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夢よりも深い覚醒へ

■大澤真幸『夢よりも深い覚醒へ―3.11後の哲学』岩波新書、2012年。

ここ1年に限らず、弊管理人の周囲に常にあった疑問に(1)「なぜ、日本は核の怖さを知っているのに原子力発電をこれほど歓迎してきたのか」というものと(2)「未来の世代に対する倫理をどう考えたらいいのか」というものがありました。
3.11を「きっかけ」にしてそれらの疑問は切実に迫った。そうした思いがひりひりしているうちに書かれた文章がこれ。

神のいなくなった時代にピンチヒッターの役割をどんな存在にやってもらうか、といういつもの問題意識が底にあり、最後に少しその具体的な提案がついてます。
第三者の審級(集団としての意思決定)←媒介者(弁護士のように一方の側に立つのではなく、ただ聞き、理解する役)←(個別の利害を)訴え出る人、という直線的に並んだ3者構造による意思決定。
(「内輪の議論ばっかやってんなよ、みんなの前でもそれ言えますか、アンタ」という、ナイーヴな熟議への批判をやっているという点では、直接の言及はありませんが、『一般意志2.0』に触発されているようにも見えます。)
しかし、媒介者がうまく丸め込まれてしまう(まさにマスメディアのように)危険性というのはないのか。この構造があったとしたら3.11の準カタストロフを未遂に終わらせることはできたのか。と、新しい疑問を背負わされて読書が終わる。ひょっとしたらもう一度読む。

↓あと最近これも読んだ。
■八木沢敬『分析哲学入門』講談社選書メチエ、2011年。

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2012年03月18日 10:57に投稿されたエントリーのページです。

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