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天災と国防

■寺田寅彦『天災と国防』講談社学術文庫、2011年。

3月11日の津波のあとに、ネット界隈で「津浪と人間」という文章が話題になりました。東北の太平洋沿岸は数十年に一度は大きな津波に襲われ苦い思いをして、「ここから下に家を建てるな」みたいな碑が建てられたりしても、やっぱりしばらくすると海辺に人が住んじゃう、これどうしたものかね、というようなお話。それが収録された寺田の災害エッセイ集がこちら。6月に文庫で出ました。

解説は原発事故調の委員長を務めることになった「失敗学」の畑村洋太郎さん。解説の終わりについてる日付が2011年5月になっているところを見ると、委員長就任を打診されたころの文章でしょう。「人は忘れるもの」という寺田のスタンスに共鳴しながら、最悪を想定したシミュレーションを続け備えることと、「災難教育」つまり怖かった記憶を次の一撃まで持続させることの重要性を記しています。また、前提として今回の原発事故に関しては原因究明を責任追及から切り離すべきとの立場を明確にしています。

震災発生以来いろんな本が緊急出版されましたが、自分ルールとして、震災にショックを受けたり脱原発の風にのっかったりして書かれた本は(自分自身の意見と同じか違うかにかかわらず)信用しないことにしてます。今の状況でたとえば脱原発に乗っかるのは、震災前に安全神話に乗っかるのと基本的に心性は一緒だと思われるからです。逆に、震災前から書かれていて、なお今の状況をうまく言い当てている文章は信じてもいいかなという気になってます。というわけで災害関連の本で初めて自腹で買ったのがこれ。80年かそこらで人は変わらんものだな~というのが感想。

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2011年07月03日 00:47に投稿されたエントリーのページです。

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