■ゲーテ(池内紀訳)『ファウスト 第二部』集英社、2004年。
いくら音色に気を使っても、一拍一拍が間延びしていてはバラードの全体像が見渡せないように、「じっくり読む」は必ずしも「ゆっくり読む」ではないと思っています。頭に入りにくい部分は必要に応じて後から読み直すとして、それなりのテンポで字を追っていく、それで解像度は多少低くても煌びやかに展開する物語の印象が心に浮かんだとすれば、それでいいんじゃないか。
インテリでめんどくさい好色のおっさんファウストが悪魔メフィストフェレスと契約して若返り、世間知らずの女の子をたぶらかして破滅させた第一部に続く第二部は、時間と空間と現実/ファンタジーの境界を超え、さまざまな役者とばらばらの声色が飛び交う狂騒そのものです。
男と女が結びあって子どもが生成し、国家による保証と人間の想像力が結合して紙切れがおカネになり、火と水やら、金と土やらを混ぜれば人造人間ホムンクルスだってできてしまう。そもそものモチーフは本作のはるか以前からヨーロッパに流通していた錬金術師「ファウスト博士」の伝説から借りているのだから、これら騒々しく爆ぜる物語の要素たちを貫くのが反応や合成、つまり「化け学」なのは当然なのかもしれません。
それを青年期から82歳で死ぬまで、長い時間をかけて書いた。わがまま放題を言って彷徨してうっかり何人も殺して、目まぐるしく立ち回り続けるファウストを描く若くて無闇なパワーと、神話と歴史と文学と政治の膨大な経験が混ぜこぜになって奇妙な雰囲気を漂わせている。んで、最後はやっぱりおねーちゃんと救済に着地(というか昇天)する。まじか、と思うけどそんなもの。駆け足で読むとむしろ、その世界が俯瞰できる気がします。
いろんなところが謎めいていて、各所に餌もばらまいてあるから、食いついて何か言いたくなる人がいっぱい出てくる。そういう良さがある。背景と成果と意義と限界を一直線につなげた隙のないストーリーを披露して、フロアからの質問が全く出なくてしーんとした中、座長が場をとりつくろうため確認質問をする、そんな口演より多分、楽しいよね。
第一部を読んだ先週も書きましたが、弊管理人は小説とか戯曲とかを楽しむ素養がないようです。「読みやすい訳も出てるようだし、読んどいたほうがよかろ」で読みました。そういう読み手にとっては、この作品が書かれた当時の中でどういう位置にあったか、ドイツ語の話し手がこの作品を声に出して読むとどんな心象が形作られるかなど述べた各巻末の解説がとても楽しかったです。
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木、金と急に滋賀県に出張する用事ができまして、帰りの新幹線で読み終えました。
滋賀県には初めて行くけど心躍らない、と某所でつぶやいたら、友人から「竹生島がいいらしい」とお勧めをいただきました。しかし時間がなくて立ち寄れませんでした。そのうち遊びで行きたい。いやどうかな。
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錦糸町の「佐市」が期間限定で豆乳仕立て、ホタテと生のりのラーメンをやってました。
ありだな。クラムチャウダーっぽくない?