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種の起源〈上〉

■チャールズ・ダーウィン(渡辺政隆訳)『種の起源〈上〉』光文社古典新訳文庫、2009年。

一定の頻度で起きる突然変異。些細なものであっても、獲得した特徴が、与えられた環境の中で少しでもその生き物の生き残りを助けるならば、その特徴は世代を経るごとにどんどん蓄積され広がっていく。あまりに長い時間をかけて起こる現象のため、誰も直接には目撃したことのない「自然淘汰」のアイディア。そこに読者を誘うために、まず上巻は人間によって行われる動植物の品種改良の話から入ります。

5年がかりの世界一周の旅で見聞きしたもの、自然に分け入って採集したものを縦横無尽に紹介しながら、今ある種たちは、そのままの姿、そのままの多様性で神が作りたもうたとの「創造説」を端々で批判する。そして自分の説の弱点をさらけ出しながらも「自然淘汰説」を擁護する。

では変種と変種の間に位置する、中間的な奴らはどこへいったのか?本能も自然淘汰で説明できるのか?淘汰される単位は個体なのか、それとも種なのか?

を検討するあたりまでが上巻。

・確かに遺伝学の人と話していて聞く単語やアイディアが続々登場する。バイブルといってもいい本らしいことは窺える
・一方、今の知見からすると、遺伝の法則も知らず、もちろん遺伝子の正体がDNAという物質であることも知らない時代の著者が純粋に観察から導き出してきた数々の発見の、どれが合っててどれが間違っているかの星取り表みたいな文献は欲しい
・絶賛するほどワクワクする本かっていうとまあそこまでではない
・19世紀的な収集癖というか、どばーっと集めてがばーっと見渡すように分析する「ナチュラリスト」のエネルギーが感じられるところは面白い
・何度も言うが、この文庫シリーズの訳はいい

といったところで下巻にとりかかるです。

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2012年11月27日 01:29に投稿されたエントリーのページです。

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