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世界をやりなおしても生命は生まれるか?

■長沼毅『世界をやりなおしても生命は生まれるか?―生物の本質にせまるメタ生物学講義』朝日出版社、2011年。

ちくしょう、ちくしょう。だって、こんな気になるタイトルを付けられたら読むしかないじゃないか。
四六判・タイトル買い、という失敗パターン(←あくまで弊管理人の個人的ジンクス)が揃ってしまって嫌な予感がしていました。

ところがどっこい、面白かった。
生命科学をやっている広島大の准教授が、広大附属福山高で行った講演と、その後3日間にわたって10人の生徒と行ったセッションの記録。
生命ってなんだべか、という疑問に迫るやり方はいろいろあると思いますが、今回は生命の限界=生命じゃないものとの境界まで行ってみることで本質を発見してみようというアプローチを取られているように見えます。

生徒さんに常識のたがを外して考えてもらおうと、まず「どんな能力でも得られるとしたら、何ができるようになりたいか?どんな形になりたいか?」と聞いてみます。
――頭から生えたタケコプターで空を飛びたい、えら呼吸でずっと水に潜っていたい、高くジャンプしたい、手足を増やしたい、切断されても治癒できる体がいい。実はそんな極端な生物は既に存在していたりして、そんな能力はなんで可能なのか、ぼくたちとどれくらい離れており・どんなところで似ているのか、なんてことを考えてみる。

じゃあ今度は「生物」が共通して持っているとされている特徴を精査しよう。「増える」「食べる/排泄する」「外界と隔てる膜を持っている」。これってどういうことだろうか?また、そうじゃないけど生物だっていえる存在はありうるんだろうか?

では、生物は数式で表せるのか?できるならどの程度までできるのか?大局的にみるとエントロピーが増えていって最後に熱的死に至るであろう宇宙で、生命ってどういう働きを持っているのか?先生が投げかける疑問も自由に飛翔します。

この本の魅力的なところは、生命と生命研究の極北――(ぼくたちからしてみれば)過酷な環境にいる生物のありよう、進化とボディデザイン、人工生命、コンピュータ上での生命の再現など――「えっ」と驚くような事例を豊富に・即妙にちりばめて、読む人の「生命」概念をぐいぐい拡げ、ゆさゆさと動かしていくところだと思います。あと印象的なのは、参加してる高校生たちが、マジデ?って思うくらい優秀なこと。

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2011年07月18日 12:32に投稿されたエントリーのページです。

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