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じんるいがく(8)

大阪、京都の行き帰りに「こだま」を使いました。最近使っていなかったEX-ICカードのサービスで、乗車3日前までに予約すると、グリーン車が「ぷらっとこだま」よりもさらに安い値段で利用できるということを知ったためです。

最近また怠けていた本書とポメラを持って、車内で片道1章ずつ読むことを目標にしました。ちょっとうとうとしたり、車内誌を読んだり、外を見たりしながら読んでちょうどいいくらいでした。
でもやっぱり若干長いな。「こだま」でのんびり、というのは名古屋くらいまでがいいのかもしれないです。

* * *

15 Language and Cognition

▽ウォーフ:翻訳の問題
・(サピア=)ウォーフ仮説
  言語の構造は世界の経験の仕方と密接に関係している
  ←「動き」に重点があるホピと、「もの」の北米言語の違い
  問題構造、世界観、日常生活を言語が規定する
  →では、アザンデ語から英語への翻訳は可能か?
  ウォーフはやっていたし、人類学はそれがないと不可能

・だが、問題がないわけではない
  人類はみな同じように思考しているのか?
  自分を「鳩だ」と形容するBororoをどうとらえるか?
  
・3つの問題
  (1)未開の人々は根本的に違った思考様式を持っているのか
  (2)そうだとすると、その生活世界を比較研究できるか
  (3)人類学の言葉は文化中立的か否か
→思考様式の違いは「民族」的な違いで、比較はすべきと考える
  (生得的な共通性の上に、文化的な違いが形成されている)
・ちなみに遺伝的特徴からの説明も不能
  (文化的多様性を説明できるほど違わない)

▽例として:ザンデの呪術(エヴァンス=プリチャード)
・蛇にかまれる→熱が出る、の部分ではなく、
  「なぜ他の誰でもないこの人がかまれるか」を説明する
=科学的な説明ができない「なぜ今」「なぜ私が」の意味付けを担う
・ただし、限界にも言及している
  (1)呪術に関する信念は科学的に非妥当(検証不能)
  (2)受け入れられているのは正しいからではなく、
    社会の統合機能を担っているから(構造機能主義)

・ウィンチ(1964)の反論
  呪術と科学をはっきりと区別することはできない
  天文学者も、十分に解明されていない「力」を盲信している
  科学の原理を信じていない人には科学実験は無意味
  ザンデの社会は呪術を維持しつつもうまく回っている
→あらゆる知識は文化的に構築されている
  人類学もその一つ。なぜ欧米で人類学が興ったのか?
・文化=ヴィトゲンシュタインの言語ゲーム
→通約不可能。優劣は言えないし、比較もできないかも
・STSの対称性原理(Fuller, 2006)につながるものといえる
  比較時には中立的な言葉遣いで語るということ

・サーリンズとObeyesekereの論争~
  普遍主義と特殊主義の間の揺れ
→2000年代の「存在論的転回」
  やっぱり特殊性を十分に記述できていないのではとの認識

▽分類
・デュルケームとモース:思考様式と組織の共通性を指摘
  各文化が独自の思考様式を発展させるとの考え
  (ただしウィンチと違って科学の優位は疑わなかった)
・分類(知識体系の重要な要素)→知識
  知識は社会構造と権力に結びつく

・分類の原理は有用性と思われてきたが、違った
・例外は秩序への挑戦、カテゴリーの境界
  →特定の状況でしか食べられない、女性は触れない、など

・トーテミズムにおける分類
(トーテミズム=社会のサブ集団と、特定の自然現象との間に、
 儀礼的な関係づけを持たせた知識の体系)
  →この関連付けの仕方が人類学の関心事となった
・集団のアイデンティティとしての見方
  デュルケームは今日のトーテミズムを「旗」に見る
・ではなぜ、ある集団とある動物が紐付くか?
  熊狩りするから熊がシンボル、というわけではなさそう
  シンボル同士の関係性が人間界の関係性に対応か
  (レヴィ=ストロース)
  メタファーとメトニミー

・野生の思考:二項対立への注目(cf.ベイトソン)
  注目すべきは要素より要素間の関係
  ブリコラージュ
・冷たい(変化の少ない)/熱い(変化を許容する)社会
  伝統/近代
  ブリコラージュ/工業
  書かない/書く
  トーテム/歴史
・書くこと
  言葉をものに変換すること
  時間、空間的に固定すること(覚えていなくてよい)
  話し言葉を縮減したもの
  大規模な集団の中で考えの交換と連帯を可能にする

▽時間とスケール
・抽象的な時間(「1時間」とか)は文化的発明
  時計が時間を作り出しているともいえる
  未来を制御できる→神を超えた能力!(ブルデュー)
  欧州で最初の時計使用は僧侶の時間管理とされている
  「時計」こそが近代の主要テクノロジーといえる
  →非常に多くの人々の行動を組織化できるようになった
   (飛行機が客を待つか、客が出発時間に合わせるか)
・多くの文化では、時間は具体的行為や過程に埋め込まれている
  時間を「失った」り「つぶした」りはできない
  未来はまだ起きていないので、未来形が成立しない
  神話の時間と現在は切り離せない
→時計、書くこと、温度計などの「標準化」が巨大な社会を創出

▽知識と権力
・言葉使いがリアリティを編成→権力の維持に役立ちうる
  (ロシア:「自由」の用法を限るなど)
・マルクスは五感の使用も歴史的産物だと述べた

16 Complexity and Change

▽都市化
・複雑で大規模な都市では全体を見通すことができない
  マンチェスター学派
  複数のインフォーマント、複数箇所でのフィールドワーク
  全体の把握ではなく、あるイベントから示唆を得る
・どうするか
  ケーススタディ
  研究を特定のリサーチクエスチョンに限定する
  特定のサブグループに注目し、全体社会との関係を考える

▽医療
・3つの身体
  個人的、社会的、政治的(すべて文化的構築物)
・西洋医学/伝統医学

▽開発
・GDP還元主義の落とし穴
・エクアドルの豚増産プロジェクトの失敗
  豚はただの食べ物以上の意味を持つ存在だった
  新たなケージ飼いは地域の女性にとり過剰負担となった

▽人類学が受ける挑戦
・われわれ/かれら の区別のあいまい化
・オリエンタリズム
・内部の視点から記述する歴史
・人類学の脱植民地化
  インフォーマントによるチェック要求
  インフォーマント自らが記述する歴史
・「文化」の純粋さへの幻想→文化間の接触忌避
  →アパルトヘイトの知的バックボーンに!
・文化混合(←→文化の純粋性、本来性)
  ハイブリッド性(境界は保持したまま混ざっている)
  シンクレティズム(融合した部分に注目)
  ディアスポラ化(帰属先の文化が他国に)
  トランスナショナリズム(国境を越える社会的実在)
  拡散(物や意味の国境を越えた流動性)
  クレオール化(文化接触の結果、新たな形式が誕生)

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2017年04月09日 23:41に投稿されたエントリーのページです。

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