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世論(上)

■ウォルタ・リップマン『世論(上)』岩波文庫、1987年。
(Lippmann, Walter, Public Opinion, The Macmillan Company, 1922.)

私 ― 疑似環境(現実というものの像) ― 環境(ナマの現実)

という構造。疑似環境というのは「ナマの現実」と「私」の間にあるスクリーンで、ここに「(私が直接アクセスできない)ナマの現実」と「私の持っているステレオタイプ」から構成された「現実というものの像」が作られて、これにもとづいて私がいろいろと判断をしたり、これにむけて私がいろいろと行動を起こすわけです。ところが、当然ですが行動の影響は「ナマの現実」のほうに与える。3者の複雑な相互作用。では、そういう疑似環境とかステレオタイプってどういうもんですかね、という考察。

超優秀なのに、大学でも政府でもなくジャーナリズムに行ってしまった当時きっての知識人、いろんなテクストを自在に引っ張りながらお話を進めるその文章がキレイ。主張自体は今から見れば別に斬新というほどでもないので、上巻だけでやめよかなーと途中で思ったのですが、豊富な例示が意外に興味深いのと、下巻もちょっと気になるのでこのあと頑張って読んでみます。
社会現象を個人の心理から説明しようという感じが、時代を感じさせます。

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2011年11月11日 10:47に投稿されたエントリーのページです。

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