« 右翼と左翼 | メイン | 冬休みまとめ »

生物と無生物のあいだ

サントリー学芸賞。へえと思いながら読んでなかった本が、実家に帰省したら本棚にあった。東京に戻る前に急いで読んだ。読めた。

■福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書、2007年。

・まず、筆者が押し出す「動的平衡」という概念について。
生物個体を構成する分子は絶えず入れ替わりながら(動的)、しかし個体であることを保ち続けている。そして致命的なものでなければ、欠損が生じたとしてもなんとかしてそれを埋め合わせる力を持っている(平衡)。アイディア自体はどこかで聞いたような気もしますけど。

GP2というたんぱく質の役割を調べるために、それを生まれつき体内で生成できないマウス(ノックアウトマウス)を作ってどんな不具合が出るか見てみたが、何も不具合がなかった。その欠損はおそらく「動的平衡」の作用によって発生の過程で埋め合わされていたのだろう、という驚きが描かれてます。

で、後日談。GP2の働きは先ごろ理化学研究所などが解明しましたね。このリリースはまったく福岡氏への言及なし。で、彼が噛んでいる機関発のこちらのリリースを見ると、彼がノックアウトマウスを作ることでいかにこの発見に寄与したかをアピールしまくってます。
俺が俺がというのは研究者としては自然なんでしょうが、それより、GP2は結局、腸管の免疫応答に関係があり、ノックアウトマウスではこれが働いていなかったとのこと(理研リリースより)。ということは、ノックアウトマウスにおけるGP2の欠損って、動的平衡で埋め合わされてなんかいなかったんじゃ……

・あとは、DNA研究の歴史。これが本書の中で結構な量を占めてます。知ってる人には退屈でしょうが、まあ新書読むのは素人でしょうから……

・それから、ところどころに筆者の自分史だのニューヨーク、ボストンの情景描写だの。どっちでもいいです、そんなの。

About

2010年01月01日 23:59に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「右翼と左翼」です。

次の投稿は「冬休みまとめ」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 3.35