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光より速い

■『現代思想』Vol.40-1、青土社、2012年。

1月号の特集は、光より速いニュートリノの話。

門外漢と専門家が対談しながら
門外漢「ね、先生、『タイムマシンができるかも』とかいっちゃって、日本のマスコミってバカですよね。外国のサイエンスジャーナリストは知識もあって素晴らしいのに」
専門家「いやー、でもねー、これだけ素粒子物理が一般の人の目に触れるようなニュースになったことって、そうそうなかったと思うんですよー」
みたいなくだりが。

しかし、ビッグサイエンスの人の視点って、わりとこうだなあと思い当たる。
ひとつは公費をものすごく使って研究をやっているということ、もうひとつは門外漢の想像を超えた世界(11次元とかだよ!)を扱っていること、おそらくはそれらがあるために、細かい話はもう抜きにしてでも自分たちが何をやっているのかを分かりやすく一般に伝えたいというマインドの高い人(面白いんだよ実はこれ、というコミュニケーション)、あるいは一般に伝えなければならない場に立たされる機会(研究費の維持・獲得のため)が多い人が結構いるような気がする。
騒がれ方が妥当かそうじゃないかはもちろん大切なことだけれども、それ以上に、そうした人たちが自分たちの領域が社会で一定以上の注目を浴びたことにちょっとした感慨を抱いている、そんな様子。あー、医科学あたりの人と対照的かもとか(略

それはそうと、物理の「中の人」かつOPERA実験の「外の人」が今回のように「とても綿密に検討された上ですごく変な結果が出てきた」ような出来事をどう受け止めるか、わりと長々と語る貴重な企画だと思いました。「それでも機器がおかしいんだろう」から「定説の拡張で済むんじゃない?」、果ては「相当数の理論が棄却されるかも」まで幅があるのが興味深い。
想像だけですが、理論の人は実験の人の「外側」にいるし、大型加速器なんかで行われる「世界で私しかやってない」実験に至っては大半の人が「外の人」(追試さえおいそれとできない)なので、同じ「素粒子物理の中の人」が語っていてもどこか野次馬的というか、面白がってる感じがある。あ、「これって僕の業績につなげられるかな?」という反応もありますね。

ちょうど読んでいる間に「なんか実験装置上のミスがあったっぽい」というニュースも入ってきて「なあんだ」となりかけましたが、まだまだホットな話題ですね。

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2012年03月04日 23:49に投稿されたエントリーのページです。

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