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エピジェネ

■仲野徹『エピジェネティクス』岩波書店,2014年.

細胞核の中に入っているゲノムが1冊の本で、筋肉の章、神経の章、骨の章、……みたいに、いろんな情報が書かれたページからなっていると考えてみる。そうすると、生活史の場面場面に応じて、必要なページを読み、かつ読んではいけないページを読み飛ばすようなが機能が必要になる、それがエピジェネティクスと呼ばれているらしい。

代表的なものの一つは、DNAの糸をボビンにがっちり巻き付けて読み取りをできなくしてしまったり、逆にそれをほどいて読み取りを可能にしたりするような「ヒストン修飾」という仕組み。もう一つは、DNAそのものに「読み取り禁止」の目印が付いたり外れたりする「DNAメチル化」という仕組み。例えば小麦の春化、女王蜂と働き蜂の分化、プレーリーハタネズミの一夫一婦制に関与しているとのこと。
こうした仕組みが何かの弾みで乱れると、生命のマクロな営みに悪影響を与えることは容易に想像できます。がんや生活習慣病の研究でも、そうしたことが垣間見えているそうです。

読んでみて、病気や健康などに対する理解の解像度が上がったような気分になります。身体の状態は「遺伝的要因」と「環境要因」のブレンドでできていると考えられますが、おそらく「遺伝的要因」の中にも「DNA塩基配列や染色体の正常/異常」と「プログラムされたエピジェネティックな制御(ゲノム刷り込みとか)」があり、また「環境要因」の中にも「そのときどきの環境に対応したエピジェネティックな変化」と「環境が直接、体に与える影響(病原体の感染とか、事故とか)」の区別があるのかなと思いました。

しかし、説明してもらって色々分かってくるとそれ以上に分からないことが出てきます。弊管理人が最も気になったのは、遺伝子の発現を制御するエピジェネティクス、を、制御しているのは何なのか?ということ。出生から数十年先まで記憶されている、ものによっては(確実さは低いものの)世代を超えて伝わるというのも驚きですが、その情報は一体どこに書き込まれているのか。興味がそそられます。

「おおきく六つのカテゴリーに大別する」みたいなうっかり表現や、「染色体の不安定性」「クローニング」「高スループット型の次世代シーケンサー」などの一言説明を要する用語がいきなり出てくる箇所など、ちょっとした不満点もありますが、ブルーバックスで出てる類書よりも(岩波新書のせいか?)ぐっと親しみやすさに心を砕いてある印象です。ヒストン修飾やDNAメチル化の状態を調べる手法(と、その限界)も解説されていて参考になりました。

* * *

週末は久しぶりに徹夜飲み。
ちゃんぽんしたので頭にキてしまいました。

* * *

先週末から今週にかけて、仕事関係の重苦しい寄り合いがありました。
弊管理人は「なんか重苦しいですね」と思いながら内職してました。

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2014年06月17日 18:50に投稿されたエントリーのページです。

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