社会現象の予測は可能か(ちょっと違うけど、社会科学に予測はなじまないのか)ということに興味があったので手に入れてみました。
上記の問題には一応、「社会は複雑だから予測は無理」ということで納得はしているものの、でもなんかそんな割り切っちゃっていいのかなあという思いがありました。

この本の著者らは、「セルビアは2011年中にEU加盟候補国になるか」「東シナ海で船舶同士の武力衝突によって死者が出るか」といった国際情勢に関するたくさんの予測を幅広いバックグラウンドを持ったボランティアにやってもらう研究プロジェクトを通じて、次のような発見をしたといいます。

・一般人どころか、機密文書を読むことができる「専門家」に比べてもさまざまな問題の行く末をよく予測できる非専門家(=超予測者)は存在する(ちなみに「集合知」は優秀だが、集団の中である時期に高い予測力を発揮した人が次の時期にもそうであるわけではない。超予測者は逆に、コンスタントに高い予測力を発揮する。これは運<能力である証しである)
・超予測者はものすごくIQが高いわけでも、高度な数学を駆使して予測しているわけでもない
・考える「流儀」や「性格」が予測の正確さを保証している

それの「流儀」や「性格」は次のようなものでした。

・問題がざっくりしていたら、検証可能な(=当たったか外れたかが明確になるように定義された)小問題群に分解して、データを利用できるものはし、なければ推測してパーセンテージを出す(フェルミ推定)
(・12年後のアメリカ大統領選など、先のことすぎる問題はどう頑張っても当てずっぽう以上の成績は出せないので、そういうものには注力しない。筆者らの研究では、予測の正確さは5年後を境に低下する)
・論理と心理、自分の立場と相手の立場など、異なる複数の視点からものを考える。順番としては、まず「外側の視点」つまり一般的にはどうか、という調査から始め、「内側の視点」つまりことこの問題についてはどうか、という調査に進む。人は内側の視点に引っ張られがちな(アンカリングが起こりやすい)ため。ガーナの大統領選に関する問題が出されると、それを「ガーナについて知る良い機会」ととらえるなど、知的好奇心が旺盛であることも有利に働く
・調査で情報が集まったら、仮説を支持する意見(たとえば「南アフリカはダライ・ラマにビザを交付する」)だけでなく、それが間違っている(「交付しない」)可能性を検討する
・「ある/ない/どちらともいえない」という石器時代の確率論はもちろん、「60%対40%」といった10%単位の予測でさえない、「57%か58%か」という細かな検討をする。実際そのほうが予測精度も上がる
・運命論を採用しない。すべてのことは確率的に起こる(他でもありえた)と考える
・いったん立てた予測を小まめに修正する。ただし重要な情報の過小評価、些細な情報の過大評価を避ける。ある情報が事態をどの程度揺るがすかを考えて予測の修正幅を決める(ベイジアン)
・「自分の見方」はたたき台に過ぎないと考え、固執しない
・粘り強い
・チームワークは、グループシンク(安易な全員一致)にもいがみ合いにもならず、不快にならないように反対意見を戦わせ、反論をあえて募りもする。このとき、チームは多様なほうがいい。クローンばかりだと意見が間違ったときにも極端化する

直感や分かりやすい説明に飛びつく思考(システム1)は非常事態の中で行う即断や経験に裏打ちされた言語化しにくい判断が必要な時に使えますが、予測に使うべきなのは熟考あるいは科学的慎重さ(システム2)のほうです。
医療や政策、安全保障の世界では、システム2に基づいて検証可能な予測をし、結果が良くても悪くても検証し、修正するというサイクルが欠かせない。20世紀になってようやくシステム2に基づく評価をルーティン化した医療に比べて、政治評論はまだまだじゃないですかね、という厳しい指摘がされています。

まあ「原理的に無理」とかいって捨てちゃわないで、いろんな人がいろんな機会にやってみたらいいんじゃないですかね、社会に関する予測。研ぎ澄まされていれば結構当たるらしいし。と、そんなことを思いました。

あと、どうでもいいですが、
訳者が「病理学者」と訳しているのはたぶんpathologistで、これはがんの確定診断をする人という文脈なので「病理医」が適当じゃないでしょうか。「マサチューセッツ州総合病院」も、そのあとにハーバード大学の話が出てくるのでMassachusetts General Hospitalのことでしょう。ハーバード大医学部の関連病院のMGHは「マサチューセッツ総合病院」という定訳があるからそっちを使ったほうがいいと思った。全体的には読みやすい日本語だし致命的ではないとしても、ちょっと粗っぽいかな。

2018年06月17日

名古屋

研修は続行中。実のところ、
・本務から離れることができ
・勤務時間は18-26時など変な時間だが拘束されるのは研修中だけ
という生活のおかげで、ノーストレスで2週間ほど過ごしました。

弊管理人は、抱えている仕事があると勤務時間か否かを問わず常にそのことを考えており(実際それでふと改善点が思い浮かぶことがあるので始末が悪い)、込んでくると食事の質と量も落ちるので、そういうのがない状態は息抜きになります。

* * *

それで、ちょっと時間ができたので名古屋に行ってきました。
本を読むのにちょうどいい移動時間の場所ということで。
仕事でなく訪れるのは2011年8月以来。

昼過ぎに着いて、「鈴波」で白ひらすの粕漬け定食。
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アーーーーーーーーーーーーーーーーーーうまい。漬け物も含め全部うまい。

そんで初めての名古屋城。9年にわたって続いた「本丸御殿」の修復が8日に終わったというので激混みを予想していましたが、全然そんなことありませんでした。
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天守閣は耐震工事で入れないそう。

夕飯は「矢田かつ」。
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豚肉がウリらしいのですけど、多少の肉質の違いなら関係なくなるくらいタレで食う食べ物だなと思いました、味噌かつ。
ちょっと前まで「矢田とん」という名前でした。改名の理由を聞くと「営業許可証の更新のときに以前の名前に戻した」と、理由ではなく経過を説明されてしまいました。矢場とんから抗議でも来たのかと思ったけど結局よくわからず。

深夜はやっぱり栄で楽しく飲んでしまいました。
でもなんか人が少なかった。金曜なのに。

翌日は名古屋市科学館。
世界最大のプラネタリウムというやつです。全日程分のチケットを9:30に発売するというので朝一番で来ましたが、そんなに警戒する必要はなく、あっさり買えました。
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50分あっという間。その他の展示もとても楽しい。
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テスラコイルを使った放電実験も見ました。

科学館と同じ白川公園にある名古屋市美術館では「モネ それからの100年」展を見ました。
モネって近づいて見ると「そんな色置くの?」というような意外な色(木の幹に青とか)が混ざっているのに、遠くから見たり、目を細めて見たりすると質感や光彩が「わかる」。不思議な絵ばかりです。特に冬のロンドンの連作で本領が発揮されてます。ポストカードを3枚買いましたが、印刷すると魅力が数十分の一になってしまうのが残念です。モネに影響を受けた後世の作品も楽しみました。

昼飯は地元の人に教えてもらった「はなび」で台湾まぜそば。
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新宿にもありますが、滅多に行かない地域にあることもあり、折角なので名古屋で。
辛くて濃ゆくてこれは行列になるのも分かる。結局夜までお腹がすきませんでした。

2018年06月09日

ひつじをめぐる研修

東京は今週梅雨入り、したもののドカンと暑い土曜の朝。
友人から「腹減った!」と連絡がきたので高円寺のカレーを提案したらあっさり却下され、新宿駅で待ち合わせて「うどん 慎」に向かったものの行列でどん引き、で、きました、「ビストロひつじや」。
ランチのシシカバブ2+スペアリブ2、サラダ、スープ、パン、ごはんついて670円。
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そこにチコリのコーヒーと温バナナ・ココナッツアイスのせで140円。
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安すぎませんか。満腹。そしてこれ夜にまた来るべきだと思う。

* * *

7月くらいから現場を離れてジュニアおじさん職位になるため、3週間の研修が始まりました。

本社のジュニア&シニアおじさんセクション数カ所をラウンドしつつ見習いをしているのですが、現職場の管理職とか昔から知ってる他部署のおじさんとかが入れ替わり立ち替わり弊管理人を見にきて、ニヤニヤしながら「君ももうこっちか~人生短いな~」などといじって去っていきます。

受け入れ側の偉いおじさんから「なんかお父さんがいっぱいいるな、好かれてるねえ~」と言われました。ありがたいことです??

「にしても君、もうジュニアおじさん職位になるの?え、41!じゃあ不思議はないか。見た目、若くね?」
と言われました。まだ実年齢に見た目が追いついていなかったか……

* * *

研修の一環で若者の仕事を見る、というのがあって、少し前に関係したことのある若者とやりとりをしていたら「あれ[弊管理人]さん、現場離れるんですか。うわー時代が変わりますね」みたいなお声をいただきました。

うむ、不精で失敗の多い弊管理人が外れて新しい人たちがその後を埋めてくれれば、ようやくこの分野も上向くのではないか。

「向かんわ」と思っていた現職位から離れることには正直、ほぼ寂しさがありません。今後も時間を作れば細々と真似事はできるようなので、またやる気がたまってきたら手を出せばいいかと思ってます。

* * *

で、弊管理人の知らないうちに、職位変更に合わせて大阪異動の話が出て消えたことを事後に聞かされました。うーんまあ大阪でもよかったかも。東京に長くいすぎた感じはする。

転校、進学、就職、転勤で3年ごとに環境が変わる人生だったせいか、3年を超えて同じことをしてるとなんかどよーんとしちゃうんですよね。逆にずっと東京にいたい/これ一筋、という人にあまり共感できない。結婚しても多分3年で「一生これじゃ嫌だな」と思い始めるはずなのでしない。

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