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2007年02月11日

決算

ふと思い出したことを。

正月に父親と、祖母のところを訪ねたとき。父は大学ノートを取り出して、祖母に何か聞き始めた。家系図みたいなものを書きながら、曾祖母がどこから嫁に来たとか、きょうだいがそれぞれどうなったかとか、そういったことを聞いていた。

父親はいま、阿南町という長野県の南の果てにある町に住んでいる。祖母のところを訪ねた次の日、父親の居宅から二人で車に乗ってさらに南下し新野(にいの)という集落にある道の駅へ五平もちを食いにいった。
途中、おっそろしい山の中で「このへんが、ひいばあちゃん[これは僕から見てのこと]の実家があったところらしい」という。ふうんと言いながら通り過ぎたが、それは30年近くの生活のなかで一度も聞いたことのない名前の集落だった。

祖母のところで一緒になった伯母が僕に「(祖母は)あまり長くないかも」と耳打ちした。特別病気を抱えたりぼけたりしているわけではないが、祖父が亡くなって3年ちょっとでけっこう弱ってしまったらしい。
一族の記憶が失われるまえにそれを記録に留めておこうという意図が父親にあるのかどうかは不明だ。けれども自分だったら、聞くことが祖母の人生の決算をさっさか済ませるような感じがして、必要だけれども心理的にはやりにくい作業だなあと思う。

いや、決算は心理的にはやりにくいけれども必要な作業だと思う。

遺言とか自分史とかは、本人が自発的にやるのが一番いいが、それが何かの理由でかなわないときの次善の策として、近しい人が決算してあげる。なくても後進は生きていけるが、あればそのぶん記憶が厚くなる。そういうものとして。

投稿者 b-men : 2007年02月11日 16:48

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