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障害の社会モデル

東京財団仮想制度研究所(VCASI)の研究会「障害の社会モデルから見た政策的インプリケーション~法学,障害学,社会福 祉学,経済学の対話」というのを覗かせていただいてきました。
以下、発表者(川越敏司さん―はこだて未来大、川島聡さん―東大、中根成寿さん―京都府立大)の話をちゃんぽんにしたメモ。障害研究って今までまったく触ったことがない弊管理人は完全素人です。よってまとめの正確さは保証できません。今日配布された報告書はまだネットに上がってないようですが、そのうちこのあたりで見られるのではないかなと思います。

2006年12月に国連総会で採択され、日本も07年9月に署名した「障害者権利条約」。批准すれば国内にある関連制度をある程度見直す必要性が出てくるかもしれない。そのときに、どういう視点で何について考えたらよいのでしょうね、ということを議論するプロジェクトだったようです。

・大前提として、「障害」の発生原因を、身体的・知的・精神的な機能不全=インペアメントに求める(だから”治してあげれば”障害はなくなるという)「医学モデル」ではなく、インペアメントのために参加が阻害されるような社会的要因に求める「社会モデル」を採用する。
・ということは、社会の側が合理的配慮をしていない、つまり過重な負担とならない範囲内の措置さえとっていない場合、それは差別ととらえていいんではないか。
・以上が、社会の側にある制度を見直す動機。法学、障害学、社会福祉学(社会学)、経済学の知恵を持ち寄って考えてみた。

・まずダイレクトペイメント。サービス提供側があれこれ計画をたててあげるのではなく、障害当事者に、使途を限定しつつ現金で給付する。当事者が自分の必要に応じたサービスの購入ができる。家族をヘルパーとして雇用することも可能で、”支払われない、でもケアから降りられない”家族による介助を市場の中に引き入れる(=家族がやるなら無償、市場から調達すれば有償、という非対称性を解消する)こともできる。障害当事者の自律。英国ではもう制度化され、札幌でも今年から試行されている。ケアマネジメントのコストがなくなるので事業者にとっては厳しいが、行政は出費を増やさずに受益者の満足を向上できる。経済的により望ましい。
・アファーマティブアクション。一定率の障害者の雇用を企業に義務づける政策。生産性の低い労働者を雇用することは社会的コストが増えるという批判がある←が、必ずしも効率性が犠牲になるわけではないという実験結果あり。
・障害者自立支援法では、障害当事者も利用料に応じた負担するべきとの「応益負担」導入。←これに対して、課税前所得と課税後所得の効用の差はどの所得階層でも一緒であるべきであるというミルの「平等な犠牲」を援用すれば、累進課税(応能負担)が正当化できるはず。
・ベーシックインカム。すべての個人に対する一定額・無条件の基本所得給付。←でも、働かなくても一応暮らしていける場合、労働量が減って結局給付の原資が確保できない可能性が実験から示唆。負の所得税のほうがいいのかも?

などなど。最初に書いたように、「障害」の話って、自分にとっては、かすったことはあるけど一度もまともに衝突したことがなかった(なんかこわそうな+なんか込み入ってそうな)ものだったのですが、今日の話はなんだかとても面白かったので、なんとか咀嚼して、これらの議論を参照点として、これからいろいろと考えていけるといいなと思います(、が、自信、は、ない)。

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2010年11月06日 23:41に投稿されたエントリーのページです。

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