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一般意志2.0

■東浩紀『一般意志2.0―ルソー、フロイト、グーグル』講談社、2011年。

「『動物』の社会」構想。

ネットに絶えず蓄積されていく人々の(自分でも気付いていないような)欲望を収集、解析して可視化する技術が現在、整いつつある。この欲望のデータベースを――250年も前に考えられたルソーの「一般意志」がとうとう顕現したとみて(それを一般意志2.0と名付け)――よりよい社会づくりに活用できないだろうか。

そこで、フロイトの
  「エス(欲望)」←「自我(調整役)」→「超自我(建前)」
という個人の心の見取り図を統治に応用して、
  「一般意志2.0」←「政府2.0」→「熟議」
という形を検討する。つまり、今まで抜けていた左の項(一般意志2.0)を補って、やじろべえを完成させるわけだ。
社会が複雑化しすぎて全体を見渡せる人がいない時代には、一方に「感想くらいしか抱いていない、統治への参加が不活性な、素人」、もう一方に「実際はタコツボだが普遍を装った、ほぼ排他的に統治に参加する、専門家」の極ができてしまう。そこで局所的な利益や声の大小などで政治が進められてしまい、いろいろな歪みが溜まっていく。そんな状況を突破するアイディアがこれらしい。

筆者が考えているのは「よい社会とはどういう状態か」というより、「よい社会をつくる手続きとはどういうものか」であるように見える。複雑な社会で「何が善か」を収斂させるのは難しいものね(にしても、その手続きが正しいことはどうやって確かめるんだろう)。
たしかに最終章ではありうる未来社会をデッサンしているけれど、この位置付けはたぶん「一例」にすぎない。そこでは政府は特定のライフスタイルを優遇するようなコミットメントをすべてやめ、生存のための条件(=あらゆる意味でのセキュリティ)守るだけの最小国家になっているみたいだ。でも、そういう生活の最低保障の内容と境界ってちゃんと定まるのかなあとか、いろいろと疑問は浮かぶ。
そう、この原理にどう肉付けをし、よりシアワセな社会を導くシステムに彫琢していくかを考えることは次のミッションで、そこは読者もアタマつかって考えようぜと言われている感じがした。

読み進めていくと、その都度疑問がでてきたり、「これってあの人の……」といろんな思想家の影がよぎる。そして筆者は次の章ではちゃんとその疑問に答え、種明かしをしてくれる。読者の手を引いて旅路をちゃんと辿らせてくれる、とてもよく構成された本。

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2011年12月04日 23:59に投稿されたエントリーのページです。

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