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人間の条件 そんなものない

■立岩真也『人間の条件 そんなものない』理論社、2010年。

できる人とできない人がいて、できるとよいことがあったってよい。だからといってできないから悪いということもない。できる人が自分でたくさん作ったら、それは全部そのできる人のものにしてよい、というのは何かおかしい。機会が平等でみんながんばって競争すれば差がなくなっていくというのはなんか変。むしろ差は開くし、それはおかしいと思う。そこで、社会の中にあるものを均等割りしつつ、頑張ってできる人には頑張ってもらうためにちょっと色をつける、くらいの分配の仕方ってできないものだろうか。また、ものをつくる時の材料や、仕事そのものも分けてもいいのではないか。そんなことが書いてある。

のだと思うのですが、違うかもしれません。あー

働くことと、その成果を、できるだけ各々が自由や自尊心を侵されない生活ができるように分けられる、そういう今とは違う社会のありようをかなり根っこから愚直に構想する様子が見て取れる気がします。「よりみちパン!セ」という中高生以上向け(なのかね?)のシリーズの一冊です。立岩真也入門。

さておき、

筆者は、それはもうほんとうにいろんなところで、いかに自分の本が(本当はそんなつもりで書いていないのに)ぐねぐね回りくどくて難しいと評価されているかをしきりに気にしている様子で、読んでいるこちらも話の筋とは別に「なんでこの人の文章はわかりにくい(と思われる)のか」も考えながら読まされる羽目になります。
実は何年も前に、同じ筆者の『私的所有論』を図書館で借りて読み始めて挫折した(返却期限の2週間では読めない+かといって買うには高い)経験があり、しかしこの人の本にはとても重要なことが書いてある気がして、ずっと気になっていた身です。問題意識は筆者および筆者の読者と共有している気がします。

この本を1冊読んだ経験だけですが、結論から言うと、筆者の文章が読みにくいのは「慣れの問題」が8割。音読する速さで黙読しているとだんだん引き込まれて、1冊読み終わるころにはほかの本も読んでみるべと元気がわいてきます。
あと2割は、はやりの言葉とかをあんまり使わないせいで、キーワードを追いながらサクサク読んでいくと言っていることがわかる、みたいな作りになっていないためだと思います。
本当に悪い文章は構成がぐちゃぐちゃだったり、関係ない話が混ざっていたり、つなぎの言葉が少なかったりするので、最初は筆者の文章もそうなんじゃないかと疑いながら読んでいましたが、むしろ無駄なもののない、けれども時々振り返って「ちょっと、おさらいする?」みたいに配慮してくれる親切な文章だというのが読み終わっての印象です。快調に読み飛ばそうとすると途端に道に迷うけどね。

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2010年09月17日 00:06に投稿されたエントリーのページです。

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