■三浦綾子『続 氷点(上・下)』角川文庫、2008年。
北海道を飛び回る生活をしながらこの本を読んでいると、不思議な符合に見舞われることがあります。
昨夏、青函フェリーの中で氷点を読んでいたときはちょうど洞爺丸台風でフェリーが沈むシーン。
そして今日は、北見への出張の帰り、ふと時間が余って石北線の女満別駅(memambetsu, 旧女満別町、現在は合併して大空町)で電車を降り、歩いて1分の網走湖畔で写真を撮り、それから近くのホテルで温泉に浸かって、空港に行って待合所で本を読んでいると、ちょうど最後のシーンに網走湖畔が出てくるという偶然に。
そのほかにも、海に向かう小樽のメインストリート。いつも仕事で出入りしている北海道大学のクラーク会館、並木通り、図書館。それから、今年100周年を迎えた北大の美術部「黒百合会」。見知った場所と名前が、舞台となった戦後と現在をつないでくれます。
そういえば、三浦綾子の本を強烈に薦めた会社の先輩は「テーマは『人をゆるす』ですよ」と言ってこの作品を語っていましたが、うん、そのとおりだ。何度もこのフレーズが頭をよぎりました。
山と谷と、愛と死と、純粋さと意地悪、そして苦悩と―救済。そんなソリッドな構成が読み進める人に抜群の安心と見通しを与える、エンターテイメントのひとつの極致だなー、と思いました。