1週間、ボンに出張してきました。
最寄りの空港はケルン・ボン空港ですが、日本からの直行便がなく、しかし飛行機の乗り継ぎは保安検査がしちめんどくさいのと荷物ロスの可能性が高まるのでなるべくやりたくない。ということで、どちらも1時間ちょいの列車移動で済むフランクフルトとデュッセルドルフで若干迷い、そして使ったことのなかったデュッセルドルフ便をとってみました。
が、なんかボンの駅だか周辺だかの工事の影響ですごく時間がかかるルートになってしまい、たまたま一緒の便で同じ仕事に向かうことになっていた某先生に、途中のケルンからタクシーに便乗させていただきました。ありがたや。
仕事はアレで、気分は暗いのですが、なんてことない街の景色もきれいだし、食べ物は口に合いました。
上の写真のような木々がたくさんあって、花が咲いています。花は赤も白もあります。
これ何の花?と思って誰かに聞こう聞こうと思いながら聞けずに帰ってきてしまった。
通勤はバスでした。
地域の公共交通機関ってほんとどうしたらいいのか分かりません。しかしとにかくその辺の人に聞いて、1回できちゃえばどこにでも行けますね。バスは乗って運転手さんに行き先を告げ、その場で支払いをして切符を買います。あとは車内の刻印機で使用開始のスタンプを押すと。
電車、地下鉄、バスとも改札がないかわりに、ときどき検札の人が乗ってきて、切符を持ってないと60ユーロだかの罰金を取られるというシステムです。「知らなかった」は基本、通用しないらしく、旅人はちょっと緊張させられますね。日本から同じ仕事で来ていた人もやられたそうで、同僚たちから笑われてました。
ボンは英語が喋れない人(特に褐色の人)は全然ダメだけど、喋れる人は相当いて、バスでも買い物でも、喋れる人に当たれば親切にやり方を教えてもらえました。
北緯50度。夜はいつまでも明るいです。これ午後8時35分。
仕事で一緒になった方々に、マルクト(マーケット、だろうな)にあるEm Höttche(エム・ヒュットへ)というお店に連れていっていただきました。
Kölsch(ケルシュ)というケルンの地ビールと、白アスパラガス(シュパーゲル)を食べます!
トマトの大きさに注意。アスパラもトンカツ(シュニッツェル)もでかい。そして、うまい。
アスパラには澄ましバターのソースをかけていただきました。
あとは仕事場でこんなん食ってたくらい。
チキンブレスト1枚(豪快)と、悪魔みたいなブロッコリー……ええとなんだ、ロマネスコ。実はカリフラワーの仲間だそうですが。
仕事中は青空の清々しい天気。でも室内。
最終日は4時間だけボン観光……と思ったら肌寒い雨降りの日でした。
定番、というか市内の数少ない見所の一つであるボン・ミュンスター寺院。11~13世紀に盛んに作られたロマネスク+ゴシック様式の建物。ところでこれ、戦時中は無事だったの?と思っておじいちゃんスタッフに聞いてみたら、やはり相当壊れたらしく、かなりの部分は1960年代に再建されたものとのことでした。
中を見学していたら昼のミサの時間に当たり、おじいちゃんスタッフから「他の人の真似してれば大丈夫だから」と促されて参加してしまいました。
壇上に上がって、歌本?渡されて20分くらい歌います。
見慣れない楽譜だけど、やってるうちに大体分かった。(R)(L)はそれぞれ右側、左側の列の人が歌うところで、(A)はみんなで歌うのだな、とかそいうことも分かった。でもドイツ語の発音はあやふやだったので、ちっちゃい声で歌ってました。
ここ数年、汎神論よくね?と思っている弊管理人が参加していいのかいなと思いましたが、まあ勧めたのはあちらだということで。
引き揚げていくおじいちゃんスタッフ。
戦災の話を尋ねたら立ち話が長くなり、そして難民の話になって盛り上がりました(やはり今の関心はそこか)。「シリアやアフリカから100万人来てん。州によっては受け入れないっていうところもあったけど、ここは国際機関があったりしてオープンなとこだからね。でも文盲が多くて言葉や文化を教えるところからやらんとあかん」などと。しかし8000万人の国に1年で100万人のわけわかんない人たちが入ってくるって、考えてみたら大変なことです。「ほんとは英仏に歴史的な責任があるんだけどねえ」
そういえば宿のテレビでBBC見ていたら、フランスで大統領になったマクロンの課題を「難民、テロ、気候変動」と言っていて、ああヨーロッパは遠いなと思いました。
えっとそれで小腹が空いたので、すぐ前の広場でカリーヴルスト立ち食い、確か2.9ユーロ。
寒いし、広場の郵便局前で楽聖にも会えたので、もういいかなって気になってきました。
が、もうちょっとだけ頑張ってベートーベンハウスを見学、6ユーロ。
生家なんだそうですが、中の展示は撮影禁止とかケチくさいことを言われて萎える。
なんか昔、実家に子ども用の伝記があって読んだんですよね。
随分忘れちゃっていましたが、おじいちゃんがケルン選帝侯の宮廷楽長の音楽一家だったとか10代前半から作曲も演奏もやってたとかで、何の根拠もなくたたき上げっぽいイメージ持ってたけど全然違った。演奏が聴けるコーナーとかありました。でもベートーベンはまだあんまり面白いと思えないな。
マルクトは昼間いくと屋台がいっぱい。
どこも大体イチゴとアスパラ押しでした。
イチゴは一山1.5ユーロとかで、青果は安い。
15時、そんじゃちょっと早めにデュッセルドルフに向かいましょうかね、と思って、ホテルに置いてもらってた荷物を回収してボン中央駅に向かいました。
ねえ本当に首都だったところの中央駅?というくらいこぢんまりしてます。
30万都市だとこんなもんか。
ホームに上がると、なぜか大混雑。
事故か何かでダイヤ大幅乱れ。Google Mapsに頼りながらえっちら乗り換えて、結局2時間近くかかってデュッセルドルフに辿り着きました。
* * *
ということで、1年弱、魂を歪めさせられ続けた「どうにも合わない持ち場」の仕事がほぼ終了しました。
前にも書いたとおり「とても勉強になったし、これまでの仕事に対する態度を総点検する機会にもなったと思うが、ここまでのストレスを受けながらやるのは続かない」というのが総括。海外出張いっぱいして、それも自分で思い立っては行かないようなところが多かったのも貴重なことではありました。もう少し違う出会い方をしていたら違った結果になったのでしょう。
やることを全部終えて帰国の途に就きながら感じた「重力ゼロ」みたいな状態、久しぶりでした。
もっとも、次の持ち場でもストレスフルなのでしょうな。
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往復の飛行機で3本、映画を見ちゃいました。珍しい。
・Moonlight(2016年):アカデミー賞作品賞だそうですが、黒人も薬物も同性愛もありきたりな題材。うん、で?とあまり響かなかった。静かに淡々と進んで映像としては見やすかった。
・わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年):なんというか、同じ空気を吸い、相対しているのに、相手との間に全く乗り越えが不可能な壁があるという感じ。あるいは形の上では自分も参画しているはずの制度に徹底的に負けるということ。普段なかなか痛感しないが、直面するとはこういうことなのだ、という突きつけ圧が高かった。このタイトルとポスターを見ただけでは映画館にわざわざ見に行くかというと行かない気がするので、ここで出会っておいてよかった。
・沈黙―サイレンス―(2016年):それでいうとこれも徹底的に負けるということを題材にとっているのだけど、最後の最後に「あっそうでもなかったかもしれない!」という閃きが訪れる。それと同時に、そこまでに敗れ去った人たちもすべて単に敗れていたのではなかったことに気付かされる。上の作品と違うのは敵が意外と対話的だということで、それで一段、考える余地が生まれていた。160分、なげえ!と思って見始めたが、この長さは必要だったな。